ありふれた物で殺すプロ募集中

俺の名前は殺し屋Pだ。PはプロのPだ。決してアイドルを育ててる系のおっさんではない。某ニコ生で「ムカつくあいつをお前の代わりにぬっ殺してやんよ」という企画を立てたところ

たった一人しかリスナーがいなかった。まぁ、そんなことはどうでもいい。

今、依頼者(たった一人しかいなかったリスナー)の代わりに同窓会の会場に向かっている。依頼者の名前は薄井影(うすいかげ)という。


「どうせ陰キャだから多少人が変わっていたって誰もわかんないと思います。そこで当時僕をいじめていたあいつらに復讐をしてやりたい。お願いします。」

という依頼者の提案から俺が代理で参加することになったのだ。

俺は殺しのプロだが、今回は依頼者が命まで取らないで欲しいという要望を出して来たので、少々手ぬるい気もするが依頼なので手加減することにしよう。


今回のブツはナイフ…ではなく、依頼者から預かってきた卒業アルバムのコピーだ。

そんなもので人を殺せるのか?と思うかもしれないが、俺は「ありふれた物で殺すプロ」の名を欲しいままにする男だ。なに、いつも通り仕事をするだけだ。

おっとそろそろ会場につく。私語はこのくらいにして、バレないよう眼鏡とマスクで変装せねば。



昔話に花が咲き、宴もたけなわになったところで、余興をしようという流れになった。当時からクラスのリーダー格だったターゲットは、俺を指しながら

「薄井くんが今から盛り上がる余興をしてくれるそうです。みんな期待しちゃっていいよー☆ほら薄井おめー早くやれよ」と囃し立てて来た。

依頼者であればきっとおどおどしながら赤面してトイレにでも籠って泣くのだろう。

仕事の、時間だ。


俺は冷静にターゲットの作文を選び音読をする。

「俺は中学を卒業し高校生作家としてこれから華々しいデビューを飾る。俺の処女作を卒業の餞にくれてやろう。括目せよ(以下略)」


どうやらこの男は現在はチャラチャラしているようだが、中二をこじらせていたらしい。当時在籍していたクラスを舞台にした主人公俺のハーレムラブコメ夢小説を載せていたようだ。黒歴史を皆の前で音読される、これがどういうことか、わかるな。


「いや、ちょ!ネタだから!!お前らそんなにドン引きすんなって…やめろ…おい!てめー殺すぞ!!」

俺は暴れるチャラ男を避けつつ淡々と朗読をし続ける。

相手は怒りと恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら鬼のような形相で殴りかかってきていたが、朗読をすすめていくうちに香織という名前が出た途端、耳を塞ぎながらゴロゴロと転がり、恥ずかしさのあまり動かなくなった。

香織は顔を覆って肩を震わせていた。


周りで見ていた他の参加者たちが面白がって写メを取りながらSNSにアップしていく光景が更に男に追い打ちをかけ、男はただ小刻みに震えていた。


仕事終了だ。

俺はターゲットの悲痛な叫びが響く宴会場を後にした。

俺に不可能はない。P(プロ)だからな。

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