インド映画のダンスをどのように表現するのか

よぉ。

俺はシヴァ神の加護を受け、某ムンバイの平和を守る正義のヒーローだ。

今日は日本のお友達のために俺の活動をちょっぴり紹介するぜ。

正体が知れるとまずいので、名前は言えない。

なに?知りたい?仕方ないなぁ。少しだけだぞ。


俺の朝は1杯のバングラッシーと100回の腹筋から始まる。

丈夫な体がないと選ばれし者の俺でも神の加護を発揮できないからな!

なぜか毎回30分程度で意識を失っていて、気付いたら3時間くらい経ってるんだけどな、HAHAHA!!(ビール腹をさすりながら)


ヒーローは身だしなみにも気を遣うんだぜ。

白いサテン地のベルボトムと蛍光ブルーのサテン地のシャツに尖った靴は俺のアイデンティティと言っても過言ではないだろう。

あとは綺麗に髭を整えるんだが…


「コラー、てめぇ今日という今日こそ金払え!」

床屋のオヤジが剃刀を片手に追いかけてくる。

そうはさせん!


俺は流れているリズムに乗りながら軽快なステップで走り始める。

シヴァ神との盟約でチャクラを丹田に溜めるのに踊らなくてはならないのだ。

幸い俺は町一番のダンサーと呼ばれていた男なので、大抵の奴が躓くようなステップでも足さばきは完璧だ。もちろん自称だ。

男たるものいつでも自分に自信はもっていなくてはな。

これで美人の一人でもいたら踊りに力も入るというのによ…シケてやがるぜこのストリートはよ。


床屋のオヤジを撒いたところで、俺の体が黄金色に輝き始めた。

すると後ろから踊りながら近寄ってくる貧相な住民どもがいる。俺がチャクラを貯めようと踊ると、なぜか周りにいる住民が皆バックダンサーになって同じ動きをするから困る。これが花街だと圧巻なんだがな。


「そこの青いの!俺の音楽聞いて踊ったんだから金よこせよ!」

太鼓を叩きながら路上にいた大道芸人が近付いてきた。

勿論俺と同じステップを踏みながらだ。

「俺の叔父はこの街の市長だ。出るとこ出たっていいんだぜ。」

俺は踊りながら芸人にまくしたてる。勿論嘘だ。

芸人は一瞬ひるんだような表情を見せながらも足は激しいステップで

俺のポケットにある財布を奪おうと狙ってくる。そうはさせるか。

俺はより激しくターンを決めた。

極彩色の煙が俺の体を包む。チャージが無事に終わったようだ。



「おじちゃーん、俺たちの今日のメシを助けてくれよぉ。」

テレポートした路上で、物乞いをするガキ共が俺の服の裾を引っ張ってくる。

ゲッ、汚い手で俺の一張羅に触りやがって。これだからガキは。

「貧乏人に差し伸べる手なんかねぇ!サッサとどっか行けガキ!」

俺は力いっぱいガキ共を追い払った。なぜか追い払った指の先から砂金が落ちた。


砂金が落ちたのを目の当たりにした住民共が俺の周りに群がってきて、砂金を巡り軽い暴動が起き始めた。加護の力を使ったせいか周りに牛まで集まってきた。


「コラー、何をしている!ってまたお前か!」

聞いたことのある声がする。やべぇ、警察だ!

巡回という名の集金をしに来たいつものいけすかない警官が追ってくる。

珍しくやる気に満ちてるな。

概ね今日は入れあげている店のオキニに新しいジュエリーでもねだられたんだろう。

よしここはまた加護の力で…って、ゲゲッ、丹田のチャクラが足りなぇ!

クソッ、また踊らなきゃなんねーのかよ!


--30分後--


ハァハァ…やっと撒けた。しつこい奴だったぜ。

ここは屋台でチャイでも…って財布がなくなっている!

チキショー、あの時に取られたのかよ。

俺は屋台の前でがっくりと肩を落としたのだった。




これが俺、ヒーローの1日だ。

いつもはもっと美女が出たり悪の組織と戦ったりなんだが

これもなかなかエキサイティンだっただろ?

なに?財布無くて明日からどうするのかって?

何度も言うようだがシヴァ神の加護のついている俺にはこんな出来事は些細な事だぜ。

どうだ、頼もしいだろ。


おっと依頼の料金は前払いだ!


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