二部 7話 ノイズ技術試験隊
ノイズの技術試験隊員になった俺は、博士とともに組み立てライン工場でゴーレムが作られていくのを見学している。っていうかゴーレムっていうか普通にロボットだな。
ノイズの軍事力はほぼゴーレムに頼っている。ゴーレムというかロボだが。あとは少数の魔術師が後方にて方向制御をしているらしい。雇われの冒険者もいない事はないが、小数だ。
「まずはメイン兵器であるゴーレムの見直しから行くか」
「おお君、やる気だねえ。俺はもう十分国に貢献したと思うから、はっきり言ってこれからは毎日面白おかしくゴロゴロしてたいんだが。ふあーあ」
だるそうな博士に。
「あんたのツテとはいえ助手になったんだ。俺が改善できる事はやるぞ。そしてこの俺の力を世界に認めさせてやる!」
意気込んで新兵器開発の意見を述べる事にした。そう、俺なら、この国の科学力さえあれば、世界最強国家へと押し上げることが出来る! ネトゲ界で多くの世界を屈服させたこの俺様の力を持ってすれば。見えるぞ! 俺の栄光の道が……。
「ゴーレムに乗り込むのはどうだ? そうすれば多少のモンスターの攻撃など痛くもない! 蹴散らしてやる!」
「それなら昔やったわ。あそこに試作機があるから試してみれば?」
無駄に主役機っぽい白い見た目のロボット、もといゴーレムが工場の隅に置かれている。埃だらけだけど。少し掃除をした後。
「よし、俺がパイロットだ。勝てる……」
俺のマシンが普通のゴーレムに向かって突撃する。操作方法は……なぜかアーケードスティックだ。いいのかこれ? だがわかりやすい。これなら俺にも動かせる!
俺のパイロットとしての適正を見せてやるぜ!
うおおー!
「……負けたわ。やっぱ二足歩行はきついな。歩くだけならギリ耐えられても、殴り合いとかなるとクッソ酔うわ。洗濯機の中みたい」
ゴーレムにコテンパンに殴られて降参する。性能は普通のゴーレムと同等、いやむしろ凌駕してる思うんだがとにかく酔う。気分は最悪だった。コクピット周りの振動と衝撃がやばすぎる。
「足はやめてキャタピラにしよう。それなら上下の揺れは何とかなる。キャタピラってのはな、こういう仕組みで動く車輪だ。ゴーレムが作れるんならこれくらい出来るだろ!」
「それってどうみてもガン○ンクじゃね? 下半身キャタピラのロボってそれはどうみても。その見た目はアウトでしょ!」
博士のつっこむ言葉を無視し、大まかな設計図を渡し技師に組み立てさせる。
完成! 上半身はそのままゴーレムだが、下半身をキャタピラに変えた新型ロボに乗り込み、さっそくテストだ。
「やっぱ駄目! 腕を振り回す時点で一緒だ! 上下は問題なくても左右がきつい! 結局酔う! 無理!」
ガン○ンクもどきから脱出して叫んだ。これもボツだ。
「やっぱり戦車だなあ。現代兵器って偉大だわ。こんな形な。こっから砲弾……いや魔法を発射して、この部分に乗り込む。さあ作れ!」
ノイズの技師たちに、戦車について図で詳しく説明し作らせる。
「もう異世界関係ないなお前。戦車で魔王に立ち向かうとか、いいのかそれ? ジャンル変わってないか?」
「勝てばいいんだ、勝てば。手段などどうでもいい」
しばらくして完成した戦車を見て。
「おお、これだよこれ! それっぽくなってる! みんなやれば出来るじゃないか!」
俺は感嘆の声をあげる。これならいけるぞ。戦車で魔王軍を蹴散らしてやる。すぐに戦車に乗り込み試運転する。とりあえず工場の周りを一周したあと。
「暑い! 暑いわ! こんな中入ってられるか! 空気は薄いし! 攻撃用の砲台に魔力をチャージすると、内部で起動させた『フリーズ』が消える! フリーズに魔力を回すと『ファイヤーボール』の魔力がなくなるし! ってか撃ってると魔力切れですぐ動かなくなるし! ダメだこれ! マジダメだわ! 中に氷でも置かないと無理! やっぱ戦車って凄いわ。よく出来てるなあアレ」
中が蒸し暑い上に、数発撃っただけですぐに動きを止める魔道戦車。これもボツだ。
「もういい! やっぱりゴーレムで行こう! 乗り込むのはきつい!」
結局元に戻った。ダメだ。やっぱり現代兵器は凄い。科学技術の結晶をそんな簡単に再現はできないようだ。特に動力がきついな。
「なにも現代兵器に近づける必要はない……。もっとこの世界のものを活用する、合理的な方法はないだろうか?」
他にも色々な案を出した。
「巨大なロボ――じゃなくてゴーレムを作り、兵員を輸送するとか。二本足じゃなくて四本足で安定性を高めて。前線に多くの兵士を輸送できる特別な仕様の……」
「だれが乗るんだよ。うちにそんな強い冒険者はいないぞ? っていうかゴーレムに戦わせた方が早くね?」
兵員輸送車の役割を考えてみたものの、肝心の兵士がいない。他にゴーレムのうまい利用法を考えてみるもこれと言うのが出てこない。
「ううん、思いつかんわ。完全に煮詰まった! ダメだな。なんかもっと発想の転換って言うか……」
「行き詰ったときこそ遊びも大切だよ? そうだ! 俺の秘密の施設に案内してやろう」
『お疲れ様です。冷たいお茶をどうぞ』
首をかしげている俺に、棒人間が近寄ってきて飲み物を持ってきてくれた。ありがたく受け取るが、その姿をみて少し愚痴る。
「そういえば思ったんだけどさ、あのメイドロボはなんだよ。性能は凄いけどあの見た目はおかしいだろ」
「いやね。俺も自分で作るのは疲れるからさ、設計図だけ渡して他の研究員に渡したら、あんなの出来ちゃった」
博士に見せてもらった設計図には、棒人間に『メイドロボ』と書かれており、人の世話をすると説明書きがある。
「絵下手だなあんた」
「絵心ないのはわかってるよ! でもちゃんと人間の形をしているって書いてあるのに、あいつらそのまま設計図どおりに作っちゃって。こんな棒人間に色気もかけらもないし! ちくしょう!」
博士は悔しそうに頭をかきむしって答えた。うーん、このメイドロボ残念だな。見た目さえ美少女なら完璧なのに。
「ところで秘密の施設ってのはなんだ?」
「おう、そだったそだった。この俺の楽園に案内してやろう。研究費をちょろまかして作った俺の自慢の秘密基地だよ」
息抜きに博士と遊びに行くことになった。
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博士が案内人となり、俺たちパーティー四人はノイズから離れた山の奥へと向かう。
「にしても何でそんな場所に作ったんだ? 魔王城には近いし危なくないか?」
「だからだよ! この周りにはな、危険なモンスターがたくさん生息しているから人が近づく事はまずない。キメラ計画の失敗で逃がしたマンティコアも野生化してるし」
「おいコラ」
思わず突っ込む。このハゲ、なんてはた迷惑な奴だ。自分で作ったモンスターは自分で処理しろよ。
「でも一番はアレだよ。アレ」
博士が指を指した先には、緑髪の少女がぽつんと座っていた。
「誰かいますよ? どうしてこんな所に?」
「怪我していますね。体中に包帯を巻いていますし」
マリンとレイが近寄ろうとするのを、博士が止めた。
「待て待て。ああ、そいつには気をつけてね。アレは『安楽少女』って言ってね。庇護欲を巻き散らかせて人間を誘い込むんだよ。危ないから近づかないように。倒そうとするとさあ、必死で擦り寄ってくるからね。心が痛まないようにゴーレムに駆除させるのが基本だね。まぁ彼女たちが生息してるおかげで、この辺には誰にも近づかず安全って訳だよ。入ろうとしたやつはこのモンスターにやられるから」
博士が詳しく説明する。ほう、食虫植物のようなものか。
俺たちの姿に気付いた安楽少女は、上目遣いでこっちを眺めてくる。そして包帯の巻かれた部分を痛そうに手で押さえて、懇願するような目で助けを求めている、ように見える。
「モンスターなんですの? でも怪我をしているようですし、見逃してあげれば。ってあら? この包帯、ニセモノなんですね?」
マリンが回復魔法を使おうとして近寄ると、その包帯と傷が擬態である事に気付いた。てへ、といった顔でニコリと笑う安楽少女。その笑顔を見て、こらこらといった顔で笑い返すマリン。なにお前ら仲良くなってるんだよ。
マリンとそんなほんわかなやり取りをした後、今度は背中についた実のようなものを、レイに差し出した。
「こんなの貰っちゃいました! ねえマサキ様、このモンスターって食べ物をくれるいいモンスターじゃないですか? きっと危害を加えたりすることはないですよ!」
モンスターにいいも悪いもあるかよ。
「どうせ毒でも入ってるんだろ? そんなもの捨てろよ」
そう吐き捨てるように言うが。
「私、この子となら友達になれそうです。私のマサキ様を狙ったりしませんし。なによりでしゃばらない! ねえ、飼っていいでしょう! ちゃんと水やりもしますし!」
一見か弱い少女にしか見えないモンスターを見て、レイがそんな事を言い始めた。
マリンはともかくレイまで! お前そんなキャラじゃないだろ! 女を見れば誰でも威嚇する危険なアンデッドだろ!? いや、アンデッドだからモンスターと気が合うのか?
「どう考えてもこいつは危険だ。ここで始末する」
「危険だから放置してるんだよ! 勝手に狩らないでよ頼むよ! 俺の隠れ家が見つかっちゃうじゃんか」
槍の柄に手をかけようとするのを博士が止めてくる。すると目の前の安楽少女は。
「……コロス……ノ?」
喋りやがった。植物の分際で。
「喋りましたよ! たどたどしいですが、そこがまたかわいいです!」
不快感を露にする俺とは対照的に、レイは珍しく年頃の少女のように目をキラキラさせている。
「私はレイ。よろしく」
「……レ……イ?」
「そうですよ。レイです。ねえマサキ様! 凄い! 私の名前を言いました。ねえ、今度はママ、と言ってみて下さい」
「……ママ?」
「そうです。ママです。ねぇマサキ様! この子飼っていいですよね?」
ママと呼ばれて優しそうに微笑むレイ。あいつのあんな表情は見たことない。ヤンデレの癖に母性に目覚めてるんじゃねえよ。
「ダメだ」
「なんでですか! マサキ様はすでに悪魔を飼ってるじゃないですか! いいじゃないですかあんな弱そうなモンスターくらい!」
「あいつは契約で無力化しただろ? コイツとは違う!」
「悪魔やアンデッドはOKでこの子はダメとか、私もアクア様も許しませんよ!」
安楽少女は、そんな言い争っている俺たちのほうを見ると、観念したように手をプルプルさせ、しゃがみ込んで言った。
「ウマレテハジメテ、コウシテニンゲント、アウコトガデキタケド……サイショデ、サイゴニアエタノガ、アナタデヨカッタ。……モシ、ウマレカワレルノナラ……。ツギハ、モンスタージャナイト、イイナア……」
涙を浮かべながら、申し訳なさそうに言葉を紡ぐ安楽少女。
うさんくさいしわざとらしい。
一応、最後の確認のために魔道具のメガネのスイッチを入れてみると。
『嘘つき』と表示。
「相手を選ぶんだな」
安楽少女の演技にウンザリした俺はペッと唾を吐き、槍で突き殺すことに決めた。この俺にそんな戯言が通用するか。
「マサキ! 何をするんですか! まさかこんな愛らしい生き物を手にかけるなんてしませんよね? きっとアクア様ならこう言うでしょう。『迷っている時に出した決断はね、どの道どっちかを選んだとしてもきっと後悔するものよ。なら、今が楽な方を選びなさい』。そう、この子を殺すなんてしたらきっと後で後悔しますわ!」
「迷いなど欠片もない。今すぐ殺してやる」
マリンの説得を無視し、槍で狙いを定める。
「さすがに可愛そうですよ! マサキ様、こちらに危害を加える気はなさそうですし、このまま放置しても問題ないですよ! マサキ様の野望の邪魔にはなりませんって!」
「ちょっと君! アレを殺さないでくれよ! こいつらがいないと俺の秘密の施設が見つかっちゃうだろ? これからも門番代わりに使うつもりなんだから」
レイも俺を止める。どうやら安楽少女の魅力にすっかりやられてしまったらしい。博士は別の理由だが。
「止めるな! この俺を嵌めようとするやつは命で償ってもらう!!」
三人にしがみ付かれ、身動きが取れない俺を見て、モンスターが。
「クルシソウ……。ゴメンネ、ワタシガ、イキテル、カラダネ……」
「その通りだ! 今すぐ殺してやる! どけお前ら!」
「させませんよ! あなた、早く逃げてください! 私達がこの鬼畜を抑えている隙に!」
「この子は私のペットにするんです! ダメですマサキ様!」
「お前らは甘すぎるんだよ! 簡単に虜にされやがって! そうだアルタリア、俺の代わりにぶっ殺せ! アレ? そういえばあいつはどこいった?」
仲間同士で争っていると、いつの間にか姿を消したもう一人の仲間に気付く。
「おいしょ」
俺達が揉めていると、アルタリアがいつのまにか袋を担いで帰ってきた。
「アルタリアさん? どこへ行っていたのです?」
「アルタリアも止めてくださいよ! マサキ様がもう少しで殺人をする所だったんですよ!」
「無事だったか? お前もあのクソモンスターに騙されたのかと思ったぜ」
アルタリアは嬉しそうな顔で大袋を下ろす。
「いやあ大量大量! 近くにめっちゃ簡単に倒せるモンスターがいるんだぜ? なんかさ、『私が生きていると迷惑かけるから』みたいなことを言ってきてさあ、望みどおり遠慮なくぶっ殺してやったよ! 無抵抗な奴を殺すのも気分いいな!」
下ろした袋の中を恐る恐る覗くと……中には大量の少女の首、もとい安楽少女の首が入っていた。さすがアルタリア、殺せるならなんだって殺すバーサーカー。やりやがった。
「ヒイイイイ!!」
仲間たちの首を見て、恐怖の悲鳴を上げる目の前の安楽少女。
「それでこそアルタリアだ。お前ら二人も少しは見習え」
「だって殺してって言ってたからさ、殺してやっただけ。しかも凄い経験値入ったし! こんなラッキーなモンスターも存在するんだな」
ラッキーか。それでこそドSのアルタリアだ。俺が言うのもなんだが血も涙もない奴め。この面倒なモンスターも彼女から見ればはぐれたメタルのスライムみたいなもんか。いや逃げたりしないからもっと楽だろう。
「いくらなんでも酷すぎます! 無抵抗の相手にこんな真似を。それでも神に使えるクルセイダーですか?」
「アルタリア! あなたには人の心がないんですか?」
アルタリアの血も涙もない所業を見て、マリンとレイが非難するが。
「でもこいつモンスターだろ? モンスターは殺すのが正しいんじゃないのか?」
「「ぐっ」」
アルタリアの正論に二人は黙り、他に反論出来ないか考え込んでいる。
「あーあ。やっちゃったよ。はぁー。俺の秘密の施設がばれちゃったらどうしよう? 国の研究資金をネコババしてるのばれたらどうなんだろ? 地位剥奪かなあ? 最悪死刑かな?」
博士は博士で別の理由で悩んでいた。
「モンスターを倒してなにが悪い! もっと私を褒めろよ! ってなんだよおめえらその顔は!?」
えへんと自慢気に腕を組むアルタリアを、泣きながら睨む二人。そんな彼女たちにに不服そうに言い返す。
「あんな子達を殺して良心が痛まないんですか?」
「なにそれ? モンスター殺してなにが痛むんだよ。意味わかんねえ」
本気で理解できないといった顔で答えるアルタリア。
「安楽少女の生息地帯は、隠れ家に最適な場所だったのに……あーあ」
「殺しちゃったもんはしゃーねえだろ?」
「そうそう、また別の方法で出入り口を塞げばいいよ」
アルタリアも俺もこのモンスターがどうなろうと知ったこっちゃない。すっきりした表情で告げた。この悪党! と言った表情で俺たちを睨むマリンとレイはスルーだ。
「ああああああ! なんてことだあ! まさかこんな鬼畜外道が存在するとは! みんな殺されちゃったよ! ぐうううう、あぎゃああああ。もう終わりだあ」
ガクガク震えながら、流暢に喋る安楽少女。先ほどまでの弱弱しい言動ではなくなり、絶望的な顔で叫んでいた。やっぱりあのカタコトは演技だったか。
「なんか気が済んだから、お前は見逃してやる。ありがたく思え」
目の前にいる生き残った安楽少女にそう告げ、そのまま森の奥へと進んでいく俺たち5人。
安楽少女の首のない死体がゴロゴロ転がっている、無駄にホラー染みてしまった山の中をそのまま進んでいくと、例の秘密の施設の扉が見えてきた。
「こっちだ」
博士がボタンを操作し、重い扉が開いていく。どうやら地下に作っているらしい。
明かりがつくと、中にあるのは大量のゲーム機やおもちゃだった。この男、国の研究費を使ってこんなものを作ってたのか? それにしてもなんていう数だろうか。合体したらタワーになるゲーム機もあるぞ。
「なんなんですか? これは? こんなの見たことがありませんね」
「説明するのはめんどくさいな。とりあえず最強の兵器だと言っておこう」
質問するマリンには適当に答えておいた。
「おーい! マサキ来い! こっちにはゲーセンの筐体がある。一度誰かと対戦してみたかったんだ!」
博士と一緒に格闘ゲームをプレイすることにした。
「おおバグ発見。くらえ真空投げ! 真空投げ!」
「あのさあ。君って普通にプレイできないのかよ? ムカつくんだけど。こんちくしょう」
手も触れずに相手をほおり投げるバグ技を使いまくっていると、博士が呆れた顔で叫ぶ。
その後、色んなゲームで遊んだが、バグ技を見つけてはコテンパンにするを繰り返していると博士は泣き始めてきたのでやめてやった。
「おお? なんだこれは? なんに使うんだ? こうか?」
「き、君。頼むから触らないでくれ!」
一方アルタリアは、その辺にあるおもちゃを乱暴に扱ってはガラクタに変えていく。それに気付き、必死で止める博士。
「こ、これは……間違いありませんわ! これぞアクア様に選ばれし者に与えられると言われる神器! 聖なる剣! きっとどんなものでも斬れるはずです!」
「はいはいそうですね。危ないね。ポイ」
自慢げに光り輝くライトサーベルを掲げるマリン。この節穴が。どう見てもプラスチック製なんだが。こんなのじゃゴブリンも倒せねえよ。取り上げてその辺にほおり投げた。
「アレ、こっちの部屋はなんでしょう? なにか人のようなものが並んでいますね」
レイは色々とゲームやおもちゃを見た後、施設の奥でショーケースに並べられた人影を発見したようだ。
「まさか人体実験のあとでしょうか? この中の人は死んでいるのでしょうかね?」
「おお、これはどう見てもメイドロボだ。なんだよ博士、ちゃんと作ってるんじゃねえか」
ガラスケースに並ぶ美少女たちの姿を見て、感動して言った。
「よ、よせ! そいつらに触るな!」
「なんだよ。独り占めする気か? 同郷の者同士仲良くやろうぜ」
必死な顔で止めるハゲを無視し、起動スイッチを押すと。
「ご、ご主人、ごごごごごご主人。ご主人様。ごごごご主人さ……」
なんかバグってる?
「ごごごごご、ご主人様……ごしゅごしゅごしゅ……ゴシュアアアア!!」
メイドロボは襲い掛かってきた。
「うわあ! あぶねっ!」
パンチが地面にめり込む。危ない。かわしそこねたら普通に死ぬ。
「こいつら! マサキ様に近づく輩は許しません! 『ライト・オブ・セーバー』」
レイの魔法で胴が千切れるも、上半身だけでこっちに這い攻撃を続けようとするメイドロボたち。他のメイドロボも腕が武器に変形させて戦闘態勢をとる。
「千切れても動くとは。ゾンビですか?」
「メイドロボじゃなくて戦闘メカだったのかよ」
レイと俺が危険なロボと対峙していると。
「あった、あった。機動停止!」
博士がリモコンのスイッチを押すと、その場にドサッと倒れるメイドロボたち。
「はあ、はあ。なんだコイツらは」
「これはな、俺が直々に作ったメイドロボだよ。妥協せずに徹底してな。多くの機能を詰め込み、日常の世話だけじゃなく護衛のための戦闘能力も入れてみたら、すぐ襲い掛かるやばいのになっちゃったんだよ。俺が作ったのってこんなのばっかりだよちくしょう! なんですぐ暴走するんだ! どいつもこいつも反抗期ばっかだよ! 売り出すわけにもいかないからここで封印したんだよ。ああもう」
悔しそうに叫ぶ博士。うん、この人の発明品には勝手に触れないようにしよう。
「よし、博士。俺がお前のゲームを完成させてやろう。バグがあれば直し、逆に原作にあったバグがなかったら追加する。デバッカーの仕事を引き受けようじゃないか!」
「君をここに入れたのはそんな理由じゃなかったんだけど。人選ミスかな? まぁいいけどさ」
こうしてノイズ技術試験隊の助手としての仕事が決まったのだった。
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