一部 10話 オペレーションα
「今日は戦わないのか? 早くモンスターをぶっ殺そうぜ? つまんねえよ」
クエストを受けずに街周辺を下見していると、アルタリアが文句を言う。
「いいかアルタリア、ただモンスターを倒すだけなら簡単だ。だが次の目標は、いかに効率よくモンスターたちを一網打尽に出来るかだ。そのためには地形に詳しくないとな。地の利を制すものが戦いを制すのだ。少なくともネトゲではレアモンスターの出現場所の近くにあらかじめ集まって……」
「ふぁーあ」
くっ!
俺の名言を無視して欠伸をするアルタリア。どうやらこのアホに戦術は難しすぎたようだ。せっかくいいことをいったつもりなのにそんな態度を取られるとちょっと恥ずかしい。
もういい。次だ次! モンスターを駆るのにいい居場所を探し当てるのが今日の目的だ。
気を取り直してしばらく歩いていると、丁度いいアーチ状の岩を見つけた。
「周りには岩がむき出しの大地。隠れる場所もない。そこに突き出したアーチ。これはいい」
大自然の中でどうやって形成されたのかはわからないが、いかにもファンタジー世界っぽいアーチの岩を見て俺は歩みを止めた。俺達の狩り場はここに決めよう。
次は仲間の魔法について正確に把握しなければ。
「レイ、お前が今使える最大威力の魔法はなんだ? 特にまとめて敵を倒せる範囲が広いのがいい」
「そうですね……。今覚えている中で範囲が広いものとなると……中級魔法の『ライトニング』でしょうか? あ、ですが今溜まっているスキルポイントなら、炸裂魔法を覚えることが出来ます。これは特殊な系統の魔法で、威力なら上級魔法より上です」
レイは自分の冒険者カードを確認しながら答えた。
「炸裂魔法か……。よくわからんが戦闘で使えるのか?」
「この使い手は主に土木工事の仕事についている者が多いです。これは岩盤をも砕く威力を誇ります。もちろんモンスター相手にもかなり有効です!」
炸裂魔法か……。土木工事に使えるということはダイナマイトのようなものなのか。それなら戦闘でも役に立つだろう。
「よしレイ。それを覚えて来い!」
「わかりました!」
俺の話を聞くや否や、レイは街へとダッシュで戻っていった。
……10分後
「覚えてきました!」
「早いな!」
はぁ、はぁと息を切らしながら自慢げに冒険者カードを見せつけるレイ。そこには《炸裂魔法》と書かれている。
「工事現場のおじさんに教わりました! この街はまだ城壁が完成してないので、公共事業の公務員がいたんです!」
「そうか、よくやったぞレイ」
「これくらい当然ですマサキ様! あなたは私の運命の人! なんでも従いますから導いてください! どんな勇者よりも強く! 王より偉く! 魔王より恐れられ! 悪魔より外道なマサキ様!」
「そこまでいわれると逆に馬鹿にされてる気がするが、一応褒め言葉として受け取るよ」
俺はレイの褒め殺しに頷いた。
「疲れてるとこ悪いが、さっそく見せてくれ。あの中くらいの岩に向かって」
「わかりました! 炸裂魔法!」
レイが呪文を唱え、岩に向かって炸裂させる。
するとパンパンパン! と音が鳴り響き岩が粉々になった。
「おお……、すごい威力だな。あの岩を粉砕するなんて」
その炸裂魔法の破壊力に感心する。
「マサキ様のためならこのくらい当然です」
スッと撫でやすい位置に頭を寄せるレイ。だが、わかっていて無視をして続けた。
「よし、お前の新しく覚えた魔法はわかった。これならこの作戦も期待できそうだ」
撫でて欲しそうに上目使いで見上げるレイを放置し、背を向けて次の準備をすることにした。
それからみんなに手伝ってもらい、岩を運んで行き止まりを作っていく。
「いいか、まずこのアーチ目掛けてアルタリアが走る。デコイでモンスターの大軍を引き連れて来い。その先は行き止まりにする。そこでモンスターの足が止まったところを、レイの炸裂魔法で一網打尽にする。いいな」
俺は作成したマップを見て仲間に説明をする。
「でもマサキ、この障害物の配置では東ががら空きですよ? これでは東から逃げられてしまうのでは?」
俺のマップに疑問を投げかけてくるマリンに。
「いいところに気付いたなマリン。確かに東のルートには何もない。だがこれも戦術のうちだ。もし完全に道を封鎖してしまえばモンスターは死に物狂いで反撃してくるかもしれない。死を覚悟したものは非常に危険だ。窮鼠猫を噛むという言葉もある。しかしあえて東を残すことにより、モンスターに希望を与える。この小さな穴めがけて敵は殺到するだろう。そこから逃げ出したものを――」
「私が後ろから追いかければいいんだろ?」
俺が言い終わる前にアルタリアが続けた。
「そうだアルタリア。包囲から逃げ出して気が緩んだところを襲い掛かれ。追撃戦はこちらが優位だ」
口を挟んできた彼女に同意する。
「いいぜ。正面から斬りつけるより、背を向けた相手の方が楽だからな。ハッハッハ」
笑いながら自分の役目を理解するアルタリア。
彼女は単なるアホの子かと思いきや、少なくとも戦いにおいては、直観かなにかしれないが知恵が回るようだ。
「じゃあみんな、この作戦は理解できたな。これからクエストを受けてくるぞ」
三人が頷く。俺はギルドにいったん戻り、クエストの張り紙を片っ端から剥ぎ取ってきた。
「オペレーションα、スタートだ! アルタリア、モンスターをあのアーチまで連れて来い。そしてすぐにぐるっと回って脱出だぞ」
「わかってるぜ! ひゃははは! 楽しみだ!」
大量のモンスターに追われながら、楽しそうに大地を走り抜けるアルタリア。まっすぐこちらに向かってくる。
「マリン! 準備はいいか!? アルタリアがこっちに来たら、すぐにタッチで交代だぞ!」
「わかっています! 心配ありません!」
プリーストのマリンは向かってくるモンスターの大軍たちを前に仁王立ちだ。アーチの門番のように立っている。正直に言ってプリーストである彼女にどうにかできる数ではない。だがあくまでアルタリアとモンスターを引き離すのが彼女の役目だ。アルタリアが逃げる時間さえ稼げればすぐに引っ込んで貰う。避難用の小穴も作っている。
「行くぜえマリン!」
「はい! アクア様のために!」
アルタリアはモンスターをアーチの中に誘き寄せる。彼女が安全に逃げるためにマリンが代わりにモンスターの的になる。あくまで一時的だが。
「むむむ……。この数は危険ですね! ですがアクア様に仕える私には……」
「マリン! いいからすぐに避難所に引きこもれ! アルタリアはすでに安全地帯に逃げた! お前も下がっていい!」
大軍相手に身構えるマリンに上から叫ぶ。
「とおっ! はあっ! セイクリッドブロー! 短い戦いでしたが下がりましょうか」
軍勢の最前線を少し殴った後、マリンは避難所の小さな洞窟に隠れた。
「いいかレイ! 今こそさっきの力を見せてやれ! 炸裂魔法だ! やれ!」
「はい! 私めにお任せください愛しのマサキ様! 食らいなさい! 哀れな野獣たちよ!」
安全地帯であるアーチの上に立っている俺とレイ。敵を見下ろして、レイが魔法による攻撃に移る。杖から強力な魔力がバチバチと火花を上げて高ぶっている。
「白より白く光より純白に我が真紅の心臓を捧げたもう。運命のとき来たれり。混沌の世界より昇る理。愛こそ真理となりて現出せよ!誓え誓え誓え、我が力の奔流に望むは純愛なり。並ぶ者なき純愛なり。邪魔物等しく粉砕すべし、超自我より来たれ! これが我が最大の威力の攻撃手段、これこそが究極の愛情魔法、炸裂魔法!」
レイが呪文を唱えると、モンスターたちの足場がまるで地雷原のように次々と爆発していく。ギャアと呻き声をあげて混乱に陥るモンスターたち。なにが起きたのかもわからず、完全にパニック状態に陥っているみたいだ。
「ちょっとその呪文は怖いけど、よくやったぞレイ!」
俺はレイを褒めながら、ボウガンで上からコソコソと矢を撃っていく。正直俺のこの行動は作戦全体としてはあまり意味はないのだが、少しでも経験値を稼ぐために地道にやっている。
「マサキ様、あなたのためなら何でもやります。これくらい当然です」
「ああ、よくやった。これからも頼むぞ。敵はまだまだいる」
笑顔で微笑みかけるレイ。正直伸びまくったボサボサの髪で怖いのだが、今回は素直に褒めることにした。
炸裂魔法の不意打ちで混沌の最中にあるモンスターたちは、想定どおり開けておいた東から逃げ出す。それを
「アルタリア! そっちにいったぞ! いそいで――」
「ひゃっはーーー!」
すぐさま背後から剣で斬り捨てるアルタリア。俺の指示よりも早く。彼女は完全にこの作戦を理解しているようだ。今までただの馬鹿だと思ってたが少し上方修正しておこう。
「順調だ。順調すぎるな。もうこれは俺たちの勝ちだな。フッ」
俺がつい敗北フラグを言ってると、一匹のモンスターがアーチを昇ってすぐ近くまで迫ってきた。ボウガンを装填する暇はない。
「おっと、まだ油断するのは早かったな。これでも食らえ!」
俺は持っていたビンを投げつける。こんなこともあろうかと緊急用の装備だ。ビンが爆発し、そいつを撃退した。
「それはなんです?」
そんなレイの質問に。
「これは衝撃を与えると爆発するポーションだ。実はお前との篭城戦用に用意してたんだが、これを人に向けて使うのはさすがにアウトだと思ってな」
「マサキ様! なんて心優しきお方! さすが運命の人!」
惚れ直した! という様子のレイ。
うーん。
これは優しいと言っていいのか。お前に向けてぶっ放そうとしたのをやめただけだぞ? そもそも優しい人ならこんな危険なもの用意しないよ。
「レイ、まだ敵は完全に壊滅させたわけじゃない。最後まで気を抜くなよ」
このもやもやは後にしよう。俺は気を切り替え、レイと自分自身に向けて言った。
「はい! もう魔力切れで炸裂魔法は撃てませんが……、ファイヤーボール!」
残ったモンスターたちを倒していくレイ。
「マリン! お前ももう出て来い! 敵の数は残りわずかだ!」
「了解しました!」
避難所に隠れていたマリンも再度戦線に加わり、集まった敵をほぼ全滅させた。
「オペレーションα! 大成功だ! 任務完了!」
俺はガッツポーズで自分の作戦成功の余韻に浸る。辺りには大量のモンスターの死骸が散らばっている。フッ。俺は天才じゃないか? 神じゃないか? この数をたった4人で倒すなんてもうこれは勇者名乗っても問題ないレベルだ。
「すごかったぞレイ! お前の魔法の威力! あの巨体モンスターの足が吹っ飛んだからな! 興奮したぜ!」
アルタリアはレイの《炸裂魔法》を褒め称えた。
「いえアルタリア。あなたの攻撃力はやはり凄いです。炸裂魔法で仕留め切れなかったものも楽々貫通させてて」
レイもアルタリアの剣戟を褒め返す。
「レイさんも、アルタリアさんも。みなさん大活躍でしたね。私は最後に少し戦っただけで、あまり役には……」
申し訳なさそうにマリンが会話に入ると。
「何言ってんだ、お前が囮になってくれなきゃこんなに上手くいかなかったぜ」
「そうですよマリン。あなたは十分に役目を果たしていました。あなたのおかげでこっちは安心して炸裂魔法を放つことが出来たんです!」
アルタリアもレイもマリンのことを持ち上げる。
いい光景だ。
仲間たちがそれぞれみんなを支えあっている。
最初にこの三人と組んだときはどうしようかと思っていたが、性格に問題があろうが腐っても上級職なんだ。使い方さえ工夫すればこの様に大きな成果を上げることが出来るのだ。結果に満足していると。
「にしてもマサキ、お前は特に活躍してなかったな」
アルタリアが俺にそんな言葉を投げかけて来る。
「ああ? この戦術を考えたのは誰だと思ってる! 言っとくがお前たちだけじゃあ全滅か敗走だからな! この俺が色々知恵を振り絞ったからこそここまで出来たんだ! それを忘れるなよ!」
俺が言い返すと。
「はっはっは、冗談さ。最初に岩を動かしてたときはつまんねー男だと思ったが……。マサキ、あんた最高だぜ。これからも色々と戦い方を教えてくれよ」
アルタリアは素直に俺の事を褒めてきた。
えっ?
なにこれ?
なんか恥ずかしい。そんなに褒められると。この三人は単なる踏み台に過ぎないと思っていたのに。
それなりに名を上げたら問題児共とおさらばしてまともなパーティを組み替えるつもりだったのに。そんな事言われるとこの三人に情が沸いてくる。
駄目だ。これは罠だ。錯覚だ。こんな変則的な戦術が通用するのは雑魚だけだ。この先大きな戦いがあれば今の仲間じゃあ無理だ。使えない。
昔を思い出せ。ゲームで仲間なんて一時的なものだ。上手く取り入ってアイテムを手に入れ、用がなくなれば見捨てて、もしくは裏切って別のギルドへ。それが俺のやり方だった。
だが……。
彼女たちはゲームじゃない。顔の見えない性別も年齢もわからないどうでもいい誰かじゃない。すぐ隣で、一緒に戦った戦友だ。とても見切りを付けにくい。
「調子狂うな。はあー」
俺は喜ぶ三人を見てため息をついた。ああ、俺らしくもない。
「そういえばこのモンスターの死骸はどうするんだ?」
死屍累々とした戦いの後をみて聞く。
「それはですね、ギルドに頼めば移送サービスを行ってくれますから。放置していて大丈夫ですよ」
「ふーん、なるほど」
そういわれれば前にモンスターを倒した後、その肉が食堂で出てきたっけ。わざわざ運んでくれると助かる。なにせこっちには無限に素材が入るポケットとかが無いのだから。自分達だけで運ぶのは無理がある。しかもこの量だ。
「それならよしと。じゃあ俺の冒険者カードを確認するかな。少しは成長しているだろ」
昨日は全く経験値が入らなかったが、今回はボウガンで撃ったり爆発ポーションを投げたりして戦ったから少しは稼げるはずだ。
「よし!」
やはり経験値が入っていた。それでレベルも上がっている。
「なにかスキルを取るのですか? マサキ様?」
顔をぐいっと近づけてレイが尋ねてくる。
「この世界で、いやこの初級魔法のスキルには、『クリエイトウォーター』ってのがあるよね。これは一度水を出したら消えたりしないんだろ? これは役に立ちそうだ」
「そうですが、初級魔法なんて覚えてどうするんです? ポイントの無駄ですよ?」
レイが俺の話を聞いて首を90度近くカクッと傾げる。いちいち動きが怖いな。
「ここにコップがある。これに『クリエイトウォーター』を出せば、いつ何時でも水源を確保できる。見ていろ」
俺がクリエイトウォーターを発動させ、コップに水を入れる。すると。
「ああ丁度喉かわいてたんだ。くれよ!」
俺の返事を聞かずに強引にコップを奪ってごくごくと水を飲むアルタリア。
「おかわり!」
「やかましい! わかったよ入れてやるよ!」
アルタリアがスッと差し出すコップにこぼれない様に水を注いでやる。
「ああ生き返るぜ!」
「なるほど便利ですね。ですが水ならあらかじめ準備しておけばいいのでは? ポイントを消費してまで覚える必要があるのです?」
ゴクゴクと水を飲むアルタリアをスルーしておき、レイが俺に疑問の顔を浮かべる。
「確かに、戦う前に食料や水は用意しておくのが当たり前だ。だが仲間とはぐれたりして一人になってしまった場合、水を生み出せるかどうかで大きく変わってくる。また篭城でも優位になる」
「なるほど! 目から鱗ですマサキ様! さすがは運命の人!」
ドヤ顔で説明する俺に納得するレイ。ちなみに篭城ってのは主にお前対策なんだけどな。
「さらに『ティンダー』を組み合わせることにより、いつでもお湯が作ることが出来る」
アルタリアから取り返したマグコップを炙り、水をお湯へと変える。
「おお! 一見スキルの無駄遣いと言われている初級魔法にも、そういった使い道があるんですね!」
俺の魔法スキルを見て感動するレイ。まぁ水の確保は誰だって考え付く、と思う。特にごり押しに特化しないスタイルを選ぶならだ。多分。
しかもこれでレイが夜中によじ登ってきても、熱いお湯を浴びせ放題だ。かなり優位に立てるぞ!
「さすがはマサキ様! あなたは天才です! そうだ! 私もスキルポイントが溜まったのでした! 私も覚えますよ! 《クリエイトウォーター》《ティンダー》」
「えっ」
一瞬の迷いも無く、レイは自分の冒険者カードを操作して二つの初級魔法を習得した。
「たしか鍋がありましたね。まずは水を少々」
レイはクリエイトウォーターで鍋に水を張る。
「ティンダーで温めて……」
さらに炎を出して水を沸騰させる。アークウィザードだけあってティンダーの威力がケタ違いだ。俺のがマッチなら彼女のは焚き火みたいだ。
「それに今回倒したモンスターで、食べれる部分だけ上手く剥ぎ取って……。《ライト・オブ・セイバー》(弱)」
レイは手に小さな光の刃を発生させ、包丁のように使って綺麗にモンスターの肉をトントンと切り分けていく。
《ライト・オブ・セイバー》ってこんな技だっけ? 接近戦でモンスターを切り裂く上級魔法じゃなかったっけ? なんでこいつはそれを包丁代わりに使ってるの? しかも無駄に器用だな。
「もうすぐスープが出来上がります。待っててくださいマサキ様」
どこからか調味料も加え、もうすぐ料理が完成しそうだ。
「うまそうだなあ!」
「いいですねえ。レイさん中々考えますわね」
アルタリアとマリンもレイの手際を褒めていた。
あれっ?
なんかムカつく。
ここは俺が褒められる場面じゃないの?
ありのまま起こった事を話すぜ。
クリエイトウォーターとティンダーの組み合わせをレイに教えたら、いつの間にかスープが出来上がっていた。
この女イラってくるな。なんでさっき俺が教えたばかりなのにさらに応用を加えてその先に行くんだよ。
なんだか自分の存在意義を潰されていくようで悲しくなる。
もうレイの目の前で魔法の組み合わせを披露するのはやめよう。そうしよう。
「駄目ですよ。これは私が愛しのマサキ様に作ったものです。あなたたちにはあげません」
スープを煮込みながら、レイはマリンとアルタリアを追い払っていた。
「なにを言うんだレイ。俺達は仲間だ。パーティだ。みんなで一緒に食べようじゃないか。それがチームワークに繋がるんだ」
俺はレイを説得する。
「そうだぜレイ! マサキの言うとおりだ! ケチなこと言うなよ」
「みんなで分かち合うのが仲間ですよ! 辛い思い出も、おいしいご飯も!」
アルタリアとマリンも俺の言葉に同調する。
「はあ、わかりました。これは愛する夫への特別料理だったんですが、マサキ様がそう言うならみんなで召し上がりましょう」
ため息をつき、仕方なくスープを全員で食べることに同意するレイ。ってか誰が夫だ。
それに俺は彼女一瞬ポケットになにかを隠したのを見逃さなかった。
「なにを入れようとした?」
「なにも」
「嘘つけ!」
「なんのことです?」
ゴソゴソと服の中に物を隠すレイ。
危ねえ。
こいつの料理を一人で食べるとか危険極まりないな。
間違いなく睡眠薬でも媚薬でも仕込もうとしていたに違いない。油断も隙もない女だな。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「うめーなコレ。マジでうめえ。あり合わせのモンスターから作ったとは思えねえぜ」
「そのとおりですわ。レイさん、あなたきっといいお嫁さんになりますわ」
「そんなの当たり前じゃないですか。おいしい料理を作るのは妻の務めです!」
スープを食べながら楽しそうに話している問題児三人。
「マサキ様!? どうです!? お口に合いましたか!?」
「え? ああ、うまいよ」
聞いてくるレイに、俺もボソっと言った。
「それはよかったです! このレイ、あなたのためならどんな食材でも手に入れてきますから言ってくださいね! 今回は即席ですからこの程度の料理しか作れませんでしたが、私の本気はこんなもんじゃありません! 次は絶対食べてみてください」
「ああ、楽しみだ。ぜひいただこう。みんなでな。みんなで食べよう。パーティみんなでな!」
みんなという言葉を何度も強調して返事をした。チッと悔しそうな顔をするレイ。二人きりで食事なんて絶対ごめんだ。なにを入れられるかわからない。
スープをすすりながらそう答えた。
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