EP6.ありふれた時間
「ほたるちゃんの事もっと知りたいでしょ?」
ふいにそう言われて動揺した。
「あれ?図星?」
「いや、図星じゃないけど」
「もう~面白くないな」
「いや、橋本さん居る前で言える君も凄いと思うよ」
そう言うと、彼女がこう言った。
「私の事なんて知っても面白くないよ」
「ほたるちゃん、私にも秘密にしてる事あるもんね」
「ゆいゆいに聞かれた事は全部話しているよ?」
「えー本当に?」
「話してる」
彼女は、自分は隠している事は無いと言っていた。
ただ、これは聞かれたことに限定されていた。彼女は自分から自分の事を話したがらない人だった。
「じゃ、僕が質問しても答えてくれるの?」
僕がそう言うと、
「内容による」
と上手く交わされた感があった返し方をされた。
「あーやっぱり図星だったんだね」
と西本さんには言われる始末。
1日目のお昼はこんな感じで終わった。何とも騒がしかったというか忙しかったというか。
午後授業は実力テストだった。入学してこれがお決まりになりつつあると思った僕は自然とやる気が身体から抜けていく感じを覚えた。
テストを終えた後、次の週にやる授業の内容を先生が説明するだけの授業だった。
クラスでテストの後は聴くだけの授業と聞くと皆、喜んでいた事を今でも覚えている。
現に僕もその1人だったけど。
「はーい、では次週する授業の内容について説明します」
「その内容は「命」についてです。高校生になってこんな事なのかと思うかもしれないけど、高校生だから大事な事だと思って下さい」
「では、プリント配るから目に通しておいてね」
僕が学生の時は、命に対しての授業が多く取り扱われていた。
道徳。当時はそういった授業があった。今ではあまり見られなくなったけど。
こうして、1日目だと思わない1日目が終わった。
帰り道、彼女と一緒に帰る事になった僕は、初めて誰かと登下校したんだなと改めて思った。
「何か、行きも帰りもぼーとしてるね」
突然話し掛けてきた彼女に思わず驚いてしまった。
「私が居ても居なくても同じかな?」
「いや、そんな事はありません。感謝してます」
「だったらもっと楽しそうにしてよ。敗北した戦士みたいな顔になってるよ」
「どういう例えよ(笑)」
「ところどころそうやって笑われると馬鹿にされてる気がする」
「してないよ」
そんな会話をしていると家の付近になった。
意外と僕達の家から学校までそんなに距離が無かった気がした。
やっぱり誰かと帰ると、こういう風に感じるんだなと思った。
「じゃ、また明日」
彼女は、自分の家の前で僕に手を振ってそう言った。
普段不愛想に見えるけど、こういう一面もあったから僕は好きになったんだなと思った。
「また明日」
この「また明日」が後、3年は言えるんだなってこの時は本当に思っていた。
to be continued…
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