EP5.初めてのお昼

あの入学式から1日、今朝から彼女と登下校する事になった。

母はニヤニヤしながら僕に「何で一緒に登下校する事になったの?」とか聞かれたけど、特に理由が無いんだよなと。

そもそも、彼女が言い出した事だ。でも僕にも利点があった。


「彼女を知りたい」


この時の僕は、恋とかそういう意味で彼女を知りたいと思ったのではなく、単純に彼女が何を考えているのか知りたかった。

全然自分の事を話してくれない彼女。まぁ数回しか会ってないけど、こないだあんな言い方されたから僕も意地になって知りたくなったのだ。


「こんな可愛い女の子と歩いてるのに、他の事考えてるのね」


僕が色々考えている時、それに気付いたのかまた少し拗ねながら言った。


「ご、ごめんって。今日からやっていけるか心配で」

「そう…そんなに心配しなくても」


相変わらず、少し冷たいというか素っ気無いというか。

元からこうなのかと思っていた。


「あのさ」


学校の門に入ろうとした時、彼女が止める様に言い出した。


「お昼、どうせ1人でしょ?」

「ぼっち確定にされたのは非常に辛いが、確かにそうなる可能性があるな」

「んじゃ…」


彼女は少し恥ずかしそうにこう言った。


「お昼、食べない?一緒に」

「え?」

「もしかして、ゆいゆい付いてくるかもだけど」

「えーと」

「男なのにはっきりしないのね。じゃ良いわ」

「あっちょっと待って」

「何?」


彼女の視線から「一緒に食べるって言ってくれなきゃ駄目」みたいな感情を読み取れたのはこの時が初めてだった。


「食べる!!食べます!!」

「なら、食べよ」


こうして、登下校を一緒に過ごすだけではなく、昼食も一緒に過ごす事になった。

確かに、もうグループ的なのは確立してる感じだったから有難いのは有難かった。


午前中は、「お昼どういう会話をしようか」とか「どういう感じになるのかな」とかずっと考えてて授業は正直あんまり覚えてなかった。


そしていよいよ昼休み。僕の考えていた事は台無しになった。


「さて、どうやって食べる?」

「普通に机を向い合せで良いと思う」


彼女と席が隣という訳でも無かったが、クラスで余ってた机も持ってきた。


「余る事ってあるの?」

「この辺の学校では良くある事よ。小学校の時はよくあったから」

「そうなんだ。でもその方が食べやすいよね。席隣じゃなかったから」

「そうね」


そういう会話をしながら、過ごしていると、、


「ねぇ~ほたるちゃん一緒に食べよう?」


そう、西本さんが来たのだ。

違うクラスの為、遅れて来たらしいが、僕としては2人でと思ったが、確か彼女は「ゆいゆいが付いてくるかも」とは言ってたけど、まさか本当に来るとは。


「あら、寺川君も一緒だったのね。お邪魔して良いのかしら?」

「今更過ぎないか?分かってて来たでしょ?」

「てへ、バレた?」

「バレてる」

「もー寺川君って絶対彼女居ないよね?」


食べていたものを吹き出しそうになった。


「だったらどうなの」

「やっぱり、素っ気無いもん。ねーほたるちゃん」


彼女は食べているのに集中しているのか、反応しなかった。


「あら、ほたるちゃんの「否定したいけどしない」が出た」

「え?」


西本さんは彼女が反応しないのではなく、したくてもしないと思ったのだ。


「ほたるちゃんが何かを聞いて言わない時は、反応がないとかじゃないからね」


そう言って、西本さんは僕の耳元で、


「ほたるちゃんの事もっと知りたいでしょ?」


ふいにそう言われて動揺した。


to be continued…

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