EP7.自分で受けた命の学習
次の週、予告通り命についての授業をした。
内容的に、中学生の時に受けたのと類似してたが、1つだけ違う事があった。
先生の旦那さんが昨年亡くなった事。
そう、実際にあった命に関する話だった。
「先生は、昨年夫を亡くしました」
そう言った瞬間、教室中が驚きの声に包まれた。
「私の夫は、癌でした。進行性の早い癌でした」
「夫も教師でした。昨年までこの学校で。彼もまたこういった命の学習をして生徒に命の大事さを教える様な人でした。今は私がそれを引き継いでる形になっています。彼の出来なかった事を考えながら皆にもそれを感じて欲しいと思って引き継ぎました。皆にとっては身近に無い話だけど、身近になってからじゃ遅いの。今の内に理解して日々の生活を生きて欲しい」
「皆も辛い事、悲しい事たくさんあるかもしれません。でも今生きてる事を忘れないで下さい」
先生のこの言葉は今も鮮明に覚えていて、その後の僕の支えともなった。
授業を終え、泣いてる人もいれば、やはり普通の人もいた。
人間はどれだけ言っても実際体験しないと解らないんだなとこの時は思った。
この時は自分も客観的な立場に居た気がする。
授業は終わったはずなのに、彼女はまだ席に居た。
まぁ、休み時間だから動かなければいけないという事は無かったので、特に気にもしなかった
「どうしたの?そんな暗い顔して」
僕は、いつも変わらない様ででもちょっと暗そうな顔をしていた彼女に話し掛けた。
「あんな話を聞いて暗くならない人が不思議なくらいよ」
ごもっともな回答が来たので、僕も真面目に切り替えた。
「そ、そうだよね。ごめん。ちょっといつもと違うかったから」
「あら、寺川君がそんなに私の顔をまじまじ見てたなんて、ちょっと意外だったわ」
「いや、そんなにまじまじと見てたら可笑しいでしょ」
「顔色を窺って話してるのだと思ってたよ」
「酷いな(笑)」
彼女は、少しだけクスッっと笑った。
「可笑しい人」
「お互い様だよ」
「私の何が可笑しいの?」
「可笑しいって人に言える事だよ」
「正直者だって言って」
「上手く言い換えてるね」
「ちょっと馬鹿にしてる…」
「ごめんって」
いつもらしい会話に戻って、僕は少し安心してチャイムも鳴ったので席に戻ろうとした。
「日常って、普通に降ってくる物じゃないよ」
彼女は、僕が戻る際にそう言った。
僕はこの言葉の意味を理解出来なかった。
理解しようとしなかったのでなく、理解を超えた事がこの時から既に始まっていたのだ。
to be continued…
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