ガラス─レイニーデイ
季節は春。とはいえ雨の日はまだ肌寒いような、そんな頃。その日もやはり雨が降っていて、しまいかけていた冬物のコートを着ることになった。
そうまでして外に出たのに、目的地も半ばというところで、入っていた予定は立ち消えてしまった。どうしてだとかいろいろと言葉を尽くしてはみたが、
なので私は気まぐれに──あるいは気晴らしに、そのまま電車に乗って、少し遠出をした。何の当てもなくただ見知らぬ街をぶらついて、何となく目についた古本屋に入ってみて、特に何も買わずに外に出た。
雨はまだまだ止まないようで、むしろ大地を踏み鳴らすような迫力を持ってきている。
予定がなくなっていてよかった、と感じて、そこで私は、ああきっとこれでよかったのだと納得した。
心が晴れたとは言わない。
けれど雨に濡れることは必ずしも悪いことじゃない。心の雨はしとしと降って、涙の代わりに泣くのだろう。それが大人の女というやつだ。
いいえわたし、今日は濡れたい気分なの、って。
思いながら、傘を差す。
ガラス張りの古本屋がばつばつ汚く泣いている。
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