プロブレムチルド6
(不味いな......この状況で圭子まで降臨したら絶対に殺られる。
だが、窓から逃げようにも金剛がいるんじゃ、即捕まって補習室送りだ。
圭子を降臨させずに金剛に見つからない方法は......選択肢は一つしかないな。
オレをここまで追い詰めるなんてやるじゃないか楽斗......。その計算高さを賞して後で蹴っ飛ばしてやる)
「ん?どうしたのかなー?急に止まって。素直にやられる気になったの?って......
突然ピタリと走っていた足を止め、目に怒りを灯し不適な笑みを浮かべ振り返った大毅に思わず菫は嬉々してた表情を崩し足を止めた。菫の後ろに付いていた真愛含む一組のメンバーも大毅のその表情を見て、皆同じく小さく悲鳴を上げ足を止める。しまいには流音でさえ、その表情に威圧され足を止めてしまった。
それもそのはず。いつもクールキャラを貫いている大毅は笑っているときでさえあまり表情を変えないため、『吹き出して笑っただけ』という少ししか表情を変えない行為でさえ注目されるほどなのに、今目の前にいる大毅は完全に表情を変えているのだ。
そして、それは大毅と小学生時代からの友人である菫、真愛、流音も見たことがない表情だった。
「す、
「な、なはは...」
小声で耳打ちしてきた流音に苦笑いで答える菫。
「笑ってる場合じゃないでしょ!あんな表情見たことないわよ!?何やらかしたのよ!」
「え、え~と......ちょっとからかってたら怒っちゃった的な......?」
「ちゃんと答えなさい!い い わ ね ?」
「るーねぇ、目がイッちゃってるよ......。ッ!?分かった!分かった言うから肩潰さないで!!」
ギリギリと肩に力を加えてくる流音に根負けというか普通に負けた菫はここまでの経緯を話そうとした瞬間、大毅の笑い声が廊下に響いた。
「ハハハ。そうだ、何でこんな簡単な事をオレは気づかなかったんだろうか。この場にいる全員を叩き潰せば良いだけの話だろうに」
(((大毅が壊れたぁぁぁあ!!!)))
その場にいた全員の背筋が凍る音がした。
「......るーねぇ」
「......何?」
「後は任せた!私は逃げるっ!」
「あっ、こら!待ちなさい菫!私も逃げるわ!」
「俺も逃げる」「私も!」「ぼ、僕も!!」
いち早く危険を察知して逃げ出す
瞬く間に、その場にいた二人の男以外は自分の教室へ帰っていった。
「......で、お前は消えないのか?」
「笑わせるなよ大毅。俺が今更お前の表情で逃げるとでも?むしろやる気が出てきたさ」
大衆が怯えた大毅の冷えついた瞳に睨まれたのにも関わらず、宗吾はそれを笑い飛ばした。
「やるのか宗吾。怪我するぞ?」
「言ってろ。怪我するのはお前だよ大毅」
「忠告はしたからな━━━」
ポキポキと骨を鳴らしながら答える宗吾の胸の真ん中、
「ふぅ。危ないな、いきなり急所を狙うなんて」
「金的を狙わなかっただけマシだろ?」
「そりゃそうだな」
距離を取り、笑い合う二人。そんな和やかの空気もつかの間、再度攻撃に入ろうとして大毅は蹴りを、宗吾は拳を放つ。
が、それは不発に終わった。理由は単純、二人の間に、いつの間にいたのか一人の男がいたからだ。
「お、おい大毅......俺はこんなの聞いてないぞ!?」
「け、圭子が乱入してくるとは想定したが、まさか......こいつが来るなんて......」
まるで生まれたての小鹿のように足をガクガクさせる二人に、男━━━金剛は無情にも死の宣告を告げた。
「貴様ら二人とも授業中に何やっているんだ?まぁいい。指導室送り決定だ。今すぐ行ってこい」
それを聞いて二人の顔が引きつる。当然だ。
「せ、せめて補習室にしてください!」
「オレ達はまだ死にたくない!」
過去に一度だけ指導室送りを食らったことのある二人は知っていた。補習室送りはまだ
昔、楽斗が補習室送りでガタガタ言っていたときは思わず笑ってしまったものだ。あの程度で怯えるなんて、と。
しかし、二人の前に立つ死神は、しがみ付いていた宗吾と大毅を早々に凪ぎ払い、笑いながら教室へ戻っていった。先に教室に戻ったクラスメイトを
「おい......どうする大毅?逃げるか?」
「......行くしかないだろ。逃げたら本気で殺されるぞ?それに多分、今日は月初めの金曜だから集会あるし早めに終わってくれるだろ......」
「......だよな。出来れば俺、集会も出たくないんだがな」
「......それはオレも同感だよ。何言われるか分かったもんじゃないからな」
「「はぁ......」」
二人は肩をズーンと落としてトボトボと指導室へ向かっていった。
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