プロブレムチルド2

(何やっているんだ、楽斗あいつは)


 大毅だいきは学校に来て教室のドアを開けたのにも関わらず素早い動きでそのままUターンしようとした楽斗を見て、いつも通りとりあえず苦笑してから、ホッと安堵した。

 正直、大毅は楽斗が昨日の件で今日は確実に休むと思っていたため、案外立ち直りの早かった友人を見て安心したのだった。


(一応またあの時みたいになるのではと心配していたけど無駄だったな。

 まぁ、一応助かった。オレには同姓に告白されたときの対処法なんて分からないからな)


 もし引き込まれでもしたら連れ戻すことは不可能だっただろう、と大毅は思っていた。また、それと同時に自分の力不足を実感していた。

 

 大毅は出来る男である。それ故に今回のことに関しては必死に隠そうとした楽斗をからかうようなことは絶対にしないつもりだし、今後一切するつもりもなかった。むしろ逆に、楽斗に「この役立たず」と罵られた方が気持ちが楽になるような気もしていた。決して大毅自身がMという訳ではないが。


(にしても、同姓からの告白か。異性からならいつもオレが使っている対処法を教えるだけで良いんだが、同姓には使えなさそうだな......。

 今度、カウンセリングの本でも買っておくかな。今度こういうことがあった時のために......)


 また、あの友人が。そして、今絶賛停学中のあいつが友人と仲直りするためにも。


 そう考え、今日まだ一度も教室の席に座っていない二人にカウンセリングしている自分の将来像を想像して、その光景に思わず吹き出す。

 いきなり吹き出した大毅に、不振がる目ではなく、純粋に心配そうな目が向けられるが、大毅はそれを片手で制した。


 まだ楽斗は教室を出たきり帰ってきていない。だが、今は放課中なので無理矢理連れてくることもしなくていいだろう。それに、楽斗には女には優しいと評判なあの三人が付いている。心配には及ばない。

(なら、もう少しこの幸せな将来像を、皆で楽しく暮らしている将来像を夢見させてもらおうとするかな)

 らしくないことを考えた自分に、また大毅は吹き出した。

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