第115話 新入生歓迎会
新入生歓迎会。
読んで字の如く、新入生のための会だ。
と言っても、卒業生追い出し会のような『豪華なパーティ』ではなく、メインは部活紹介。
うちの学校は部活が必須なので、そこで簡単な紹介をすることになっているのだ。
でも、生徒会がやることって、当日の司会進行くらいだし、卒業生追い出し会より大変、ってことはないんじゃないかな?
確かに事前準備もあるだろうけど、業者さんの手配したりとかOGに連絡したりとかはないわけだし。
相手はみんな校内にいるんだしね。
あ、パンフレット作成はちょっと大変かも?
ってもそのくらいなら、みんなで頑張ればなんとかなるし。
もう、ケイ先輩ってば大げさだなぁ。
……なんて。
甘~く見ていたことをすぐに後悔することになるとは、この時は思いもよらなかった。
◇
「すばるん!
部活紹介シートであと来てないとこってどこ?」
「え、っと……。
すみません、今確認します!!」
「できるだけ早くお願いね!」
「はいっ!」
あれから一週間。
すでに春休みに突入しているものの、生徒会メンバー+天体観測部お手伝い隊のみんなは、毎日学校に来ていた。
もちろん新入生歓迎会の準備のためだ。
その中で、今やっているのが『部活紹介冊子』の作成。
文化祭パンフレットみたいに外に向かって配るものではないので、職員室にある巨大なコピー機(紙を折ってホッチキスを止める、までやってくれるスグレモノ)で作ることになっている。
印刷屋さんで作るわけじゃないし、新入生に配るだけだからそこまでカッチリしてなくても大丈夫だし、職員室でできる分ある程度融通も効くから、ってことでだいぶのんびり構えていたんだけど。
融通が効く、と思うとルーズになる人ってのはある程度いるもので。
いや、ある程度どころか、かなり……。
何が言いたいかというと、締切を守ってくれた部活は半分にも満たなかったいうことだ。
ああ、
お金がかかるってことは、それだけちゃんとお仕事してくれるってことなんだもんね。
それってクオリティだけの話じゃなかったんだなぁ。
なんてことをしみじみと実感したのだった。
うん、これはこれで勉強になったな。
回収係に任命されてはや3日。
それなりに集まっては来たものの、まだまだ足りてない。
別の作業が進まなくなってしまうので、いい加減なんとかしないといけない。
「えーっと、バスケ部と馬術鑑賞部とバトミントン部とバレー部と、バーリトゥード同好会!? なにこれ!?」
発足は2年前……うん、やっぱりトラ先輩の世代だ。
ほんと自由だな~、ふふ。
……って。
「なんで『ば』の付く部活ばっかり出てないの!?」
なゆが作ってくれた一覧を元に照らし合わせをしてたんだけど、なぜか妙な偏り方をしてる。
「あ、ごめん、おねえ。
『ば』の所はちょっとこっちに持ってきてる」
どっかに落としちゃったかな~、って机の下まで探してたら、なゆが気づいて声をかけてくれた。
「なんだ、そっか。
びっくりしたー」
どうやら、パンフレットのレイアウトを決めるのに、なゆが抜いていただけだったらしい。
「はい、一旦返すね」
「ありがと」
戻ってきた束を合わせてもう一度チェック。
ううん、それでもまだまだあるなぁ。
「よし、こんなとこかな」
一通り全部チェックしなおして、未回収リストを作る。
全部で30箇所。
これで大体3割くらいだし、うちの学校、部活多すぎだよね。
「まだなのはこれくらいですね」
「ううん、思ったよりも回収率が悪いわね……」
受け取ったリストを見るケイ先輩が顔をしかめる。
せっかくのキレイなお顔がっ!
「ん? すばるんどうかした?」
「い、いえ、なんでもないです」
あれー、なんで変なこと考えてるのバレたんだろう……?
「あ、すばるん。
こことここと……あとここもかな。
もう部員いないから今年でなくなるわよ」
「へ? そうなんですか?」
「うん。
トラ先輩世代にすごい勢いで部活ができたんだけど、結局新入生が入らずに解散ってとこが結構あるのよ」
「あー、なるほど」
「部活作った人たちも、仲間内で楽しめればよかったみたいで、勧誘してなかったところも結構あってね」
そういえば、去年もらった部活紹介の冊子にはこんなにいっぱい載ってなかったな。
なんとなく部活を作るブームがあって作った、みたいな感じなのかな。
ブームの立役者は間違いなくトラ先輩だろうけど。
「そっか、そうよね。
私は去年やってたから“そういうもの”って思っちゃってたけど、説明しないとこれはわからないわね。
ごめんね」
「いえいえ。
これだけ忙しいんですから、しょうがないですよ」
「ふふ、ありがと。
ちょっと待ってね、もうない所確認しちゃうわね」
「はい」
それから少しして。
修正版の未回収リストが出来上がった。
「それでも10箇所ですか……」
「そうね……まぁ、嘆いてもしょうがないわね。
悪いけど、直接部室まで回収に行ってもらえる?
今日中に出さなかったら掲載しません、って言っちゃっていいから」
「わかりました!」
揃わないとなゆのお仕事も進まないし、気合い入れて行ってこよう!
「すばる、私も手伝うよ」
「ありがとうマキちゃん!
じゃあ、文化部の方お願いしていい?」
「おっけー!」
ちょうど紙を分けていたので、そのままマキちゃんに渡す。
「む、これ、数の割に活動場所がバラけてるな。
ミクー?
ちょっと手が空いてたら手伝って」
「
どこ行けばいい?」
そんなこんなで、総勢3名の回収部隊出発となったのだった。
えいえいおー!
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