第114話 過酷スケジュール
「かんぱーい!」
生徒会室にみんなの元気な声が響く。
卒業生追い出し会の翌日。
終業式が終わってその午後に、生徒会室にて昨日の打ち上げをしていた。
メンバーは、生徒会の3人とお手伝いをしていた天体観測部の4人、そこに
「みんなおつかれ。
OGのみんなも、いい会だった、って言ってたし、大成功と言っていいだろう」
ジュースを片手に伊織音先生が口を開く。
ほんっと大変だったし、そう言われるとすごく嬉しい。
「ま、なんにせよ今日は気兼ねなく飲み食いしてくれ。
私は軽く食べたから戻るけど、あんまり遅くならないようにな」
「はーい」
そう言うと、先生は職員室に戻っていった。
終業式が終わった、っていうのに、先生って大変なんだなぁ。
「やー、ほんと、無事終わってよかったなー」
両手にサンドイッチと唐揚げを持ったスミカ先輩が椅子にぐでーっとしながら息を吐く。
先生がいなくなったからって早いなぁ。
……いや、スミカ先輩の場合は先生がいても変わらないか。
「スミカ、お行儀悪いわよ」
「へいへい」
ぶー、っとしながらも、ちゃんとお皿に戻すのはなんだか面白い。
「でも、先輩方ほんと大変でしたよね。
というか、スケジュールキツすぎですよね、これ……」
「そーなんだよマキちゃん。
修学旅行行って、帰ってレポート発表して、期末テストやって、そのまま卒業式って詰め込みすぎなんだよーーー!」
「ほんと。
もう少し時期ずらしてくれてもいいのに、って思ったわ」
ただでさえ詰め込みスケジュールの上、追い出し会の準備があるから生徒会の負担はすごい。
今年は生徒会メンバーが少ないのもあって、余計だと思う。
その分がんばってお手伝いしたけどね。
「天体観測部のみんなのお手伝いがなければどうなっていたことか」
「お役に立てたようでなによりです」
「ふふふ、ありがとね、すばるん」
その笑顔が見られただけで、私は十分です。
……と心の中でそっと言っておく。
みんながいる前で言うのはちょっと、ね。
や、二人っきりだったら言えるか、と聞かれるとそれはそれで自信はないんだけど。
それにしても。
卒業式が終わったものの、全然実感がない。
もともと、受験やらなんやら3年生は学校に来ていなかったから、しばらくトラ先輩たちを見ていなかったし。
いつの間にか、今ここにいないことが“今の普通”になっていたんだな。
そう考えると、3年生が登校を免除されている期間って、在校生が3年生がいないことに慣れるための期間でもあったのかもしれない。
なんてね。
「さて」
一通り食べ物もなくなり、先生の言う『あんまり遅く』なる前にお片付けをしていると。
ケイ先輩がホワイトボードにある文字を書き始めた。
『新入生歓迎会』
「みんな片付けながらでいいから聞いてくれる?
私達の修学旅行から始まった過酷スケジュールですが。
残念ながらまだ終わりません」
そこで一旦言葉を区切ったケイ先輩。
大きく天を仰ぎ、ゆっくりと息を吐くとともにこう付け足したのだった。
「というか。
多分、最後のこれが一番大変よ……」
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