第101話 結託
朝起きると、ケイ先輩からいっぱいの写真が送られてきていた。
空に浮かんでいるような星空の写真。
雲の下から上がってくる日の出の写真。
大きな大きなすばる望遠鏡の写真。
中には、スミカ先輩と一緒の自撮り写真もあった。
その写真の最後には
『お土産、楽しみにしててね』
のヒトコトも。
お土産、なんだろう。
わざわざこう送ってきた、ってことはじっくり選んでくれてたり……なんてね。
みんなで食べられるお菓子とかかな?
そういえばハワイのお土産って何があるんだろう。
たまにお父さんがマカダミアナッツチョコをもらってくるけど、それくらいしか知らない。
なんにしても、『楽しみにしててね』と言ってくれるくらいだし、期待しててもいいよね。
というか、今日の夜には帰ってくるんだよね。
空港から最寄り駅までバスで、そこから自由解散、だっけか。
駅まで行ったら会えるかなぁ、とかちょっと思ったけど、他の先輩方もいるし、迷惑だよね。
時間も遅いしなぁ……電話で声くらい聞きたいなぁ……。
「おねえ、どうしたの?」
「ふぇ!?
な、なにが!?」
うーんうーんと考え事していたら、急になゆに顔を覗き込まれてびっくり。
「なんというか……さっきから変だよ?
ニヤニヤしてたかと思ったら、嬉しそうだったり寂しそうだったり」
「え、そんなに?」
「うん。
……あ! そっか、今日だっけ」
「う……そうだけど……そういうことは気づかなくていいんだよ?」
「おねぇが百面相してるのが悪い」
「うぐ……」
勘のいい妹め……。
「で、どうするの?」
「ん?」
「お出迎え行くの?」
「行きたい、けど、すっごく疲れてるだろうし、迷惑かな、って」
「先輩がそう言ったの?」
「言ってないけど……」
迷惑だ、なんて言われたら立ち直れないよ。
いや、ケイ先輩が言うわけないのはわかるんだけどさー。
「おねえって、たまにめんどくさいよね」
「ひどっ!」
「はぁ……」
うう、ため息とかつかないで―!
「お母さん、ちょっと夜おねえと出かけて来るね」
とか思ってたら、いきなりとんでもないことを言い出した。
「夜? なにかあるの?」
「ちょ、ちょっとなゆ!?」
「生徒会の先輩が修学旅行から帰ってくるの」
私の講義声を華麗にスルーして、なゆが答える。
「ん? 何か急ぎの用事?」
「ううん、ただお出迎えに行くだけ」
私が一人あわあわしている間に、なゆがどんどんと話を進めていく。
「な、なゆ。
ほら、お母さん困らせちゃダメだよー」
「すばる……?
ああ、なるほど、そういうこと」
「うん、そういうこと」
……え?
「待って、え、ちょっと、待って?」
その『なるほど』は何!?
ていうか、なんでお母さんこっち見て大きく頷いたの?
え!?
「駅よね、車出そうか?」
「ん、お願い」
「ちょ、ちょっと待ってってばー!!!」
結局。
あれよあれよと言う間に、お出迎えに行くことが決まってしまったのだった。
というか。
私の知らない所で、お母さんとなゆが結託していたのはショックだったよ……。
◇
ピコンッ
『ただいま、さすがに疲れたわ』
夕方過ぎ。
ケイ先輩から、シンプルなメッセージが届いた。
飛行機は時間通りに着いたみたいだ。
『おかえりなさい!
えと、これからバスでしたっけ?』
『ええ、もうひと踏ん張りね』
『気をつけてくださいね』
『ありがとう。
乗ってるだけだから大丈夫よ』
いつもより言葉少ない感じ、これは相当疲れてるみたいだなー。
聞いてるだけでもハードスケジュールだったし。
「ねぇ、やっぱりやめない?」
「おねえ、まだ言ってる」
「だってー、先輩疲れてるよー」
スマホの会話をなゆに見せる。
「そりゃ疲れてるでしょ」
「うん、だからさー」
「おねえ?」
「は、はいっ!」
あ、やばい。
これは怒られる流れ。
いや、うん、我ながら往生際が悪いとは思うんだけどさー。
でもさー。
「おねえは、ケイ先輩に会いたくないの?」
真面目な目で正面から見られると、逃げ場がない。
「会いたい、です」
「でしょ」
「うん……。
でも、そんなワガママしていいのかな、って」
「もし怒られたら一緒に謝るから」
「……怒らないと、思うけど」
「うん」
よし、いい加減覚悟を決めよう。
や、覚悟ってほどのものではないんだけど。
会いたいのは間違いないんだし、迷惑かけそうだったらひと目見るだけで帰ればいいんだし。
うん。
……そう思ったらなんか楽になってきた。
逆に緊張もしてきたけど!
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