第16話 秘密のお茶会

コンコン

ガラガラッ


 私は、ノックもそこそこに勢い良くドアを開ける。

「こんにち……わ……」

 いつもなら元気よくご挨拶! なところだけど。


 まだちょっと夏と言うには早い季節。

 柔らかい日差しが差し込む教室の中。

 心地よい風に揺れるカーテン背に。


 ――重なり合う金と銀を見た。


「わっ! す、すばるちゃん!

 早かったね!!」

「え……え!?!?!?

 すばるちゃん!? なして!? なん、なんが起こりようと!?!?」



カタッ

「すばるちゃんは、紅茶でよかったわよね?」

「あ! はい!

 えと、すいません、私がやらないといけなかったのに!!」

「いいのよ。

 その……ちょっと、頭を冷やしたかったし」

「す! すいませんでした!!!」


ガターンッ!!


 勢い良く立ち上がったせいで、椅子を倒してしまった。

「すばるちゃん、落ち着けって。

 ……まぁなんだ……俺らが悪かったんだし」

「うん、だから……ね」

「す、すいません……」


 しばし沈黙。

 うう、どうしよう……。

「あの……」

「ん? どした?」

「聞いても、いいですか?」

「うん、なに?」

「お二人って、その……いわゆる恋人さん、なんです、か?」

「ぶっ」

「けほっけほっ」

 あ、あれ?

「ふ、ふ、あはははははは!

 すばるちゃん!

 思った以上にぶっ込んでくるね!」

「え? え??」

 ものすごく笑われてしまった……。

 いや、だって。

 ねぇ?

 今しか聞けないと思わない?


「ステラ、いいか?」

「……いいわよ。

 今さらだし」

 ステラ先輩、顔真っ赤にしてて可愛い。

「ぶっちゃけ、すばるちゃんの言うとおり。

 改めて言うとこっ恥ずかしいけど、俺とステラは恋人同士ってこと、になるのかな、うん」

 あ、トラ先輩も赤くなってる!

 ふふふ。

「ちょっとちょっとー、

 なんだよそのニヤケ顔~」

「あ、う、すいません。

 なんかいいな~~、って思ってしまって」

「『いいな~』、か。

 すばるちゃん、やっぱり面白いね。

 おケイが気にいるわけだ」

「え?」

「そうねぇ。

 あんまりそういう反応する子って、今までいなかったものね。

 それこそ、おケイとスミカくらいね」

 ん? どういうことだろう。

 いいな~、ってみんな思わないものなのかなぁ。

「あ!

 『私も恋人欲しいぞちくしょー!』

 みたいな感じですか?」

 それならわからなくもない。

「あはははは! 残念、はずれ」

「あのね、すばるちゃん。

 私達自身は全然気にしてないんだけどね、女の子同士、ってことで変な事を言う人もいるのよ」

「あ! なるほど!」

 言われてみればそうだ。

「言わせたいやつには言わせておけばいいんだけどさ。

 ま、気分はよくないわな」

「絶対秘密! ってわけではないんだけど、基本的には言わないようにしてるのよ」

「ほえ~、なんだか大変ですね~」

「俺にしたらさ、ただ、たまたま好きになったやつがステラだった、ってだけなんだけどな」

「わ、私だって、たまたまトラだったって、だけ、で……」

 ……なんか急に暑くなってきたぞー。

「でも、うん、やっぱりいいですね」

「ありがとな」

「ありがと」


「『好き』かぁ……。

 どんな感じなんですか?」

「ここぞとばかりに、ガンガン来るね」

「う、すいません」

「いいよいいよ、はは」

「私、『恋』ってわかんなくて。

 好き、って言っても、なゆが好き、ってのとは絶対違うじゃないですかー」

「『Love』と『Like』の違い、といったところかしらね」

「だと、思います。

 まだおこちゃまなんですかねぇ……」

「ふふ、自然とわかるわよ。

 私だって、どう違うかって言われてもわからないもの」

「違う、ってことだけはわかるけどなー」

「そうね」

 私から見ても、違うんだろうな、ってのはよくわかります。

「私にもわかる日がくるのかなぁ」


コンコンッ

ガラガラッ


「こんにちは。

 あ、すばるんもう来てたのね。

 待たせてしまったかしら?」

「あ、ケイ先輩!!

 ちょっとだけ早く終わったので!

 でも、さっき来たばっかりですよ~」

 そんなことをお話していたら、ケイ先輩がやって来た。

 名残惜しいけど、秘密のお茶会もおしまいかな。


「ねぇ、ステラ」

「うん、そうね、トラ」

「すばるちゃん、きっとすぐにわかるようになるさ」

「ん? トラ先輩何か言いましたー??」

「いやいや、何も言ってないよー」

「あら、聞き間違いか……。

 よし! ケイ先輩、なにしたらいいですかー?!」

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