第3章 月は太陽に憧れる 星はまだ瞬かない
第13話 重なり合う偶然
ある日の放課後。
コンコン
「すばるんいるー?」
部室で、マキちゃんから星座をカメラで撮るにはどうしたらいいのか、なんてことを色々教えてもらっていると、入り口の方からケイ先輩の声がした。
いつもは生徒会のお仕事をしてからちょっと顔を出すだけ、ってことが多いので、こんな早い時間に来るのは珍しい。
「いますよー?」
とはいえ、中に入って来ない所を見ると、部活にしにきた、ってわけではないのかな?
「マキちゃん、ちょっとごめんね」
「いいよいいよ」
マキちゃんとの話を中座して立ち上がる。
「おあっ、っと」
……玄関に向かう途中でごろ寝中のかのんちゃんを踏みかけた……。
かのちゃん、ここはシエスタ部ではないですよ……?
「どうしましたー?」
玄関まで来ると、ケイ先輩が靴を履いたまま待っていた。
「ちょっとお願いがあって。
悪いんだけど、明日の放課後ちょっと生徒会のお仕事手伝ってもらえる?」
「はい、いいですよ!
何をお手伝いしたらいいんですか?」
「えっと、春のお仕事が落ち着いた所で、ちょっと書類の整理をしていたんだけど、余りにグチャグチャで……。また忙しくなる前にパパっと片付けてしまいたいのよ。
ちょっと力仕事になっちゃうけど、お願いできないかしら?」
「りょうかいでっす!」
ビシっと敬礼!
「ぷっ……。
ふふ、ありがと」
びしっとキメたつもりだったんだけど、なぜかとても優しく微笑まれてしまった。
なんか、一瞬吹き出してなかった??
あれぇ……??
翌日の放課後。
昨日ケイ先輩にお願いされていた通り、生徒会のお仕事を手伝うために生徒会室へ向かう。
書類整理、ってことだったけど、どんだけあるんだろう。
ちゃんと役に立てるかな……。
って、やってみなくちゃわかんないよね。
折角ケイ先輩に頼りにされているんだから(されてる……よね!?)がんばらないとね!
そんなことを考えているうちに、あっという間に生徒会室到着。
教室棟から第二校舎まではそこそこあるんだけど、気合い入れていたらすぐに着いちゃった。
よし、気合い入れるぞー!
いつもよしよしされるだけじゃない頑張るすばるんを見せないと!
コンコン
ガラガラッ
気合を入れた私は、ノックもそこそこに勢い良くドアを開けて
「こんにち……わ……」
いつもなら元気よくご挨拶! なところだけど。
思いもよらない光景に、私はその場で言葉を失い、固まってしまった。
それは――
きっと、いろんな偶然が重なっただけなんだろう。
いつもは6限まである授業が、今日に限って5限で終わりだった、とか。
その5限の授業が担任の伊織音先生の授業だった、とか。
伊織音先生がその後用事があるから、って、授業が終わる5分前にHRに突入していた、とか。
チャイムと同時に終わったために、どこのクラスよりも早く教室を出られた、とか。
きっとそんな偶然が重なりまくった、その結果。
まだちょっと夏と言うには早い季節。
柔らかい日差しが差し込む教室の中。
心地よい風に揺れるカーテン背に。
――重なり合う金と銀を見た。
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