第2章 部活は必須です

第6話 部活が決まらない

「ねぇねぇ、部活決めたー??」

「私はテニス部にしたよ! 中学の時からやってるしねー」

「テニスか〜。

 私もそうしようかな〜」

「楽しいよ!

 って、あんた、運動部なんて大丈夫なの?」

「んー……無理だね!」

「私もそう思うわ……」


 入学式から一週間。

 あちこちからこんな会話が聞こえてくる。

 うちの学校、全体的に校風は緩やかなんだけど、部活に関してだけは『必須』なんだよね。

 帰宅部禁止。


 で、一番人気はやっぱり『天文部』。

 どうも、大学の天文部ともつながっているらしくて、なんかの大会? みたいなので発表したりもしてるらしい。

 すごいな~と思うけど、私はもうちょっとゆる~い感じのがいい、ってことで保留中。

 うーん、どうしよう。


ガラガラッ


「戻りました〜」

「おねえ、おかえり。

 ってすごい量だね」

 机の上にドサドサお菓子をおいていたら、なゆに突っ込まれた。

「悪いわねぇ、生徒会ではないすばるちゃんにおつかい頼んじゃって……って随分いっぱい買ってきたのね」

 ステラ先輩にまで言われてしまった……。

「渡したお金、そんなに多かったかしら??」

「ああ、それはですね。

 今から、なゆの歓迎会なんです、って購買の『きれいなお姉さま』に話したら、いっぱいおまけしてくれたんですよ~」

「ああ、なるほど……ふふふ」

 購買部のおば……お姉さまは、どうやらうちのOGらしくて、この時期に生徒会新メンバーが入るってことも知っていた。

 それで、ちょっと話したらいっぱいおまけをくれた。

 『きれいな』って言ったときの満面の笑みが忘れられないけど、それだけであんなにおまけをくれたわけではないはずだ……きっと……。


「で、すばるんは部活決めたの?」

「あー、今悩んでるんですよね~。

 ケイ先輩は何部なんですか?」

 お茶の準備を手伝っていると、そんな話になった。

「私? 私は生徒会やってるから、免除なのよ」

「えー! そうなんですか!?

 ずるーい」

「『ずるーい』って。

 結構大変なのよ?」

「そうですけどー……」

 ちなみに、わかってると思うけど、ケイ先輩とは冷水先輩のこと。

 あの入学式の日に――


「すばるちゃんさ~。

 ボクのこと『早乙女先輩』って言うけど、スミカでいいからね?

 『早乙女』ってなんかかたっくるしくってさー、苦手なんだよねー」

「スミカは、乙女って感じじゃないものね」

「ひっどー! って、まぁ、ケイの言うとおりなんだけどねー」

「じゃあ、私もケイでいいわよ。

 『冷水』って、ちょっと冷たい・・・感じでしょ?」


ということで、下の名前で呼ぶことになったのだ。


 もともとうちが双子だから名字で呼ばれることがないせいで、個人的には下の名前で呼ぶほうが落ち着くのでありがたかった。

 その代わり、というかなんというか。

 ケイ先輩も『すばるん』って呼んでくれるようになった。

 ちょっとお近づきになった感じがする!!


「うーん、私部活どうしようかなーー。

 なゆは免除だって言うし、いいなー」

「じゃあ、おねえも生徒会入れば?」

「う……私にはできそうもないからいいや」

 なゆも気軽に言ってくれる。

 そもそも、私学年トップじゃないもーん。

「じゃーさー、すばるちゃん。

 作っちゃえばいいんじゃねー?」

「『作る』って……。

 トラ先輩そんなかんたんに言わないでくださいよ~」

「や、かんたんだって、ほんとほんと」

 作る? 部活を?

 かんたん、って言われても、トラ先輩基準での『かんたん』がどのレベルかわかんない……。

「あら、トラの言うことは本当よ。

 うちの学校、部活必須の代わりに、新しく作る時のハードルがとても低いのよ」

なんて思ってたら、ステラ先輩からも助け舟? が。

「それに、承認するのは生徒会だから。

 すばるちゃんが作るなら承認するわよ」

 おお……なんかすごいバックアップをもらってしまった……。


 作る、作るかぁ……。

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