第5話 生徒会全員集合
「え? なゆを生徒会に??」
「ええ、そうよ」
「え? いや、だって、今日入学式ですよね!?
こんな初日に!?」
「あー、それなー。
なんかうちの伝統らしいぜー」
「伝統??」
「そそ。
新入生代表に選ばれた子を生徒会に拉致……じゃなかった、勧誘するのって」
今、拉致って言った……。
自覚あったのね、トラ先輩……。
「なるほど。
そういうことなら、よろしくお願いします」
「なゆ!? 決断早くない!?」
「特にやりたい部活もないし、先輩たち面白そうだしいいんじゃない?」
うちの優秀で可愛いなゆなら、アリか……。
って、いや!
確かに可愛いけど、顔は私と同じだ!
「あ、あの……。
なゆは、確かにすごーーーく優秀ですし、可愛いですけど……残念ながら私と同じ顔なので、生徒会に入れるほどの美人さんではないですよ??」
「おねえ……。
それは、褒めてるのかけなしてるのか自己批判なのかわかりづらい」
なゆの的確なツッコミが入るがとりあえずはスルー。
さすがに、私のお顔ではこの生徒会基準を満たしているとは思えないしね!
「うんと、すばるちゃん、だったわよね?
何か勘違いしているようだけれど、生徒会に入るのに顔の基準はないわよ?」
「え? ほんとですか!?」
「うはははは、すばるちゃんおっもしれーー!!
生徒会に顔の基準て、うちは何屋だよ?
あははははははははは」
そう、そうだよね。
落ち着いて考えたら当たり前なんだけどさ。
出てくる人全員が美人さんだし、あまりにも唐突なスカウトだったし、どうやら混乱しきっていたようだ。
……は、いいけど、トラ先輩ちょっと笑いすぎ……。
もう10分くらいからかわれてるよぅ。
「こら、そんなに笑ってはいけないわ、トラ?」
そうやってトラ先輩を諌めているステラ先輩も、大分顔が笑っている。
「ふふふ。
でも、ありがとうね。
そんな風に『美人さん』だなんて言われたの初めてで嬉しいわ」
「またまたー。
初めてだなんて冗談ばっかり。
私、こんなに素敵で美人な人って見たことなかったですよ~?」
「……もう、そげん褒めよってもなんも出んとよ?」
「ステラー、まーた出てるぞー」
「あぅ……」
ステラ先輩、顔を真っ赤にしての方言はずるいです……。
美人さんが照れると可愛い、とか、どんだけチートですか……。
釣られてこっちまで顔が赤くなってしまいそう。
「で、でも、本当に言われたことないのよ?」
「えー? いっつも、可愛いって言ってるじゃんー」
「トラは別枠です。むしろ、言わなかったらツネってるわ」
「おーおー、それは怖い」
「そ・れ・と。
そういう話は、ここじゃない所でしてくれないかしら?
後輩だって見ているんだから」
「ん? それはあれか、あとで二人でゆっくり、ってこ……痛い!」
「そういうことを言わないで、って今言っているのがわからないのかしら? ツネるわよ?」
「もう! ツネってるって!!!」
おーい、お二人さ~ん?
すっごい仲良しなのはわかりましたけど……。
完全に二人の世界に入ってませんか~? もしも~し?
「え、えっと、あのー……」
「あ、ああ、ごめんなさいね。
もう、トラが余計な茶々を入れるから」
「んだよー、俺のせいかー?」
ああ、帰ってきたと思ったのに、また!
と、その時。
ガラガラッ
「お疲れ様です、遅くなりました」
「お疲れ様でーす」
残りの生徒会メンバーがやってきた。
私には、そのお二人が救世主に見えたものだ……。
「それじゃ、残りのメンバーを紹介するわね。
おケイ、スミカ、自己紹介してくださる?」
「書記兼会計の冷水慧よ。
迷子のすばるちゃんとまた会えて嬉しいわ、ふふふ」
「ボクは
よろしくね、仔猫ちゃんたち」
ケイ先輩は、迷子を案内してもらったので私は覚えてたけど、向こうも覚えててくれたとは思わなかったのでなんだか嬉しい!
ああ、でも『入学式で迷子の新入生』ってインパクトは強いか……。
そういう覚えられ方だったら、ちょっとヤダな~。
なんて言っても遅いケド。
そして、なんともヅカな空気を醸し出しているのが早乙女先輩。
自他共に認める学園の王子様なんだとか。
自己紹介で『仔猫ちゃん』とか言いながらウィンクするくらいだし、好きな子は好きだろうなー。
ん? あれ?
「あの、ステラ先輩が生徒会長で、トラ先輩が副会長。
書記と会計を冷水先輩が兼務してるってことは……早乙女先輩の役職って残ってなくないです??」
私の知ってる生徒会の役職って、この4つくらいなんだけど。
他にもなんかあったっけ?
「ああ、スミカは『広報』よ」
「広報……ですか?」
ステラ先輩の代わりに、冷水先輩が答えてくれた。
……広報って、生徒会の役職に必要なの??
「ほら、こいつ見たまんま目立つじゃん?
うちの学校って結構対外的な活動も多いからさー。
そういう時に表に立ってもらうのに便利だったんよ」
「な、なるほど」
でも、トラ先輩……十分先輩も目立ちます。
と、口から出そうになったのを我慢した私、偉いと思わない?
「ねえ、おねえ?
早乙女先輩、どこかで見た気がするんだけど……」
ふと、横からなゆが袖を引っ張ってそんなことを言ってきた。
んー、といってもなー、こんだけ目立つ人そうそう忘れないと思うんだけど。
けど……確かに、入学前に見たことがある気がする。
どこか街なかですれ違ったとかだろうか……。
「おいおい、仔猫ちゃんたち。
そんなに熱い目で見つめてどうしたんだい?
抱きしめてほしいのかな?」
どうにも思い出せなくて、ついついなゆと二人でじーっと見つめてしまっていた。
「あ、いえ、そういうのはいらないです」
「間に合ってます」
改めて。
好きな子は好きだろうな~、としみじみ思いつつ。
でも、私には刺さらなかった。
「あ、あれ?
おかしいな。ボクってこんな扱いのキャラじゃないはずなんだけど」
「初対面でスミカビームが効かない子も久しぶりね」
「ケイ~、なんだよそのスミカビームって~」
「初対面の女の子相手にばらまいてるじゃない?」
「えー? 別に普通じゃん??」
すごいなー。
あれ、素なんだ。
「あ!! 入学案内のパンフに写真載ってた人だ!」
「え!?
…………ほんとだ!!!」
私のうっすらした記憶を一生懸命手繰り寄せてみると、確かにいた!
なゆ、よく思い出したなー。
「ああ、あの写真かー。
懐かしいな。
あれがきっかけで生徒会入ったんだよねー」
「そうね。
ステラ先輩に、写真映えする知り合いいない? って言われて、連れてきたのよね」
「ふふふ、まさか『噂の王子様』を連れてくるだなんて、思いもよらなかったのだけれども」
確かに『広報』って感じのお仕事だなー。
「そしたら、私は何をやればいいのでしょう?」
思い出してすっきりしたのか、なゆが聞く。
いつもながら、切り替えが早い。
「一応、おケイのお手伝いをしてもらおうと思うのだけれども」
「是非お願いしたいわね。
書記と会計、なんて1人じゃちょっとキツかったし、ほんと助かるわ」
「わかりました、よろしくお願いします」
そんなこんなで、とっても長い入学初日が終わったのでした。
新しい出会いは期待していたけど、まさかこんなに濃いことになるとは思わなかったな。
私の高校生活、どうなるのかな?
楽しみと不安を両手いっぱいに抱えながら、結局その日は疲れているにも関わらずなかなか寝付けなかった。
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