第4話 金と銀
「おーっす! 星空連れてきたぞー!!」
結局、私はどうすることもできないまま、生徒会室まで引きづられてきてしまった。
トラ先輩(『生徒会長』って呼んだら、『トラ』って呼んで、と言われたので)、見た目によらず……いや、見た目通り? 力が強かった。
うう、手首痛いよ……。
「あれ? おねえ?」
「ん??」
手首をさすりさすりしていたら、なんだかとってもよく知ってる声が聞こえた気がした。
いやいやそんなまさか、と、そっと心でツッコミながら顔を上げると……そこにはとても見慣れた顔があったのだった。
「え? なゆ??
なゆも呼ばれたの??」
◇
カタッ
「紅茶でよかったかしら?」
私となゆの前に、綺麗なお花の形のティーカップが置かれる。
中には澄んだ琥珀色の紅茶。
しかも、今まで出会ったことのないようなすっごくいい香りがする
え? 紅茶ってこんな感じだったっけ??
「あ、ありがとうございます」
紅茶を入れてくれた先輩――生徒会副会長のアレサンドラ・ステラ先輩に御礼を言って、一口飲んでみる。
おいしい……。
すごい、私でもわかるレベルで味が違う!!
というか……普段私が紅茶と呼んで飲んでいるものと同じ『紅茶』だとはとても思えない……。
「あの、おいしいです」
「よかったわ。
今回はトラが迷惑をかけてしまって、本当にごめんなさいね」
「あ、いえ、大丈夫です」
「そう? 先輩とか気にしないで、ガツンと言っちゃっていいのだからね?」
「いやいや、さすがにそれは……」
「それもそうよね。ふふふ」
笑うとすごく可愛い。
名前でわかると思うけど、ステラ先輩は両親とも外国の方、とのこと。
フランスとアメリカ、って言ってたかな。
ただ、生まれも育ちも日本なので、英語とフランス語はほんのちょっとしかしゃべれないらしい。
髪は銀色、って言うのがいいのかな?
アッシュブロンドっていうのが正しいのかな?
詳しい色の名前はわかんないけど、さらーっとキレイな銀色、というのが私の最初の感想。
肩より少し長いくらいで、白く透き通ったお肌、長いまつげに綺麗な青い瞳と……もうね、整いすぎていて。
身長はトラ先輩よりちょっと低いくらいで、私よりちょっと高いくらいだから、160cmちょっとってとこかな?
それにしても、
金と銀の対比がとってもキレイだし……やっぱり、美人さんじゃないと生徒会に入れない疑惑が濃くなってきた!
改めて。
何が起こったのかを整理すると。
な~んて、もったいぶるほどの話でもないんだけど。
すごく単純な話。
生徒会が本当に呼んだのは――
新入生代表で入学式に挨拶をした(入試1位)の優秀な星空『なゆた』であって、体育館の場所がわからずに迷子になっていた、優秀じゃない星空『すばる』ではなかった
というだけのこと。
確かに、新入生代表が双子で、しかも同じ高校にいるなんて思いもよらないだろうな~。
「ほんと、トラはいい加減なんだから。
星空は星空でも、月組じゃなくて星組って言っておいたでしょう?」
「んなこと言ったってよ―。
まさか星空が二人もいるなんて思わねーってー」
「……私、二人いるから間違えないように、って、言ったわよ?」
「え……?
あ!
……あ、あー、そ、そうだったかなーーー???」
トラ先輩、今思い出したっぽいな。
笑っちゃうくらいに目が泳いでる。
「こっちを……見なさい?」
あ、捕まった。
顔を両手でがしーっと掴まれてる人、初めて見た。
あれってマンガの中だけじゃないんだなー。
「いや、でもさ、ほら……」
「あんたねぇ……言い訳ばっかしよらんと!
こげん迷惑かけようとに、ちゃんと謝らんね!!」
「う、ごめん……」
「うちに言うてどうするっちゃ。
星空さん達に謝らんね!」
「あー、その……悪かったな。
無理くり連れてきた挙句人違いでしたー、だもんな。
わりぃな!」
「いえ、確かにびっくりはしましたけど、美味しい紅茶も頂きましたし、全然大丈夫ですよ!」
「そか、ありがとな!」
そう言ってニカッと笑うトラ先輩は、やっぱり小学生男子のようだな、なんて思ってつい吹き出しそうになってしまった。
あぶないあぶない。
それにしても
「ステラ先輩って、ご実家は九州の方なんですか?」
「そうだけれど……私、そんなこと言っていたかしら?」
「なんでもなにも、さっきトラ先輩に博多弁? で怒ってたじゃないですか」
「…………うそ」
「うそじゃねーよ、もろ出てたぞ~」
「ううううう」
赤面する先輩可愛い……。
「こいつな、興奮したりテンパったりすると博多弁が出るんだよ。
この見た目なのにな、おもしれーだろ?」
「しゃーしか! バカトラ!」
「な?」
「あはは」
「それで……私が呼ばれたって理由はなんです?」
このままじゃ話が進まないと思ったのか、おもむろになゆが話を切り出した。
「あら、そうだったわ、ごめんなさい」
まだ若干顔が赤いステラ先輩が答えてくれた。
「なゆたちゃんを生徒会にスカウトしたいのだけれど、どうかしら?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます