愛を知った天空 その③

 空牙を継承の儀の結界陣に置いた。今回は日時や星を合わせることが出来ないため、凰鴆の力も借りることになった。

《鉄か何かないか。出来ればきんがいい》

「陰陽五行のことか。たしかに、天空は《水》の気だからな」


「これ、使えない?」

 シャワー室から出てきたアマシアが、壊れたペンダントを首から外した。月桂の制服だが、髪は濡れていた。

「アマシア、お疲れ様」

「聖明依ちゃん、鎧なしでもう平気なの?」

「ええ、このとおり。叩いてもへっちゃらよ」

 と、左胸をぽんぽんと叩いてみせた。

「良かったわ。心配してたのよ」

 あらためて制服の姿の聖明依をみると、にっこりとした。


 とっさに聖明依が身構えた。

「……あれ」

「どうしたの?」

「いつものなら『聖明依ちゃーん』と抱きついてくるのに」

「あら、言ってくれれば」

「結構です!」

「いけずねぇ、しちゃった仲なのに」

「あ、あれは⁉」

 真実が、えっえっ、とあたふたし始めた。

 アマシアははすぐに聖明依の肩を叩いて、微笑んだ。

「それは冗談として、今から命を賭けた儀式をするんですもの。そんな余裕はないわ」


 聖明依がペンダントを受け取った。既に機能停止し、発光していない。それでも、これにはかなりの量のレアメタルを使っていたはずだ。

「うん、これならきんとして依り代になれるよ」

「そう、大切なものだけど使ってね」

「いくら儀式に使うって行っても、消えてしまうわけじゃないよ?」

「あら、そうなの? てっきり生贄になるのかと」

「いやいや。これ、悪魔召喚とかじゃないから。ただ、変質はしてしまうかもね。これに宿った気を空牙に送り込むことになるから。本来は空牙だけでいいんだけどね、儀式には最悪の日取りだから」


 アマシアが背伸びをする。そして深呼吸して肩の力を抜いた。

「さあ、やりましょう」

「お姉さん、また改めてプレゼントするから」

「ありがとう。でも、サプライズのが嬉しかったかな?」

「ごめん」

「謝ることじゃないでしょ」

「うん。服を脱いで裸になって、陣の中央に寝て」

 アマシアは頷いて、言われたとおりにした。


 制服を淡々と脱ぎ始めた。胸元のホックを外していき、胸の大きさを強調していたウエスト部分も外した。そこに隠れていたファスナーを下ろすと、濃ゆいピンク色のブラが現れた。丁寧に畳んで聖明依に渡すと、次にタイトスカートのホックを外し、ゆっくりと下ろした。

 ブラのフロントホックを指でパチンと弾くと、たわわな乳房がそれを外側へ弾いた。薄い色の乳首が固くなっているのが見てわかった。やっぱり緊張は隠しきれない。ショーツを下ろすとふっくらした陰毛から、わずかに香りが立ち込めた。


「アマシア」

「せ、聖明依ちゃん?」

 アマシアを抱きしめた。若干アマシアのほうが背が高いため、胸が顎に掛かった。とても柔らかい。

 そして、震えているのがよくわかった。加減が分からないけれど、少しだけ強く腕を回してみた。

「私にはよくわからないけれど、こうされると安心したから」

「ありがとう。でも、もう少し力を緩めてね」

「あ、ごめん」

「それに、これ以上は決意が揺らいじゃうから……ね?」

 アマシアはゆっくりと聖明依を離して、頭を撫でた。

「アマシア、信じてるから」

「うん、ありがとう」


 アマシアが陣で横になった。術で温室や床温度を調整したから、冷たくはないはずだ。

 聖明依は真実を見て、確認をとった。

 返ってきたアイコンタクトを受けて、聖明依は手を上げた。

「これより、鬼煌帝天空継承の儀を執り行う!」

 号令とともに、結界陣が光り輝き風が渦巻いていく。

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