第十五話 殺生石・急 その①

 前もって聖明依はアマシアにメッセージを打っていた。


【アマシアお姉さん、頼みたいことがある。殺生石が見つかったと連絡して来て。天空を欺き、絶対結界を移すために。それから、お姉さんをスパイだと疑っていたけれど、容疑は晴れました。ごめんなさい】

『聖明依ちゃん、殺生石が見つかったわ。これからもよろしくね♪』


 そして聖明依は、アマシアたちがいる場所をデバイスで特定して飛び出したのだ。


《聖明依、そろそろ纏いの限界だが》

「さっき殴った時、時間が早まったのね。胴部分だけ残しましょう」

 鎧を解除し、散り桜となって拡散する。紅桜の胴部分は、鎧と呼ぶには女性らしい曲線であり、レオタードのような形だ。

 だから、ちょっとだけ聖明依の顔が赤くなるのも無理はない。特にお尻のあたりがほとんど丸見えで、隠れていないのだ。

 腰のあたりも前垂れ装着が前提で、お尻の肉たぶ部分は脚パーツが担っていた。

 地上に降りると、すぐに物陰に隠れた。

「ああーん。やっぱり、素の状態でこんな格好するなんて恥ずかしすぎるっ」

《何をはしゃいでいる? さっきまで天空と対峙していた聖明依は、どこに行ったのやら》

「う、うるさいわねっ。ほっといて」

《ま、気を張り続けたのだ。一瞬でも緊張の糸を緩めておけ》


 今度は制服機能の通信機が鳴った。すぐに応答する。

『聖明依さん、真実です。見つけました! 間違いありません』

「ありがとう。これからあなたの本体を斬るわ」

『はい。覚悟はとっくに出来てます』


 気を引き締め直した聖明依は、メッセージを打つと同時に仕込んでいたゲートの入り口を、近くの建物に設置して飛び込んだのだ。


 鎧ごと真っ二つに割れ、吊り下がった天空の真実はなかなか塵にならなかった。

 もう一太刀入れようとした時、真実が喋りだした。

「……よくも私を斬ったな。おまえが悪いんだ、聖明依。おまえが引き起こすんだ」

「辞世の句にしては出来が悪いな」

「この街ごと、凰都ごと、破壊し尽くしてやる。桃源神宮のようにな。ふははは!」

 聖明依はそれには答えず、床に剣先を鋭く擦りつけ火花を散らした。

 その勢いで、今度は横一文字に真っ二つにした。

 ただ斬ったのではない。紅桜の業火付きだ。

 

 天空の真実はあっという間に灰塵と帰した。

 そして、落ちてきた小さな両翼の首飾りをキャッチした。

「これが天空の宝具なのね」

《式神凰「空牙」でもある。天空は武器としての宝具がないのだ》

「そこを漬け込まれたというわけか」

《この時代に継承者がいれば、こんな事態にはならなかっただろうに。かなり䰠の穢れで汚染されている》

「浄化しなくては。里に持ち帰ろう」

《待て、聖明依。物凄い霊気を感じるぞ》

 通信が入ってきた。応答するとアマシアだった。


『聖明依ちゃん、まだ天空を斬ってないの? こっちは大変なの』

「どうしたの? もうとっくに仇は討ったよ」

『殺生石が何かを取り込んでどんどん大きくなっていくの!』

「凰鴆が感じた霊気ってそれか。お姉さん一人じゃ危険よ、早くその場を離れて」

『それがね、聖明依ちゃん。真実ちゃん、まだここに居るんだけど』

「え⁉」

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