第五話 聖明依の身体

 ベージュ色に統一された、カーテンやベッドが3つ並んでいる。全身骨格の標本と臓器の標本人形も置いてあった。

 その一つのベッドの近くで、カーテンを締めた。これで外からは誰も見えない。


 アマシアがスキャンメジャーのスイッチを入れると、聖明依に脱ぐように促した。

 ゆっくりと服を脱いで行く。上半身の物を脱ぐたびに、長い髪がふわっとなびいた。脱いだ服は、丁寧にベッドの上に畳んだ。

 ミニスカートも脱ぐと、今度は紫のブラのホックを外した。

「あら、大きいブラね。どこで買ったの」

「通販です」

「そのサイズになると、探すの大変でしょ」

「苦労しました」

 ゆっくりとブラのカップを外すと、大ぶりな乳房たちが重力に逆らうように弾んだ。その尖端は赤い乳首がツンと上を向いている。

 浅い溝の入った乳頭を見たアマシアが、頬を赤らめた。


「まあ、かわいい」

「少し気にしているので、あまり見ないでください」

「それで普通なのよね」

「はい。生まれつきで」

「興奮するとどうなるの?」

「し、知りません!」

「ふふふ」

 アマシアは、新しい玩具を見つけたように目を輝かせていた。

 気にせず、聖明依がパンツを脱ごうとすると止められた。


「あ。採寸だけだから、ブラまででいいわよ」

「はい」

 パンツとニーハイの姿になった聖明依は、スキャンメジャーの台に立った。

 レーザー光線が身体を這うように動く。そして数秒で測定値がでた。

「トップは……、まあ92センチもあるの。アンダーが69! 人間にしては細いのね。……ええと、Fカップ。綺麗な形に育ってて羨ましいわ」

「あの、私は別に好ましくは思っていないんですけど」

「そうよね。私も大きいから、気持わかるわ」

 タブレットにタッチペンで記入していく。


 続いてウエストの数値を見た。

「すごっ! シックスパックじゃないの。どれだけ鍛えたの」

「陰陽騎兵なら、これくらいは」

「私はせいぜい、2つくらいよ。じゃあ、巻くね」

 アマシアは聖明依の身体が、尋常ではない方法で鍛え上げられたことを悟った。触れれば、まるで鋼のようだった。でも、暖かく肌は白くすべすべしており、何より傷が見当たらない。それどころかシミすらない。

「ウエスト、62センチ……。これは人間の女に嫌われるわ。バニィの私すら陰口言われることあるのに」

「何センチなんですか」

「バニィにしては太いほうなんだけど、60なの。これ秘密ね」

「いいませんよ」


 ヒップは外側に丸い形をしており、非常に女性らしいシェープだ。太ももの間は隙間があり、向こう側が見える。少々、恥丘が膨らんでいた。

「ええと、97センチと」

「あの、アマシア先輩と同じタイトスカートなんですよね」

「ええ、そうね」

「お尻大きいから、恥ずかしいんですが」

「慣れるわよ。男だって、そのうち見なくなるから」

「やっぱり見られるんだ」

「まだ17だもんね、慣れろって言う方が無理か。あんまり気になるようなら、渡しに言ってね。ひっぱたいてあげるから」

「ふふ。ありがとうございます」


 アマシアは、まだスキャンメジャーのパネルを見ていた。

「ねえ、身長と体重の数値出てるけど知りたい?」

「先輩だけ見たなんて不公平ですよ」

「あはは、ごめんね。ええと、170センチメートル・体重57キログラム、だって」

「ほっ。そうですか」

「ねえ、私のサイズ教えよっか」

「結構です」

「175センチ、上から95のIカップ、60、97! 勝ったわ」

「……体重は?」

「秘密です」

「分かりました、気になりませんし」


 タブレットからデータを送信し終わると、着替えている聖明依に言った。

「制服は、サイズがあれば明日にでも届くから。遅くても3日で来るから安心してね。でも、現場の人はあんまり制服着ないんだけどね」

「どうしてですか」

檄・剣警隊月桂は、基本的に隠密行動なの。だからなのか、陰陽騎兵出身が結構いてね」

「なるほど」

「制服を着て現場に行くときは、全てが確定した時だけ。ほとんどは私服なの」

 タブレットに着信音が鳴った。


「聖明依ちゃん、サイズあるって。急ぎなら今夜にでも到着するけど、どうする」

「では、よろしくお願いします」

「はーい。お姉さんに任せてね♪」

 脇を締めてタブレット画面に集中し始めた。

 よく見れば、アマシアもかなり胸が大きい。聖明依より二回りは大きいかもしれない。

 自分と見比べていると、アマシアが話しかけてきた。

「終わったわ。私はデスクに戻るけど、聖明依ちゃんはどうするの?」

「寮に戻ります。データを読みたいので」

「分かったわ。じゃあまたね」


「アマシア先輩」

 聖明依はアマシアを見つめた。

「何かしら……、聖明依ちゃん?」

 その目は、将校の部屋で向けたのとほとんど変わらなかった。

 それを知らないアマシアは、少したじろいだ。

 聖明依は、ブラを付けた下着姿のまま一歩踏み込んだ。

「夜は空いていますか」

「あ、あら。デートのお誘いかしら。大丈夫よ」

「ルームメイトとして、話しておくべきことがあります。帰ったら聞いてくれますか」

「告白なんて大胆ね。分かったわ」


 アマシアはずっと笑顔で聞いていたが、聖明依の顔は全く笑っていなかった。だからこそなのか、目を見て話そうとはしなかった。

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