初めの一歩

また悪魔の日々が始まった。

寝静まった夜中、親が買い物に出かける週末、目を盗んではシンナーを吸っていた。


さらにはまた、バレた時もあった。


父は休みの日曜日に私の部屋で私の監視をした事もあった。

私はその時何をしているかというと、副作用でしんどい。と寝ているのである。


そんな私を見張る様に、父は冷たい床の上でずっと座っていた。

何時間もずっと。


それでもまだ、まったく悪いと思っていない最低な私がいた。


今思えば、その父の忍耐力は多分、遺伝しているのかもしれない。

我慢強さ、それは私の長所といえるかもしれない。


そんな腐った日々を送る中、私の中で少しずつ何かが変わってきたのである。

失恋始まりのその日々はだんだんと傷も癒えたからか、

自分の中の正義感なのか、身体の拒否反応なのか、


そう、あまり「美味しくない」のである。


ある日の事。

私はなんとなくアルバイト求人のフリーペーパーを見ていた。


「夏の甲子園」売り子募集!


一番自分には似つかわしくないであろう求人に目が止まった。


私は結構な人見知りである。

本当に気の知れた友達は数えるほど。それで充分だ。

わざわざ新しく広げようと思わないし、気を使うのがとても嫌いである。


そんな私に、


「このままではいけない、何か変えないと!」


誰かが耳元で囁いた。


と、そのまま甲子園の売り子募集に電話をしたのである。


その数日後、面接に行き採用された私は、夏休みに1人甲子園のバイトへと出かけた。


失恋から約1年後の16歳の夏であった。

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