心理ゲームの噂(調査編)
秋心ちゃんの白くて透き通った肌は薄紅色の夕陽に染まって、艶のある黒い髪を縁取るように光っている。
カッコいい感じで言ってるけど、血の池で仏頂面を決め込む鬼に見えてんだよなぁ……。
「心理ゲームってアレですよね、心理学とかを元に構築されてるんですよね?
先輩、あたし達が何部に所属しているか覚えてます?」
言うに事欠いてこの子は……。
一応言っとくけど、俺部長だよ? この『オカルト研究部』の。
知らんはずないだろ。どこまで失礼なんだ君は。
「わかった上で言ってるんなら余計にタチが悪いです。
科学はオカルトから最も遠い所にあるものですよ。その遠さときたら、火澄先輩と女子生徒くらいの遠さです」
ボディ(心の)を秋心ちゃんの拳(言葉の)が激しく打った。
あ、やべ……折れそう、心が。
「ち、近いわ! 俺と女の子はめっちゃ近くにいるわ!」
何なら秋心ちゃんも女子生徒だろ。
机挟んで真向かいに女子生徒いまーす! 君でーす‼︎
……ああぁ、虚しい悲しい泣きそうだ。
「でも、どうしても先輩がその心理ゲームとやらをやりたいと言うのなら、まぁ付き合ってあげなくもないですけど。
科学を学ぶ事でオカルトの本質が見えてくるかも知れませんし」
少しだけでいいから記憶を遡れ。
俺は君の暇潰しに付き合ってんだぞ?
何その仕方ないなぁ的な表情。人間ってここまで自分勝手になれるものなの?
「お、お願いします……心理ゲームをしてください」
く、屈辱……。
しかし背に腹は代えられない。苦しくて辛いのは今だけだ、家に帰れば思う存分枕を涙で濡らすことが出来るんだ、今は堪えろ……耐えてくれ、俺の涙腺のところの筋肉‼︎
「いいでしょう。
先輩はひとり、人気のない森の中を……」
「え⁉︎ いやいや、ちょっと待って。こう言うのってさぁ、言いだした方が出題するんじゃないの?」
「全てが自分の思い通りに行くと思わない方がいいですよ。
反省してください。その自分勝手で利己的な考え……最低です!」
そのままその言葉返すわ‼︎ どの口だ! どの器官がその言葉吐いてんだ‼︎
知ってるよ‼︎ 俺の思い通りに事が運ばないことくらいさ! 秋心ちゃんがオカ研に入ってから俺の思い通りにいったことなんて一度もないんだから‼︎
「続けますよ」
どこまで本気なんだこの後輩。
マジで俺じゃなかったら部屋から出てこなくなってるぞ。相手が俺だから何とか片膝で踏み止まってるんだ。だって引きこもりでもしたら出席日数足りなくなって留年した結果、この子と同じ学年になっちゃうんだもん。
そんな地獄……あって良いわけがないもん。
「先輩はひとり、人気のない森の中を歩いていますか?」
……何だって?
「いや……歩いてない」
「じゃあ走っていますか?」
「走ってもない……。
そもそも森の中にいない」
普通シチュエーションを想像させて、そこで起きる出来事への対処法で精神的な何某を判断するのが心理ゲームなんじゃないの?
秋心ちゃん、もしかして『心理ゲーム』が何なのかわかってないんじゃないかな……。
「じゃあどこにいるんですか?」
「どこも何も……ここにいるじゃんか」
「ここにいるあなたは本当にあなたですか?」
「待ってくれ、それ『心理ゲーム』じゃなくて『真理ゲーム』だろ」
「……バレましたか?」
「バレました‼︎」
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