廃墟の幽霊の噂(後日談)
肝試し翌日の風呂上がり。
秋心ちゃんからの執拗なメールを無視してアイスをペロペロ舐めながらテレビをザッピングしていると、なんとまぁ見慣れた我が街の風景が映し出されているではありませんか。
大した事件や出来事じゃなくても、自分の知ってる土地のことなら何となく興奮するよね。俺も例に漏れず指をリモコンから離して画面を見つめた。
清楚系のお姉さんリポーターがマイクを握らながら俺を見つめ状況を説明している。
『……付近の住民から異臭がすると通報を受けた警察官が発見したもので、死後一週間ほど経過していると見られています。
発見された遺体は損傷が激しく、詳しい死因等はまだ分かっていませんが、警察は事件の可能性もあるとみて捜査を続けている模様です』
『CMの後は、なんと人間の言葉を話す犬の特集です』
なんてこった……犬が人語を喋るだと!? これを見逃す手はないね!
それにしても、まさかあの洋館に死体があったとは。昨日見つけなくてよかった。
「もしもし?」
『いつまでメール無視すれば気がすむんですか?』
この腹の底から凍えてくるような声は秋心ちゃんだね。
「いや……お風呂入っててですね」
『ニュース見ました?』
見たけど、少しくらい俺のシャワーシーンを想像してくれても良いじゃない?
『危うく死体に遭遇するところでしたね』
「間一髪だったよな。あのおじさんに感謝しないとな」
二年前からあの館に寝泊まりしてても死体には気付かないちょっぴりドジなおっちゃんにサンキュー!
『そうですね。
ちなみに遺体は中年の男性だったらしいですよ。首に布が巻きつけてあったから、殺人の可能性が高いんですって』
しっかりしてくれよ、おっちゃーん! ボケーっとしてたらおっちゃんが殺されちゃうところだったよー! 俺、超心配だよー!
『先輩、あのおじさんが幽霊だって言い張ってましたよね? 本当にそうだったらとても怖いなと思って電話しました』
……俺はあのおっちゃんが被害者だった場合よりも、加害者だった場合の方が怖いと思うな。
幽霊より以下略。
おわり
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます