第27話願い

 イレイがロードを改良している中、ファーストは激戦状態だった。

「早く弾薬を運び込め! ありったけな!」

 ジュウゴの指示で整備士がバタバタと動く中、エルはフロウが予想以上に粘り強い事に苛立っていた。

 戦況はいたって最悪だった。圧倒的な数に加えて遠隔操作で動かす無人の飛行型グリム。それに対してこちらは負傷者が多数。死人が出ないことが何よりの幸いだが押し切られるのも時間の問題だろう。

『しまった! 一機そっちに向かったぞ!』

 ブレイブを押し切って一機のグリムがこちらに接近してきた。

「カレン! 俺が援護するから叩き潰せ!」

「了解!」

 エルはロケットランチャーを構え、グリムの足を狙う。

「ロイドよりは下手だが、当たってくれよ」

 エルはトリガーを押した。

 弾頭が発射され、グリム足に直撃する。

 大きな爆発が起こり、倒れていくグリムをブレイブの鉄剣が振り下ろされた。

 コックピットは大きくへこみ、グリムは苑で動きを止めた。

「くそ。攻められるのも時間の問題か」

 エルが地面に転がっている弾頭を全部持っていくと激戦している場所に走って行く。

「隊長! どこに行くんですか!」

「お前はその場に残ってろ! 俺が一人でも多く足止めしてくる」

――たとえ機体がなくても戦える!

 その時だった。頭上が急に真っ暗になったのだ。

 上を見上げると巨大な悪魔がこちらに向かって来ていたのだ。

 エルは急いで後ろに飛んだ。

 大きな砂煙を巻き上げながらネロが乗るクレイクが地面に足を付けた。

「姫様……」

 クレイクは前に会った時よりも多少変化していた。

 紫色のボディの隙間からあふれ出る緑色の光、翼は展開されており、スラスターから出る火も緑色。

「隊長危ない!」

 クレイクが手に持つチェーンソーを振り下ろしてきた。

 エルは弾頭を全部手放すと地面に向かって転がった。

 何とか交わすもエルのポケットに入ってあったロケットが地面に落ちてしまった。

「ロケットが!」

 エルはロケットを拾うと大事そうに自分の首にかけた。

「隊長! 後退してください!」

 カレンが叫びながらクレイクと対峙した。

「すまないカレン。恩に着る!」

 エルは後退し、格納庫からありったけの弾頭を手にし、カレンの元に向かった。

「姫様! ご無礼お許しください!」

 エルは弾頭を装填し、クレイクの足元に向かって標準を合わせる。

 しかし、引き金が引けなかった。あの中にネロがいることが怖かったのだ。

――俺のせいで姫様の命がまた危険にさらされるのか……。

 エルがロケットランチャーを下ろそうとした時、カレンの怒声が聞こえた。

「隊長は王国にいる女児たちが大勢死んでもいいんですか!」

 カレンの言葉にエルは何かを吹っ切れた。

――そうだ。俺が頑張らないと俺の後ろにいるロリが死んでしまうんだ。

 エルは引き金を引いた。

 弾頭は射出されクレイクに直撃し、大きな爆発を生む。しかし、クレイクは無傷だ。

「直撃したのに全然効いてないだと」

 ブレイブがクレイクに向かって鉄剣を振う。

「はあぁぁ!」

 クレイクは鉄剣をチェーンソーで防御。鉄剣は粉々に砕け散っていく。

「く、武器が」

 ブレイブは腰に取り付けられたマシンガンを手に弾幕を張った。

「ここは絶対に通さない!」

 クレイクは銃弾に気を取られず真っ直ぐ全身するとブレイブに向かってチェーンソーを振るう。

 ブレイブが避けようとするも反応速度が遅く、右腕が切られてしまった。

「カレン!」

「大丈夫です隊長!」

 カレンの声を聞いたエルは安堵しつつも弾頭を装填し終えたロケットランチャーで援護していく。

――イレイ。俺は必ずロードを連れてくると信じているからな。

 エルはここにはいないイレイに願った。

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