第23話絶望と希望

一方エルはどうにかしてイレイを連れ帰す方法を探していた。

「落ち着けよ隊長。こんな時こそリラックスだろ?」

ジュウゴはエルの右手を見ても全く気にすることなく接してくる。

ジュウゴの性格にエルは救われながらも気持ち的には余裕がないのは事実。

「親方。気持ちはありがたいけど今はそんな場合じゃないんだ」

エルが考えているとアナウンスが入った。

『至急全小隊の隊長は指令室まで来てください。繰り返します』

「こんな時に」

 エルは歯噛みしているとジュウゴが肩に手を置く。

「行ってこい。俺の勘だが嫌な予感がする」

 ジュウゴの真剣な眼差しにエルは頷き指令室に向かって行った。


「よく集まってくれた、まずはこれを見てくれ」

 指令室に集まった全小隊の隊長は巨大なスクリーンを見た。

 そこには今朝がた偵察に出かけた03小隊のブレイブが映した映像が流れる。

 映像に映っていたのは砂埃と数えきれない数のグリムの影。

 その真ん中には翼を展開しているクレイクの姿が映っていた。

「見てわかる通り、今フロウの連中が超大部隊を連れてこちらに向かってきている。幸い03小隊のメンツは全員無事だ。だけど対策を練らなくちゃいけないのは事実だ」

 全員の顔は絶望していた。

 兵士は前の戦いで大幅に損耗。ブレイブの数も何機か破壊され、おまけにこちらにはロードがない状況だ。それに対しフロウは新兵器を積んだグリムの大部隊にクレイクを連れてこちらに向かっていると聞く。誰でも絶望するのは当たり前だ。

「無理なんだよ。俺らだって隠れてやり過ごせてはいたが、あんな数とても勝てねぇよ」

 03小隊の隊長は憔悴しきった表情で嘆いていた。

「もう降伏するしかねぇんじゃねぇのか?」

「こんな奴らに戦いを挑んでも負け戦なのは明確だし」

 室内がざわめき始める。恐らく全員頭の中では逃げる機会を探っているのだ。

 しかし、エルは諦めなかった。こんな状況でも彼には守りたいものがあったから。

「お前らはそれでいいのかよ。守りたいものがあるからここに来たんじゃないのか?」

 エルの発言で場の空気が変わった。

「俺は戦う。たとえ絶対に負け戦とわかっていても俺には守るべきロリがいるから」

「エル……」

 部屋にいた全員の顔は先ほどまでの雑棒缶漂う表情ではなく、熱い闘志を燃やす表情に変わっていく。

「そうだよな。王国には守る人がいるんだ。こんなところで引くわけにはいかねぇんだよ」

「戦おう。たとえ自分の命をかけようと」

 エルは思った。この戦いで死ぬ者が大勢いるだろう。その中に自分も含まれることも。

 イレイや今日出会った男の言葉を思い出す。

――死んだら後の奴のことも考えろ。それもそうだな。

 エルは微笑を浮かべながら高らかに部屋にいる全員に宣言した。

「いいか! 俺らは誰一人として欠けることもなくこの戦いに勝利するぞ!」

 歓声が巻き上がった。

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