第22話イレイの決意

 イレイは車に乗せられて約三十分。王国内にある兵器開発局に連れてこられた。

 黒服に連れられ階段を降り、向かった先はロードの格納庫だった。

 中に入ると真っ白な無機質な部屋にドグマが立っていた。

「おお、イレイ。待ちわびていたよ」

 ドグマは歓喜に満ちた顔でイレイの前で両腕を広げる。

「お父様。なぜ私をこのような場所に」

「決まっているじゃないか。ロードを完成させるんだよ。データも一通り集まったしね。うかうかしていられないだろう?」

 ドグマは笑っていた。まるで新しい玩具を貰った子供の様に高らかに笑っている。

「ところでロードのパイロットなのだが、結晶化は進んでいるかね? 私の推測が正しければ今頃半分ぐらいまでは進んでいるはずなのだが?」

 ドグマの言葉を聞いたイレイはエルのことを思い出した。

「何を言って……まさか!」

「そのまさかさ! イレイのFPSにちょっとばかし細工を入れたんだ!」

 ドグマの言葉にイレイは言葉を失った。

「あんな素敵な物を活用しないのは論外だろう? それにお前が見落としていた部分をこの私が見つけたのだ。むしろありがたいと思いたまえ!」

 ドグマの言葉にイレイは寒気を感じていた。

「見落としていた……。もしかして」

「そうさ! エモン鉱石は負の感情によって他の物質を浸食していくのさ! 素晴らしいと思わないかね。それを私は実験体のお陰で見つけることが出来た!」

 イレイは目の前の男が人として見られなくなっていた。

――こいつ。もう人間じゃない。ただの人を道具とみなす化け物だ。

 ドグマは笑っている。まるで狂気に近い何かを感じさせるような。そんな笑い声が部屋中に響く。

「そしてお前がいない間にもう三号機の設計図は出来ている! 後は完全にエモン鉱石となればすぐにでも開発できるんだ!」

イレイはすぐに部屋を出ていきたかった。

でも出られない。この男を本当に怒らせると家族だろうが容赦しない。

自分の妻を殺したようにイレイも殺してし

まうだろう。

「さぁ、イレイ。もう私はクレイクの件では怒っていない。早くロードを完成させてしまおう」

 ドグマはイレイに手を差しだす。

――こうなったら隙を見てデータの改ざんをするしかない。もしくは……。

イレイはドグマの手を取った。エルの元に帰る事を思いながら狂人の手を取った。

「さぁ、イレイ。今日は疲れただろう。今日は部屋に戻りなさい。鍵は渡しておくから」

 ドグマから鍵を貰うと格納庫を出たイレイ。

 開発局を出てイレイは歩いていく。

 街は昼間のせいか活気にあふれており、

通りが多い。

 イレイは人をかき分けながら歩いている

視線を感じて振り返った。

 遠くに黒服の男が歩いているのが見えた。

――逃がすつもりなんてないのね。

 イレイは前を向き歩いて一つの赤い屋根

特徴の家に着いた。

郵便受けには大量の手紙がぎゅうぎゅう詰めに入っており、一通取り出してみると学校から来るいつもの手紙だった。

イレイは手紙を元に戻すと、扉の鍵を差し込んで鍵を開けると家の中に入った。

最初に埃臭さを嗅ぎ、目の前には家具や床には埃がかぶってあった。

 まるでそこの時間だけ止まったかの様に家の中にある物は何一つ動かされていない。

「あの時のまま」

 イレイは靴を脱ぎ捨てると中に入り、リビングを見て回った。

 イレイは棚に置いてある写真立てを手に取り埃を払った。

 そこには白髪のワンピースを着た女性と小さい頃のイレイ。その隣には顔をマジックで黒く塗りつぶされている白衣を着た男性。

 イレイは悲しくなりつつも写真立てを元に戻すとリビングを出て階段を上った。

右端の部屋に止まると生唾を飲み込んでからドアの取っ手を回す。

中に入るとそこには質素なベッドと木で作られた椅子と机が置いてある。

「ここも変わらない」

 机の方に向かうと大量の設計図と鉛筆の数。

「ロードを改良して隊長の元に戻らなくちゃ」

 イレイは鉛筆を手に持つと大量の設計図から一枚取り出すとそこに鉛筆を走らせていく。

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