第16話謎の暴走
「何……これ」
エルの憎しみめいた叫び声と共に謎のデータが展開されていく。
イレイは涙を拭い、エルを見た。
そこには赤い粒子をまき散らしながら怒りを露わにしているエルの姿。
「た、隊長! お、落ち着いてください!」
「がああぁぁ!」
刹那、コックピットが大きく揺れた。イレイは体を大きく揺すられとてもキーボードを弄られる状況ではなかった。
「お前らが! お前らさえいなければ!」
メインカメラにグリムが写ったと思われたら一瞬で対物ライフルの銃弾が放たれ、次々と破壊していく。
正常とは思えない行動にイレイは急いで強制的に電源を切ろうとする。
「このままじゃ隊長が死んじゃう」
しかし、何度も強制終了を支持してもロードは答えてくれない。
「な、何で!? 調整したはずなのに何で受け付けてくれないの!」
ロードの前にクレイクが写る。
クレイクの持つチェーンソーを握り壊し、頭部目掛けて全力で殴り飛ばす。
「くぅ。な、何なのあの姿! この試作機にはあんな力まで持っているって言うの!?」
クレイクからネロの声が聞こえるもエルは無視。コックピット目掛けて鉄剣を突き刺そうっとする。
このままエルが姫様を殺したらクレイクは半壊した状態で回収できるだろう。
しかし、そんなことしてしまったらエルの精神が崩壊するのは百も承知だ。
「隊長! やめてください! あそこには姫様がいるんですよ!」
イレイは席から降り、エルを抱き締める。
「ひ……め……さま?」
怒りに支配されたエルはイレイの声を聞いてだんだん怒りが収まる様に顔の表情が元に戻っていく。
赤い光の粒子はエルが元に戻るのと同時に収まっていく。
エルがメインカメラに映るクレイクと今にでも殺そうとしている自分の行いに恐怖を感じた。
「え……なにこれ。俺はなぜ姫様を殺そうとしているんだ」
イレイは恐怖で体を震わせるエルの背中を落ち着かせるように撫でる。
「落ち着いてください。隊長はちょっとむしゃくしゃしていただけです」
「でも姫様をこの手で殺そうとしていた。俺が、敬愛する人をこの手で殺そうとしていたんだ!」
エルが恐怖で身を震わせているとメインカメラからにはクレイクがいなくなっており、遠くから少女の声が聞こえる。
「生きている奴らは私に続け。一旦撤退する」
クレイクが生き残ったグリムを連れて撤退していくのをイレイは黙って見逃した。
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