第6話ロリの可愛さ

――コンコン、コンコン、コンコン。

 部屋からノック音がしたことにエルは飛び起きた。

 時刻を確認するとまだ午前二時半だ。

 エルは眠気を吹き飛ばし、慎重にドアに向かって歩いていく。

耳を澄ませると「寝てるのかな」とイレイの小さな声が聞こえて来た。

「イレイ?」

 エルが扉を開けるとそこには青い寝間着姿のイレイが不安そうに立っていた。

 イレイの服が変わってさらに可愛らしくなったことにエルは眩暈がした。

「あ、あの。お願いがありまして」

「な、なに?」

 エルは理性で欲望を抑えていた。

 しかし、こんなか弱い子を前にエルの理性はあまり持ってくれなさそうだ。

「あ、あのお手洗いに行きたいのですけど。場所がわからなくて。べ、別に怖くはないのですけど、ただ場所がわからなくて仕方なくロイドさんとカレンさんを起こそうとしたのですが、熟睡しちゃって。だから一緒に来てくれるとありがたいのですけど。」

 イレイは強がってはいるが、体は微かに震えていた。

「あの、駄目ですか?」

 イレイが上目遣いでエルを見る。

 最高だった。いくら払ってもこんな美しいロリを見ることは一生ないだろう。

「ありがとう。神様……。俺にこんな祝福を与えてくださるなんて」

 エルは満面な笑みを浮かべながら涙を流していた。

「え、何で泣いているのですか。私何かしたんじゃ……」

「い、いや。そうじゃないんだ。大丈夫だから、ほら早く行こう」

 エルは涙を拭い、部屋を出る。

「ほら、こっち」

 エルはイレイを連れてトイレに向かって位道を歩いていく。

 エルはとても満足した様子で歩いていると突風が吹き、窓が大きく音が鳴った。

「ひゃあ!」

 イレイは小さく悲鳴を上げるとエルの体にしがみついた。

「おうふ」

 体を微かに震わせながら抱き着くイレイを見てエルは微かな理性が少しずつ壊れていくのを感じていた。

「ご、ごめんなさい!」

 イレイは慌ててエルから離れるも怖がっているのが見てわかる。

 エルは顔を真っ赤にしながらもイレイに手を差しだした。

「ほ、ほら。怖いなら手を繋ごうか?」

「べ、別に怖がってません!」

 イレイは乏しい胸を張りながらエルの前を進んでいく。

 エルがイレイに向かって息を吹きかけた。

するとイレイは体を跳ね上がらせ、急いでエルの手にしがみつく。

「怖がってるじゃん」

「こ、こここ怖がってません! で、でもエルさんがどうしても手を繋ぎたいって言っているので手を繋いであげます」

 イレイはおどおどしながらもエルの手をしっかりと握った。

 エルは微かな理性を保たせながら無事トイレに向かわせることが出来た。

「絶対にここで待っててくださいよ!」

「分かってるから。早く行ってこい」

 イレイがトイレに入ったことを確認すると大きくため息を吐きながらエルは座り込んでしまった。

「俺を誘ってるのかよ。こっちの身のことも考えろよな」

 エルが項垂れていると「まだいますよね!」とイレイの声が聞こえてくる。

「まだいるから早くしろ」

 しばらくすると水音が聞こえ、トイレからイレイが出てくる。

「お、お待たせしました」

 エルは立ち上がり、部屋に向けて歩こうとすると自分の手に冷たくて柔らかい感触がした。目線を向けるとイレイが両手でエルの手を掴んでいたのだ。

「ちゃ、ちゃんと手は洗いましたから。だから手を繋いでも良いですよ」

 強がっているのか、怖いから手を繋いでほしいのか、イレイの言葉にエルは胸の高鳴りを抑えながら歩いていく。

「エルさんって体温高いのですね。なんか心休まるって言うか。落ち着くって言うか」

「そ、そうか? 全然気にしてないから気付かないな」

 イレイは歩きながらエルの手を何度も触ってくる。

「この手で色々な人を救ってきたのですね」

「誤解だ。俺はロリを中心として救ってるだけだ。別に俺は……」

「でもエルさんは人を救ってますよね? それだけでもすごい事ですよ」

 イレイの純粋さにエルはむずかゆくなり、話題を変えた。

「あ、あのさ。そのエルさんってそろそろやめないか? なんか言われ慣れてないからむずかゆくて」

「ならなんて呼べばいいのですか?」

 エルは少し考えると指を鳴らした。

「兄さんってどう? 俺実は妹のロリを身近で感じたくてさ。どうよ?」

「嫌ですよ!」

 イレイを目に見えてわかる拒絶にエルは肩を落とす。

「いいじゃんかよ、ほら兄さんって」

「嫌です。そんなに言ってほしいなら別の子に言ってもらえばいいじゃないですか」

「イレイじゃないとダメなんだ!」

 エルは廊下の真ん中で演説を始めた。

「いいか、そこら辺のロリでも兄さんって呼んでもらえばそれでいいのかもしれない。確かにそこには可愛いと思える! だけど満足感は得られない! 俺はな恥ずかしながら涙目で『兄さん』って呼んでもらいたいんだよ。わかるか、そこには美が生まれるんだ! いいか、必要な条件を全て満たしている。イレイだからいいんだ! だから俺はイレイじゃないといけないんだよ!」

 長い演説を聞いたイレイは呆然としていた。

 そこに部屋を開けてカレンが出てくる。

「うるさいわね。誰よこんな時間に騒いでるの……って隊長?」

 部屋から出てきたカレンを見てイレイが歩み寄って行った。

「カレンさん。エルさんが変態なんです」

「あちゃー。隊長のスイッチを押しちゃったのね。大丈夫よイレイちゃん、変態でも隊長は絶対に手は出さないから」

 カレンはエルに口元だけ笑みを向けながら自室を指さしていた。

「はい、今すぐ帰ります」

 エルは改めて大人の女性は怖いなと感じつつも自室に一人で向かって行った。

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