第4話少し違う日常
エルはまず自分たちの隊舎を紹介するためにイレイを連れて隊舎に向かった。
「ここが俺らの隊舎。他にも02小隊と03小隊の隊員もこの隊舎で過ごしている」
「はい」
そこには白い外壁のマンションが一つ立てられていた。
隊舎の扉を開け、イレイと共に中に入る。
右に曲がると直ぐに『01小隊』と書かれた札が目に着いた。
「とりあえず、最初に01小隊の部屋を紹介するよ」
「分かりました」
エルがドアを開けるとそこには自分の銃を手入れしている。ロイドに関しては堂々とグラビア写真集を見ていた。
「あ、隊長例の子を案内しているんですか? 手を出したら速攻で捕まりまっせ」
「出さねぇよ」
イレイはカレントロイドにお辞儀した。
「イレイと言います。これからよろしくお願いします!」
イレイの挨拶に「おお、よろしく」「よろしくね」と二人は挨拶を返した。
エルがイレイと共に歩いていき、一番奥の寝室を指さす。
「多分このスペースがイレイのだと思うから。自由に使って」
「え? 男の人と一緒に寝るんですか?」
イレイは明らかに嫌そうな顔でエルを見た。
「大丈夫。私も最初は嫌だったけど。慣れればどうってことないから。お二方は私を襲うようなこともしないし」
カレンのお陰で少し不安が取り除くイレイだったのだが、大きな不安がまだ残っていた。
「ん? 何で俺を凝視するの?」
イレイの視線にエルは首を傾げた。
「エルさんがなんか信用できなくて。変態さんですし」
「いやいや、待ってくれよ。俺はロリには決して手を出さないって誓っているから大丈夫だよ。俺は何もしない」
「信用できないです」
無表情でじっと凝視するイレイに苦笑いを浮かべるエル。
そこに写真集を閉じたロイドがやれやれと言わんばかりに近づいてくくる。
「落ち着きなされ。確かに隊長は変態でロリコンだけど、部屋は俺らとは違うから安心しな。すぐ隣だけど」
ロイドの言葉にイレイは少し驚いた様子で手を合わせた。
「部屋が違うのですか? てっきり同じ部屋かと……」
「隊長の階級は少尉だから一人部屋が許されてるんだよ。だから用事があれば隣の部屋を訪ねればいいこった。まだ案内していない場所があるんだろ? とっとと行ってこい」
「はい。ありがとうございます」
イレイがお辞儀するとドアを開けた。
エルは腑に落ちなかったが、状況が収まったことに安堵し、イレイの後を追いかけた。
イレイに基地内を案内し終えるともう時刻は夕方になっていた。
前を歩くイレイを見てエルは昔のことを思い出していた。
自分が最も敬愛していた人。
イレイを見ているとまるでその人と一緒にいるような感じでとても居心地がよく、そしてあの時の出来事を否応なく思い出させる。
「あの、エルさん?」
「ん? あぁ、何かな?」
エルが横を振り向くとイレイがまじまじと見ていた。
「ずっと気になっていたのですが、綺麗な黒髪ですよね。エモンの国民は黒髪で生まれてこないので……なんでかなって?」
「あぁ。俺はエモンで生まれたわけじゃないからな。不思議がるのも無理はないか」
エルは自分の黒髪を弄りながらイレイに自分の故郷のことを話した。
「何年か前にエモンと同盟を組んでいた国がフロウによって滅ぼされたのは知ってるか?」
「えっと。確かエルドラでしたっけ?」
「当たり。俺はエルドラ出身で、この黒髪はエルドラ人の特徴なんだよ」
エルの昔話を聞いたイレイは申し訳なさそうにしていた。
「そう言う事が……。すみません。嫌なことを思い出させちゃってしまい」
エルはイレイが悲しそうに謝るのを見て慌てた様子で首を横に振った。
「謝らないでくれよ。確かに嫌な思い出だけど、でもエルドラの誇りや楽しい思い出は俺の中にあるんだからな」
エルが胸に手を当てて笑みを浮かべた。
それを見たイレイは微かに笑みを浮かべた。
「お、笑った。いい笑顔だな」
「わ、笑ってません!」
「えぇ。絶対に笑ったよ」
「笑っていませんってば!」
エルはイレイと隊舎に戻りながら楽しく話していた。
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