第3話これからのこと
戦闘が終わり、帰還したエルに少女は急いで精密な検査を受ける羽目になった。
一時間以上の検査を終えたエルはふらつきながら診察用の椅子に座った。
「何だってまた。こんなめんどくさい事を」
エルが愚痴りながら座っていると軍医が奥からカルテを片手に現れた。
「うん、異常はないね。いたって健康だよ」
軍医からそう言われ、エルは「ありがとう」と告げて部屋を出た。
「ど、どうでしたか?」
「以上はないって」
エルの言葉に少女は安堵の息を吐いた。
「よかった。もし異常があるなんて言われたらどうしようって……」
「あはは。心配性だな。それよりもさ。君って例の整備士だろ?」
「あ! 自己紹介遅れました。王国エモン所属の整備学校から来ました。イレイと言います。これからよろしくお願いします。先ほどの戦闘の無礼申し訳ありませんでした」
白髪の少女――イレイはお辞儀した。
「俺はエル。君がこれから世話になる01小隊の隊長をやっている。まぁ、よろしく」
エルは微笑みながらイレイに手を差しだす。
イレイがその手を握って握手した。
しかし、握手はずっと続いた。
「えっと……。え、エルさん?」
「整備士をやっているのに岩の様なごつごつさが全くなく。おまけに肌はかなりきめ細かい。そしてロリ特有の赤ん坊の肌を弄っているかのような柔らかい肌の弾力。まさに芸術と言ってもいい。ああ、素晴らしい!」
エルが両手でイレイの手を弄っていると後ろから何かで叩かれてしまう。
「いった! 誰だ俺の芸術鑑賞を邪魔してんのは!」
エルが後ろを振り返るとそこには冷ややかな目で睨んでいるキキョウの姿だった。
「じょ、上官!?」
「あんたの変態鑑賞会を邪魔して悪いね」
「い、いえ。邪魔なんてそんな」
キキョウは弁明を図るエルを無視してイレイに話しかける。
「お前が例の整備士だね。私がこのファーストの最高責任者のキキョウだ」
「は、はい。初めまして。イレイと申します。これからよろしくお願いします」
イレイはキキョウに向かってお辞儀した。
「ふん。軍人の礼儀マナーは全く駄目だね。少尉、整備士に後でマナーを教えてやりな」
「了解であります」
キキョウが後ろを振り返り、部屋を出ようとすると何かを思い出ししたかのように足を止めた。
「ああ、忘れるところだったよ。少尉、お前あの試作機を扱えるんだろ?」
「はい。私一人では厳しいですが、補助としてもう一人いれば何とか動かせます」
「ふーん。なら整備士と一緒にあの機体に乗りな。なんんだかんだ言って相性もよさそうだから丁度いいだろ」
エルはキキョウの言葉に対して反論した。
「ま、待ってください! イレイは非戦闘員です。戦場に出すなんて危険すぎます」
「なら他の小隊から誰かを補助に向かわせるか? そうしたら戦力が一人失うのと同じなんだ。そのせいでグリムの部隊に侵入されたらどうするつもりなんだね。それに」
キキョウは部屋の戸を開けた。
「我が基地内で最強の01小隊の隊長だったらガキぐらい面倒見れるだろ?」
キキョウが部屋を出た。
それと同時にエルの緊張がほぐれて行った。
「えっと。ならエルさんがロードのパイロットでいいの?」
イレイが不安そうに話しかけてくる。
「そう言う事になるな。でも君は戦場に出てしまうことになるんだぞ。それでも――」
「いいんです。私の力で沢山の人が救えるなら本望です」
イレイの真剣な目つきにエルは不安ながらも頷いた。
「分かった、君のことは俺が命に代えてでも守り通して見せる。だからよろしく頼むよ」
エルはイレイに向けて拳を出した。
イレイはエルの行動に察しがつくとエルの拳に自分の拳を合わせた。
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