第1話ロリコン隊長
エルドラにフロウの強襲があって四年の歳月が過ぎた。
エルは王国エモンに拾われ、今では少尉として小隊を任されていた。
「だから! 何度言えばわかるんだよ!」
そんなエルとあるグラウンド内で金髪で長髪の青年に向かって刃のついていないダガーを全力で振う。
「甘えたがりのロリや年上だからと言って見栄を出そうとして失敗するロリ。そして一番はあの穢れなき笑顔。それを知らないお前は人生の十割は損していると言っているんだ!」
男は金色に染め上げた長髪をなびかせながらダガーを避けた。
男――ロイドはエルから距離を離し、軍服の袖で額の汗を拭った。
「いやいや。隊長こそ年上の魅力ってもんを知ってもらいたい。信用してる人にしか見せない弱みやあの心の器の広大さ。隊長こそ年上の魅力を知らなければ人生損してますぜ」
そんな二人の口論を訓練中の隊員たちは「また始まった」と呆れつつも見ていた。
そんな時だった。赤髪のセミロングの女性が二人に声を掛けた。
「隊長! ロイド軍曹! 司令官が招集をかけております!」
女性――カレンの声を聞いた二人は大きなため息をつきながらカレンの元に歩いていく。
「それまじ? カレンちゃんの冗談とかじゃないの?」
「はい。また急がないと怒られちゃいますよ」
ロイドの問いにカレンが答えている中、エルは一人逃げようとするのだが、カレンに襟を掴まれてしまう。
「隊長? 逃げようとしないでくださいね」
「……はい」
エルは観念して二人と共に基地の中に入っていった。
グリム防衛極東基地【ファースト】
エモンを守る最前線基地である。常に戦闘していることが多く、死者も多数出る事から別名【死地の入り口】なんて呼ばれたりする。
エル達はそんなファーストの司令官の部屋前に立っていた。
エルは大きくため息を吐くとノックした。
「開いてるよ。入りな」
中から老婆の声が聞こえ、エルはそっとドアを開ける。
「01小隊集合いたしました!」
エル達は敬礼した。
部屋にいたのは豪華な椅子に座る白髪の老婆だった。
ファースト最高責任者――キキョウ。
キキョウは冷ややかな目つきでエル達を一瞥した。
「お前らを呼んだのはある厄介ごとを頼みたいからだ」
「厄介ごとですか?」
キキョウは煙草を一本取り出し、火をつけると大きく煙を吸い込んだ。
「ああ、つい先ほど新型の試作機二機とそれらの整備を担当する整備員が到着してね。試作機の方はお前たちに乗る奴を決めてもらうとして問題がその整備員でね」
キキョウはゆっくりと紫煙を吐く。
「何でも兵器関係では右に出るものがいないと言われているほどの技術を持っている反面歳がまだ十六歳ときたもんだ。だからお前たちの隊舎に入れて面倒見ておいてくれ」
「じゅ、十四歳ですか……」
エルはキキョウの言葉に心躍らせた。
しかし、キキョウの一睨みでエルは顔を青ざめながらも姿勢を元に戻した。
「要件はそれだけだ。それじゃ頼んだよ」
「了解!」
エル達は敬礼をすると部屋を後にする。
「俺らを危険にさらさないでくださいよ」
ロイドはエルに向かって軽く小突いた。
「だ、だって十六歳だぞ! ど、どんなロリなのか楽しみじゃないか!」
「十六歳だからってロリって決まったわけじゃないですぜ」
エルはロイドに向かって睨み付ける。
「何を言っているんだ貴様は?」
「隊長こそ何を言っているんです?」
エルとロイドが睨み合っていると突然警報音が鳴り響いた。
『グリムの大部隊が接近! 各員はブレイブに乗り込み応戦を! 繰り返す!』
アナウンスを聞いたエルは先ほどまでの緩み切った顔から強張った顔になる。
「いくぞ、ロイド。カレン。出撃だ」
「「了解」」
エル達は駆け足で格納庫に向けて走り出す。
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