第二章『セカンド・イグニッション/金狼の少女』
Int.01:開幕、クラス対抗TAMS武闘大会
『――――試合終了。ロメオ1に撃墜判定、ヴィクター2は健在。
――――勝者、弥勒地一真』
「ふぅ……」
深い山の中、切り拓かれたフィールドに立つ純白の巨人、JS-17F≪
『ヴィクター2は整備区画へと帰投せよ。ロメオ1は脚部膝関節への不具合が確認された為、回収する。そのまま放置して構わないぞ、ヴィクター2』
「ヴィクター2よりCP、了解」
嵐山演習場の管制センターよりの無線指示に一真は短く言葉を返すと、背後に伏せる巨人――――身長8mの人型兵器、"
倒れ伏す灰色の機体、JS-9≪
――――二週間前、米空軍からの交換留学生ステラ・レーヴェンスを相手にしたA組クラス代表決定戦に辛くも勝利した後、一真は規定通りにA組のクラス代表へと選出された。本戦が開始してもトントン拍子で勝ち進め、そしてこの二度目の勝利というわけなのだ。
(……ったく、骨のねえ相手だ)
背後に伏せった奴を一瞥しながら、一真は独り胸の奥で毒づいていた。彼女も精一杯やっていたのは分かってはいるが、それでも一真は毒づかずにはいられない。
何せこの二戦、まるで苦戦せず楽に勝ってしまえているのだ。対ステラ戦ほど血も滾らなければ、限界ギリギリ、どちらが勝ってもおかしくない勝負というわけではない。まして現役ながら少々型遅れがちになってきた≪叢雲≫と異なり、一真の乗機は現役バリバリの≪閃電≫、しかもエース・カスタムのタイプFだ。機体のスペック差から既に如実で、ましてウデそのものも明らかに一真の方が勝っているものだから、正直相手に申し訳なるぐらいの圧勝だった。
一真はその性分上、誰が相手であろうと手加減ということが出来ないタチだ。まして全力で掛かってくる相手に対し、手加減するのは義に反する……。そう考えている為、余計に全力で掛かっていってしまう。
とはいえ流石にタイプFに隠された虎の子の特殊機構"ヴァリアブル・ブラスト"は意図的に封印していたが、しかし結果はこれだ。相手が相手だけに仕方ないと分かっていても、流石に骨がなさ過ぎるような気がしてしまい、一真も溜息のひとつぐらいはつきたくなってしまう。
(腕試しのつもりで参加したけど……これなら、ステラの奴と戦ってた方がナンボか面白いぜ)
もう一言、一真は内心で毒づく。
入学してまだ一ヶ月と数十日といった短い期間なのだから、他の奴らの練度が低いのは仕方の無いことだ。他の連中は一真のように予備知識の塊でもなければ、ステラのように元から経験豊富なプロのパイロットというわけでもない。仕方の無いことだと分かっている、分かっているのだが、しかし一真はどうしても落胆する気持ちを抱かずにはいられない。
(あと一人ぐらいは、骨のある奴と戦ってみたいんだが……)
『どうした、ヴィクター2。さっさと移動しろ』
としたことを考えている内に、管制センターの男性オペレータに無線で急かされる。一真は「了解、すんません」と短く詫びると、≪閃電≫を移動させ始めた。
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