第8話 逃げられない
昼休み、俺は桜と大河、八旗を誘って食堂に来ていた。俺たちは円形のテーブルに4つの椅子を持ち寄って座った。
「で、何で今日は食堂に来たんだ?」
大河が早速、問いを口にする。
「ああ、今日の放課後のことについて確認しておきたくてな」
「放課後、正門のところで待ち構えるんだよね?」
と、桜が返事をした時、八旗が口を挟んできた。
「なあ!この話俺関係なくねえかな?!純の無実を証明できる女を待ち受けるって話は分かったが、俺は協力する気なんてないぜ!?」
俺はポカンとして返す。
「当たり前だろ、別に協力を頼む気もねえよ。」
「じゃあ、何で俺を連れてきたんだよ!」
「いやー、お前。飯食う相手いないかなーと思って、誘っただけだよ。」
「確かに~!八旗って孤独な一匹狼って感じだよな!」
と、大河も元気に悪ノリする。
「うるせえよ!余計なお世話だ!。」
八旗はデカい体を荒ぶらせて吠えた。
そこまで聞いた時、桜が声を上げて笑い。
「3人って本当に仲いいよね~。中学は違うけど元から知り合いだったんだよね?」
と問うた。
「ああ、中学の時、俺と大河がチンピラにカツアゲされそうになってる少年を助けようとした時に、偶然、八旗が通りかかってな。しかもタイミングが悪いことに、俺たちがヤンキーをぶっ飛ばした後だ、俺は180ぐらい、大河も175ぐらいあったから、八旗は少年が俺たちにカツアゲされてると勘違いしてな。ちょこっと喧嘩したんだ。それでなんやかんやあって仲良くなった。」
と大河が大雑把に説明する。
「なんやかんやって何よ。それにしても八旗君てドジだったんだね~。」
桜は笑いながらそう言った。
「うるせえよ・・・。」
八旗は少し顔を赤らめながらそう言った。
「何照れてんだよ八旗ー!こいつマジでうぶだよなー!」
おい、大河それ以上、茶化すとまずいぞ。八旗の目がマジだ。
しかし、大河はそんな俺の心境には気づくわけもなく更に続ける。
「純ちゃんもそう思うよなー? こいつこんな図体のクセにうぶ過ぎだって!」
俺は八旗と大河を交互に見た後決断を下した。
「いや、俺はそうは思わねえよ。」
「オイ、純ちゃん!裏切ったな!!」
「大河・・・・。後で覚えとけよ・・・。」
「八旗ちゃーん!冗談だってばー、八旗ちゃーん!」
こんなガキっぽいやり取りを見て桜はニコニコしていた。やっぱ桜って可愛いよなあ。彼氏はいねえだろうけど、好きなタイプとかどんなかな・・・・。
10分後、飯を食い終わった、大河と八旗が揃ってトイレに立ったので俺と桜は二人きりになった。
「あいつら、バカみてえに騒いでたな」
俺ははにかみながらそう話しかける。
「だねえ。八旗君て怖いイメージあったけど結構、楽しい人なんだね。それとも白石君や大河君と一緒にいるからかな」
桜も笑いながらそう問いかける。
「さあな。あいつ自身の明るさなんじゃねえかな。俺とか大河と一緒だからってわけじゃないと思うぜ。」
「そうかな?私は落ち着くけどな。」
俺は桜のこの言葉に一気に心臓の鼓動が高まった。
「大河君と白石君のコンビと一緒にいると」
と、桜は続けた。そりゃそうだよな。俺といると落ち着くんじゃなくて、俺と大河の雰囲気がいいって意味だ。俺個人への言葉じゃない・・・・。
「俺も落ち着くよ、桜といると・・・。」
俺は褒め返そうとそんなことを言ってみた。
「ええ?それって何か告白みたいだね?」
「ち、違げえよ!考えすぎだって!」
「なに慌ててんのよ、冗談だってば。」
桜は、赤くなって必死に否定する俺を笑いながらいなした。桜の前じゃ上手く振る舞えない、子ども扱いされて終わりだ。
「おーっす!二人ともー!もう教室もどろーぜー!」
大河がそう呼ぶのが聞こえた。
帰りのHRが終わり、俺と大河と桜の三人は急いで教室を出た。昼休みの作戦会議ですぐに正門前で張り込むことに決めたのだ。対象がすぐに帰ってしまい、何時間も時間を無駄にしたのではつまらない。
「あ、白石君!ちょっと話が!」
教室を出た時に玲子ちゃんからそう話しかけられたが無視して昇降口に向かった、玲子ちゃんにばかり構ってられない。
昇降口でローファーに履き替えた俺たちは正門の方に向かって歩き、正門横の大きな花壇の縁に腰を掛けた、ここなら正門を通る全生徒を監視できる。
「なあ、大河と桜は何時ぐらいまで付き合ってくれんの?完全下校7時だけど。」
例の女がいつ通るかは全く予測できない、時間に限りがあるなら先に聞いておこうと思い尋ねた。
「んー?俺は何時まででもいいよ、どうせ純ちゃんと一緒に帰るし。」
「私も何時まででもいいよ、家は近所だし。」
と、大河と桜はそれぞれ答えた。
「じゃあ、夜遅くなったら、俺と大河で桜を家まで送って帰ろう。それでいいか」
二人は同時に首を縦に振った。 それから俺たちはしりとりをしたり、世界史の問題集でクイズをしたりしていた。
そんな風に時間を潰して1時間。正門の裏側から、つまり学校の外からバイクのエンジンの音が響いてきた。そのバイクは通り掛けかと思ったが、どうやら正門の前で止まったようだ。
「んだよ、うるせえな。」
大河はそういうと花壇の縁から腰を上げ正門の方を見た。
「オイ、純。何だかヤバそうだぞ。」
大河はそれまでの気の抜けた顔から一転、真剣な顔つきになっていた。
大河のただならぬ雰囲気に突き動かされて俺も腰を上げた。そこには10人ほどの男、どいつもこいつも頭が悪そうな面だ。そして、その中には金髪の男。昨日の夜に見た面があった。
「あいつがいる。」
俺はそうぽつりとつぶやいたが、事のヤバさを実感して言い直した。
「昨日、ぶっ飛ばしたやつがいる!報復だ!」
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