第7話 作戦決定

「おお!ホントか。それはかなり大きな情報じゃないか。星の宮の生徒だったとはなあ。騒ぎを知ったら自分から言い出してくれるかもしれんな。」


宗田は安心したのか。笑顔でそう語った。


「てか、なんで今まで忘れてたわけよ?自分の高校の後輩のジャージぐらい一目見りゃ分かりそうなもんだけどなあ。」


と、大河が半ば呆れたように言った。


「俺もどっかで見たことあるなあ。とは思ってたんだけどな・・・」


俺はもっともな大河の意見に弱弱しく返事した。


「大河君は、1,2年生の女子の事よく見てるもんね!!」


桜が冷かす。こいつは大河の発言の上げ足を取るのが上手い。


「そんなことねえよ!俺が変態みたいじゃん!」


大河もすぐさま反論するが。何だか説得力がない。  


「おいおい、お前ら。今度こそ無駄話だろ。・・・白石、顔を見れば分かるか?」


宗田は俺たちが静まるのを少し待ってそう言った。


「ええ、分かると思います。相当な美人でしたから。」

「マジで?!」


大河が目にもとまらぬ速さで反応した。


「そうか、見ればわかるなら1,2年の教室を片っ端から見て回るか?」


と、大河の事を無視して宗田は提案した。


「先生!!それより、放課後に俺ら三人で校門を見張りますよ!帰るには絶対正門を通りますし、教室でクラスメートの目がある中で話しかけるより、相手も話しやすいと思います!」


美人だった。という俺の言葉を聞いた大河は俄然、やる気を出して提案した。


「お前らがいいなら、俺はそれでいいが・・・」


と、宗田は俺たち3人を見ながら言った。


「俺はそれで構わないけど・・・桜は良いのか?」


大河は女を見たいだけ、俺は当事者だから反対する理由が無い、しかし、桜には付き合う道理がない。


「もちろんいいよ! 面白そうだしね!」


桜は眩しいほどの笑顔でそう言った。桜はいつもこうだ。自分に直接は関係ない事でも理由をつけて関わろうとしてくる。これは余計なおせっかいにも見えるが、桜は100%善意だけでこれが出来る。嫌な感情を持つ人間なんていない。


「分かった。では、その生徒と話をつけたら俺のところに来るように言っておいてくれ。証言を取って学校に張り出し、近隣にもそれを頒布しよう。それでどうにか収まるはずだ。」


話をまとめるようにそう言った宗田は俺たちに教室に戻るように指示を出した。




「失礼しましたー!」


俺たち三人はそう声を揃えて発し、職員室を出た。っとその時渡り廊下側の方から


「やあ!」


と、聞きなれた声が聞こえてきた。そちらを見てみると案の定、玲子ちゃんだった。


まず、俺が声を上げた。


「玲子ちゃん!騙したな?!」

「フフッ!何のこと?」


玲子ちゃんはあからさまにとぼけた。


「玲子ちゃんって見かけによらずあくどいよな~。」


大河もなじるようにそう言った。


「もう、黒羽君までそんなこと言って~!」


「真面目な話さ~、玲子ちゃん何でこんなことしたわけ?」


桜が少し真面目な顔でそう尋ねた。


「だから~、何のことかわからないって~。そんな事より、宗田先生からのお話が済んだのなら早く教室に戻って授業受けなさーい!」


玲子ちゃんは徹底的にとぼけると決めていたようでそう言うと、職員室の扉の前に立っている俺を押しのけるように職員室のドアを開けた。と、同時に俺の耳元で


「あの時の仕返し。」


と、小さく呟いた。俺は目を無意識に目を見開いていた。




「どうしたの白石君?怖い顔してるけど。」


桜の声で俺は我に返った。


「いや、何でもないんだ。教室行こうぜ。」

「その前に自販寄らねー?」

「もう、大河君!授業中だよ!」

「いいじゃん、委員長にはおごってやるからよ!」

「・・・・じゃあ、行く。」


こんなわけで、俺たちはさらに10分ほど時間を潰して教室に戻った。




30分ほど遅れて授業に参加した俺たち三人は20分授業を受けて休み時間を迎えた。休み時間、最初に俺の席に来たのは「八旗 勇気(やはた ゆうき)」だった。


「よお、純。お前、やらかしたらしいなあ?」


俺より身長が少し高い八旗は俺の席に腰を掛けると、低い声でそう尋ねてきた。


「八旗。てめえ呼び出されてた俺たちより遅れて授業に参加するってどういうことだよ。そんなんだから、情報が遅れてんだよ。」


八幡は授業終了五分前に登校してきたのだ。


「寝坊したんだからしょうがねえだろ。それより情報が遅れてるってどういうことだよ?もうお前の退学が決まったってことか?それなら、俺の情報は遅れてるな。」

「なわけねえだろ、俺の誤解を晴らす糸口が見つかったってことだ。」


っと、俺がここまで言った時、俺と八旗の会話に聞き耳を立てていたクラスメイトが一気に集まってきた。


「純!捕まらなくて済むのか?!」

「お前の代わりに大河が少年院行くんじゃないのか?!」


こいつら何言ってやがる。俺たちが教室出た後、授業が始まるまでの5分間でどれだけ話を発展させてるんだよ!


「んなわけねえだろ!!俺が助けた女がこの星の宮にいるから、その子から証言を取るんだよ!これで俺の潔白は証明だ!」


      オオーーー!


と、ざわつく。ったくこいつらイベント気分で楽しんでやがる。八旗の方に目をやると既に机から腰を下ろし自分の席の方に戻ろうとしていた。そんな八旗が一言ぼそりと呟いたのが耳に入った。


「まだ、人の為に喧嘩してんのか。バカが。」



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