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「山宮美里。よろしく」
そいつはしれっと僕の前に現れた。
あの頃と同じ群青色の瞳が目印だった。
「山宮くん、目が青い!ハーフ!?」
「いや、ばあちゃんが外人」
「すごーいクォーターじゃん!めちゃくちゃ綺麗だね」
「どうも」
・・・人付き合いが苦手な人のも変わってないのか。
食いついていた女子は美里の冷めた反応に困ったよう笑って離れていった。
なんでこんな所来たんだか。
「おい、りょう。次お前」
「っとわり。二年岸本良祐です!よろしくね~」
「良祐くんって去年学祭で女装コンテストでてた?」
「出てた出てた!優勝行けると思ったんだけどなぁ」
「あははは。可愛かったよ」
「まじ!?極めようかな」
「ちょっと何言ってんの~」
皆が笑って合コンは滞りなくスタート。
女装コンテストネタは中々使える。
それにしても、なんでさっきからあいつは僕をガン見してんのか。
まさか覚えてるとか?まぁ、仲は良かったけど何年前の話だよ。
僕はあいつみたいに特徴があるわけじゃない普通の男だよ。
それに僕の前からいなくなったんだから、その程度だったんだろ。
二次会には向かわず帰路につく。
夜風が気持ちいい。普段はあんまり飲まない酒を呑みまくった結果千鳥足になる。
だって、ずっとこっち見てたから。
あの綺麗な群青色が。
「良祐」
「美、里」
後から声をかけていたのは僕の悪酔いの原因。
じっと僕を見据えていた。
「お前、俺のこと覚えてたの」
「・・・お前もな」
お前のことなんて忘れられるわけないだろ。
あの日から離してくれない癖に。
僕が勝手に捕まってるだけだけど。
「同じ大学だったんだな」
「学部違うから気づかなかった」
「まぁ、連絡取り合ってなかったし」
「・・・なぁ良祐」
「なに僕帰りたいんだけど」
何故か冷たい言い方になってしまう。
でもだってこいつが悪いんだ。
「怒ってるのか?」
「怒ってない」
「嘘」
「嘘じゃない」
「じゃあ、俺と話すの嫌?」
「別にそうじゃない」
「俺がいなくなってさみしかった?」
「っ、なんだよ!なにがいいたい!」
怒りと酔いで呂律も頭も回らない。
こいつは分かってて僕に聞いてるのか。
「あれはしょうがなかったんだ」
「しょうがなかった!?なにが、説明もしなかったくせに」
「だってそれは」
「僕は友達だと思ってたのに。お前は思ってなかったんだろ!」
「違う!!」
ああ、そうだよ。寂しかった。
親友だと思ってた。お前が転校してきた日から毎日一緒にいて仲良くなれたと思ったらいなくなった。
それに僕はあの日なにも言えなかった。
「しかも合コンで偶然会うとか最悪」
「良祐」
「美里から会いに来て欲しかった。そうしたら、そしたらゆるしたのにっ」
ぽろぽろと涙が落ちる。
僕は泣き上戸なのか。それともこいつのせいか。
「あの日、俺は親の都合で海外に戻るしかなかった」
「だから、それをなんでだまって」
「お前が平気そうな顔してたから!」
「いなくなるって言ったのになにも言ってくれなくて悲しくて、意地悪のつもりだった」
「え?」
「行かないでって言って欲しかった!俺だって良祐と友達だと思ってたから寂しかったんだよ!」
「み、さと」
「こんな目をした俺と仲良くしてくれたのは良祐だけだった。だから嬉しかったのに、ずっと友達だと思ってたのに」
美里まで泣き出した。
結局これは
「お互い、好きすぎたってこと?」
「っ!好きだよ!ずっと!だから、未練を断ち切るために黙った。連絡もしなかった。なのに、なんで同じ大学で、もう、」
しゃがみこみながらちいさな声で話す美里。
小さい時から照れるとしゃがみこみ込むのは変わらない。
「僕だってあの日からずっと美里に捕まったまんまだよ」
「・・・え?」
「お前のその綺麗な群青色が頭から離れなかった。空を見る度思い出して、悲しくなる僕の身にもなってみろ!」
「りょうすけ」
「毎日毎日、美里の色の下で生きてくるしくて、でも繋がってると思ってた。お前は僕を離してくれないじゃないか!なら、もうお前も僕にちょうだいよ!!」
その群青色を僕だけのものにしたかった。
世界一綺麗な群青色。
真っ赤になった顔によく映える群青色。
やっと言えた。
僕があの日いいたかったこと。
美里の群青色、僕にちょうだい。
群青色の瞳 喜彩 @reika0903
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