群青色の瞳

喜彩

プロローグ


「俺、明日いなくなるんだ」



五月蝿い蝉が大合唱する中でその声はとてもちっぽけな独り言で、でも確かに僕の耳に届いた。



君は夏の空と同じ群青色の目に涙を浮かべながら笑っていた。

空をそのまま写し取ったような綺麗な瞳。

口ごもる僕に君は困ったように笑って「冗談だ」と先を歩いていった。



陽炎が揺れて君の姿がぼやけていく。

暑さのせいか、それとも明日を暗示していたのか。




次の日君はもう何処にもいなかった。






あの日から僕は群青色の瞳に捕まったまま。



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