一日目

卒業生を見送ると共に散るかと思えた、薄紅色の花弁をチラつかせた、小さな花の群衆が、今度は真新しい僕らの門出を祝うように枝を広げ、花を広げ、祝福する。


「あ〜…良い天気だ、烈河れっかもそう思うだろ?」

「ま、そうだな? で、お前は何でまだ男口調なんだ、一応女だろ」

「抜けないんだって……名前が悪い」

「名前のせいにすんじゃねぇよ……悠雅ゆうが

「えー……」


アスファルトに舗装された道を歩いてくる二人組が一つ。彼らを一言で端的に表すならば…──バカップル、だろうか。

スラリと伸びたスタイルの良い体躯に、シンプルなデザインをした銀縁のメガネ。その奥に隠れて静かに瞬く瞳は、どこまでも深く、気が付けば引きずり込まれそうなほどの闇色を讃えた、黒曜色。同じ色の髪はショートカットでサラサラと彼の耳の横を流れている。

名前を志木宮烈河しきのみやれっかと言う。


彼の横を歩くのは彼より少し低い身長の、ポニーテイル少女だ。

少し明るめの栗毛に、同じく栗色のクリッとした眼。彼女の表情からは楽しさや悲しみ、哀愁や怒りなど、様々な感情を端的に周りに伝えてくれるような感じだ。瞳にはいつも好奇心が疼いていて、キラキラと虹彩を放っている。

彼女の名前を谷斎悠雅やつときゆうがと言う。


二人で道を歩いていると、進路上かつ目的地の家の前で顔馴染みの二人に出会う。

片方は真意の読めない顔でニコニコ笑っている、藥伐遊佐やくきゆさで、遊佐の隣で漫画を読んでケラケラ笑っているのが暁神雫芽あかつきがみしずめだ。因みに二人共……というか悠雅を除いて全員男である。


「お、来た来たー☆ 二人共元気そー?☆」

「おはよ、悠雅、烈河。シズ、星飛ばすな面倒だよ……」

「ん、おはよ、シズにユサ」

「おっすーそっちこそ元気じゃん、とくにシズっち!」

「俺はいつでも元気だろー☆ やった?☆ ☆」

「……シズ、それを言うなら“”では無く“宿”だよ……」

「いーじゃん別にー!☆」

「良くないよ、ダァホ」

「相っ変わらず変わんねぇなぁお前らはー?」

「何々シズっちはしてないのー?」


そのまま家の前でキャイキャイ四人で話す。暫くして玄関の戸が開いて、中から同じ制服を着た男子が出てくる。

一瞬だけ目を細めて、呆れたように彼は言葉を漏らした。


「君らは本当に人の家前で騒ぐの、得意だねぇ……」


それに四人はそれぞれの言葉を彼に向ける。


「それはお互い様々だろ?」


ニヤッとしつつ肩を竦めて言う、烈河。


「遅いぞー、寝坊でもしてたかー?」


のんびりとした言葉を零す、悠雅。


「やっと来たー☆ おっせーよ、はよ行こーぜ?☆」


漫画を閉じてパタパタ扇ぎつつ、雫芽が笑う。


「おはよ、寝癖付いてるよー? 夜菟」


やっぱり真意の読めない笑顔で言う、遊佐。



四人の言葉に僕は返す。



「君らと三年間これから過ごすとなると、賑やかになるねぇ?」











こうして僕らのドタバタスロー・スクール・ライフは幕を開けた…──。

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君に贈る言葉の意味を少しだけ考えた僕。 幽谷澪埼〔Yukoku Reiki〕 @Kokurei

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