第13話 カフェでモーニング
帰りの馬車の中で、ユーインさんが笑っている。
「だいたい想像した通りの要求でしたが、領主様と思いのほか話が合っていましたね」
「うん、エドワード様って、気さくな方で良かった。ユーインさんもありがとう」
「まあ、今日の感じでしたら今後は私が居なくても大丈夫かもしれませんが、念のため呼び出されたときには、一応私に声を掛けてくださいね」
後は軽く今後の予定など話して、オートキャンプまで送ってもらった。
ダンジョンの調査は4層目まで、1週間を予定しているらしく、その後、一度岡山村まで帰ってから、解散。休暇を挟んでデルフの森調査となる。その調査の時には、コイルも同行を依頼されるらしい。早くとも2週間後ということなので、2週間は自由になる。
コイルの予定では、明日から2日ほどかけて買い出し、その後一週間ほど森の家の周りを整えようと思う。
エドワードが言うように、外壁や屋根をプロに任せて、自分は内装に力を注ぐのも楽しそうだ。
宿に着いたのは夜中だった。ポックルはコイルが返ってきた気配に、ぶるるっと小さく鼻を鳴らして、また眠りについた。
コイルもまた、ベッドで寝るの久しぶりだなあと思ったかどうか分からないくらい、あっという間に眠りに落ちていった。
何日ぶりかでベッドで迎える、爽やかな朝。今日は一日、買い物だ。
ポックルにえさを上げてブラッシングしてから、受付でさらに二日間宿を予約し、出かけることにした。
朝食は、前から気になっていた「Fairy」というお店に行くことにした。看板には、続けて「前世と決別 正真正銘この世界食 プリンはもう食べ飽きた」と書かれている。
このお店、全国チェーンらしいのだが、前世と比べてこの世界の異世界らしさを生かした食材や調理法のデザートを出すのがウリの喫茶店である。朝だけ、モーニングセットという食事がある。
喫茶店にしては攻撃的な看板の煽り文句が、それなりに好評で、大きな街に何軒か店を出している。
カンサーイにいたころから気になっていたのだが、入るのは初めてだ。
扉をくぐると、葉っぱを縫い合わせてできたようなミニスカートと、白いチューリップの花のようにも見えるノースリーブのブラウスを着て、緑色の角みたいなカチューシャを付けた可愛い女の子たちが店内を歩き回っていた。
「いらっしゃいませ、ご主人様~」
……想像外の衝撃に声が出ないコイル。
「本日は、異世界カフェ、Fairyにようこそ。わたくし、フェアリー国から来ました、まりあぴょんがご案内させていただきます。よ ろ し く ね」
絶対ヤマト王国の顔だが。
席に案内されて、モーニングセットを注文してみた。
席は衝立で見えにくいが、店は繁盛しているようで、あちらこちらでモーニングセットを注文するこえが聞こえる。
ほどなくセットが届いた。
「フェアリー国特製のモーニングセットでございます。
こちらはクニャペ、芋を使ったパン……のようなものです。
フェアリー国特産のグリーンバターを塗って食べてくださいね。
こちらは伝説の農婦メアリーのチキンソテーです。
メアリーのチキンについてはご存知ですか?
ああ、では説明は大丈夫ですね。
そしてこちらが、イラクサのスープ
そしてデザートですが、本日はマルメロス入りのプリンになっております」
「……プリンかよ!」
「お客様、おめでとうございます。本日その突っ込みをされたのは、お客様でちょうど10人目です」
にっこり笑ってレシートにチェックを入れる、まりあぴょん。
「本日、その突っ込みをされた方は、3%の割引になっています。
……
……
……
残念です。ここで3%かよ!もしくは、10人目かよ! と突っ込んでいただけると、さらに2%の割引が付いたのですが。
次回また挑戦してみてくださいね。
当店の食事はすべて、「この世界のもの」で出来ております。ごゆっくりお楽しみください」
企画もののお店か……と、緑すぎるスープに口を付けると、思いの外、フワッと良い香りが口の中に広がって、驚いた。
パンも、メアリーのチキンも、少し癖のあるフルーツのプリンも、どれも美味しい。
なるほど、企画だけで流行ったんじゃないんだなあ。
納得しながら、美味しく頂いた。
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