第5話 冒険者ギルド
冒険者ギルドは騒然としていた。
攻略隊は領軍を中心にして、冒険者や傭兵も入れて100人ほどのチームが組まれていた。
チームのメンバーは現在領主の館で作戦会議中だ。
冒険者ギルドに集まっているのは、その攻略チームの後ろから付いて行って、新しくなったダンジョンを安全に確認しつつ、ちょっぴりおこぼれももらおうという、ちゃっかりした冒険者ギルドチームだ
ギルド内の掲示板にチラシが張ってある。
「参加費 たったの3000円。
『冒険者も攻略チームについて行き隊!』
募集人員50人
Bランク以上 4層目まで
Dランク以上 3層目まで
Eランク 1層目まで
混乱を防ぐため、当日はギルド単位での参加以外は入場を認められていません。
希望者多数の場合は、抽選になりますので、ご了承ください
早朝5時正門前集合(遅刻厳禁)
9時~15時 ダンジョン内でフリータイムです。
攻略隊より前には出ないでください。
申し込みはパーティー単位でお願いします。
安全は保障しません。
各自責任をもって参加してください。」
報酬が出る依頼ではなく、参加費を払って行くツアーのようだ。
しかも安全は保障されないらしい。
申し込み締め切りは今日までで、明日の朝抽選結果が発表される。
そこここで、冒険者たちがパーティーごとに参加するかどうか相談している。
コイルは、個人的な事情により参加できないので、イベントを前に楽しそうな冒険者たちを、ちょっと羨ましいな、と思いながら見ていた。
さて、そんなコイルだが、今日の用事のメインは、開拓用の結界杭を買うことだ。
ギルド職員のユーインさんを呼んでもらう。
「忙しそうですが、大丈夫ですか?」
「ありがとうございます。私は部署が違いますので、大丈夫ですよ。今忙しいのは、明後日の遠征の引率をする「脳筋課(通称)」の者たちですね。コイルさんは、明後日の遠征に応募しましたか?」
「いえ、僕、家を作ろうと思って。今日は開拓用の結界杭を買いに来ました」
「そうですか。どこか良い場所がありましたか?」
「はい。やっぱりデルフの森の中が良かったです」
コイルが言うと、ユーインは少し眉を下げて、心配そうだ。
「見てきたならわかると思いますが、あそこはすごい数の矢羽で大変ではありませんでしたか?なかには雷羽もいるらしいですよ。雷羽は電撃で、中型程度の威力がありますので、簡易結界は効きません。それでも大丈夫でしょうか」
「あ、それなんですが、僕が行ったときはあまり矢羽もいなくて、資料によると森の中央近くの泉のところに淀みがあるって書いてたけど、多分その淀み、消滅したみたいです。一日側にいたけど、矢羽も雷羽も出てきませんでしたし」
ガタッ
「ちょっと、地図持って来て。岡山~ロゼの書き込み用!」
急にユーインさんが立ち上がって、後ろの職員に声をかけた。
「すみません。そのお話、もっと詳しく聞きたいので、お時間はまだ大丈夫ですか」
「あ、はい。お昼もさっき食べたし、夕方までなら」
「良かった。では、コーヒーでも飲みながら、ゆっくりお話ししましょう」
昼は過ぎて、食堂はちょうど暇な時間だ。元々冒険者は昼間にギルドに戻ることは少ないので、客も殆どいない。
地図を受け取ったユーインは、コイルを連れて食堂の隅に簡易に仕切られている個室に入った。
入ってみないとそこに部屋があるとは気付かないようなところだ。
「食堂にこんな個室があったんですね、僕、いつもカウンターに座るから、知らなかったな」
「ここだと、いくらか静かに話せます。職員が案内した時だけ使える、応接室の代わりのようなものです。応接室より、飲み食いできる分、冒険者の皆さんには好評なんですよ」
カウンターで注文したコーヒーと本日のお勧めデザートのセットのトレイを持って、席に着いた。
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