第4話 岡山村

 街には魔物を避けるために何重にも結界が張ってあるので、ルフは安全の為、デルフの森で留守番してもらうことになった。

「わおん(では、ルフがいない時に私が突然話しかけてもびっくりしないよう、気を付けてください)」


「は、はい。了解です」




 朝ご飯を食べてから、コイルはポックルと一緒に町に向かった。

「杭と、草刈り機が必要だよね。

 あとは、お風呂だけど、自分で木で組むのは無理かなあ。浴槽って売ってるのかな?岡山村は大きいから、あるかもしれないね。

 他には、何が要るかな。洗濯は手洗い……は嫌だから、洗濯機も買うか。

 新鮮な食料と、荷物も増えてきたから、鍵のかかる蔵がほしいよね。

 蔵か。どこに作ろうかな」


 街中の家は、基本的には治安が良いので、普通にドアに鍵をかけて住んでいるけれど、田舎の村に住んでいると、玄関に鍵はかかっていないことが多い。というか、鍵はない。せいぜい夜は内側から木で抑える程度だ。

 近所の人はみんな知り合いで、家の行き来も多い。「こんにちはー」と言い終わったときにはもう家に5歩ぐらい入ってきている。

「暑いね」と言いながら冷蔵庫を開けてお茶を飲むくらいは、普通にする。


 村人同士の出入りは皆気にしていないが、外からの襲撃には弱いので、盗賊対策に、各家の中には必ず数か所に分けて貴重品を隠す金庫や倉庫があり、村の一角に村人が隠れられるシェルターのようなものがあることも多い。

 小さな村を襲う盗賊たちは鍵をかけても、鉈で家を壊して押し入られるので、各家で中途半端な戸締りをしても無駄だったりする。


 最近では防犯の魔道具も多く開発されてきたので、村が壊滅するほどの盗賊の被害はあまりない。コイルも開拓するにあたっては、防犯の魔道具についてはしっかりしたものを買おうと思っている。





 何日ぶりかで、岡山村に帰ってきた。午前中に出てきたので、ちょうどお昼ご飯に良い時間だ。屋台で肉やご飯類を買い込んで、一度オートキャンプに行くことにした。

 街は少しざわついて、ウロウロしている冒険者たちの姿もいつもより多い気がする。

 屋台のおじさんに聞いてみた。


「何かあったんですか?」


「知らねーのかよ、坊主、今来たばっかりか?薬草の森ダンジョンが急に改変されたんだよ」


「あ、ああ。そうなんですか」


「攻略したわけでもないダンジョンが改変するなんて、珍しいこった。入れるようになってるが、危険度がわからねえから、領主主導の攻略部隊が明後日出発するのさ」


「え。じゃあ、大勢で攻略しに入るんですか」


「坊主、冒険者か?ギルドに行けば掲示があると思うけどな。ま、多分三層目くらいまでの安全確認じゃないか?薬草採取はこの町の生命線だしな。ここのダンジョンは4層目が攻略不可って言われてるし」



「あ、じゃあご飯食べたら行ってみます。ありがとう」


「おうよ。こっちこそ、ありがとな。旨いから、また来いよ」



 オートキャンプはまだ空きがあったが、冒険者用の普通の宿はいっぱいらしい。


「取りあえず、2泊お願いします」


「あいよ。いらっしゃい。

 食堂はないし、トイレは外にあるよ。風呂は銭湯に行っとくれ。出かけるときは鍵はここに持って来ておくれ」


「はい。よろしく御願いします」



 急いで部屋に入って鍵をかけてから、天井に向かって小さいこえで話しかけた。


「フェイスさん、フェイスさん」


「何でしょう、マスター・コイル」


「今ね、聞いたんだけど明後日攻略部隊が出発するんだって!大丈夫かな」


「それは嬉しいですね。昨日は冒険者も少なく、一層目で薬草採取ばかりでしたので、魔獣たちも不完全燃焼のようです。かなりの規模で来られても4層は抜けられないと思います。新しいシステムの効果を検証しましょう」


 余裕そうなインターフェイスに、ようやく落ち着いてご飯をかき込むコイルだった。

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