第18話 国とギルド
この国とギルドについて。少し語ろう。
ヤマト王国がここ、前世で言えば日本にあたる位置に建国したのがおよそ500年前の事だ。
現在はヤマト歴509年
今の国王はイチロー三世。
この世界の住人は、3歳から8歳くらいまでの間に、前世の記憶を思い出す。
ハッキリと思い出す人もいれば、ぼんやりとしか思い出さない人もいるが。
それは親子関係に、少なからず問題をもたらすことになる。可愛い盛りの三歳児がある日急に、反抗期も思春期も経ずに大人のように考え、しゃべりだしたら……
だから、最初から親子は、友達のような関係で過ごすことが多い。
そして、成人まで育てて、あとはそれぞれが自由に人生を模索するのだ。
そしてそれは、王子にすら当てはまる。初代国王が決めた法律に、「国王は、とあるギフトを持つ者の中から選ぶ」というものがある。そのギフトは国民には明らかにされていない。
国王の子供たちも、ギフトがなければ継承権が無く、成人すると同時に、このまま王族として公務を遂行するか、または一市民として王族の権利を一切放棄するかを選ばなければならない。
多くの王子たちは、自由な市民を選ぶが、代わりに王位継承権のギフトを持つ子供たちが数人集められ、教育され、王にならなかった者も王を助け、王族となり、務めを果たしている。
前世から考えるとかなり変則的だが、平等を体現しているのかもしれない。
国民は皆、成人と同時にギルドに所属する。
職や果たしたい望みに応じて選び、移籍もできる。
ギルドは様々あるが、例えば薬師や鍛冶師など、物作りにこだわりのあるギルドは師弟制度をとっていることが多い。師匠を決め、住み込みで仕事を覚え、基本的には30までには技術を覚え独立する。
血のつながった親子が世襲で技術を継ぐということが殆どないので、師弟の絆は強く、ある意味、新しい親子関係とも言える。
王家もこれに近い。
また、沢山の人を雇って大量に物を作る、会社制度が中心のギルドもある。以前は一度雇った人々を奴隷のように働かせ、「会社に入るくらいならスラムに入れ」などと社会問題になったこともある。
今は「クジゴジ法」と呼ばれる就業時間制限があり、給料は安いが、余暇を趣味に存分に使えるということで、趣味を趣味として力を入れたい人たちには人気がある。
フリーで働いている人たちも、何らかのギルドに入ることが義務付けられている。
流しの吟遊詩人や歌姫は芸能ギルド、フリーの護衛専用の用心棒ギルド、他にも主婦ギルド、事務員ギルドなど。
各ギルドの共通しているのがギルドカードで、これが身分証になっている。
このカードによって、戸籍や経歴、納税情報などが管理されているのだ。
冒険者ギルドは、会員の依頼料から天引きされる手数料と、買い取った素材の加工利益、
会員相手の金融業など、手広く商売をしていて、国内で最大手のギルドである。
税の徴収は国と地方領主から各ギルドに委託される。
課税方法はギルドによって異なり、冒険者ギルドの場合、
地方税は領主によって年額が決められており、国税はE、F級は依頼料と素材の売却益を合わせた収入全部の10%、A~D級は15%である。
それとは別に、依頼料からはギルドの手数料が5%~15%天引きされる。
税金や手数料の計算は結構面倒だが、冒険者は大雑把な人間が多いので、そこはギルドにお任せ。もちろん、コイルもごく一般的な冒険者の一人なので、税金や手数料にいくら払っているのか、ざっくりとしか知らない。
先のスタンピードのような場合、領主の抱える軍だけでは足りず、国軍は時間的に間に合わないので、冒険者ギルドや、戦える人員を抱えるギルドに緊急依頼が出ることが多い。
強制ではないが、孤立した城塞都市では城壁を破られれば避難する場所も少なく、生き残る確率を考えれば、多くのギルドは積極的に参加する。
軍とギルドの連携が確立されてからこっち、スタンピードで住民が全員死亡という悲劇はほとんど起こらなくなった。
前線に立つ冒険者達の被害は大きいが、スタンピードは大量の魔石の得られる機会なので、見返りもまた大きい。
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