第13話 ギフトの力

 今、コイルとリーファン、エリカの3人は、魔獣の集団の真っただ中にいる。


 今まで雪崩のように外壁に向かって突進していた魔獣の群れは、そこから飛び出した正体不明の、近寄ることができない忌々しい何かを、どうにかして攻撃したいと、取り囲んでいる。


「これが坊やのギフトか?なかなか、やるな」


「だろー。やっぱり俺のギフトのピリピリはよく当たるんだぜい」


「てめーは褒めてねえんだよ」


「うげえ、吐く、吐くよう……」


「前に吐くな、横に吐けよ。リーファン!結界頼む。攻撃が飛んでき始めた」


「おう。任せとけえ。格子結界!コイル、吐き終わったらお前の矢で、攻撃撃ちそうなやつ狙え」


「詠唱を始める。」


「うううう、頑張るう」


 近付けずにいらだつ魔物たちが、次々と攻撃を放ってきた。


 魔鉄の洞窟の中、大型獣は人型のものが多い。ゴブリン、オーク、オーガなどだ。

 ゴブリンは手にした槍や地面の石を投げ、オークは側にいるゴブリンを投げ(PSに阻まれ、届かないが)、オーガは魔法を使う。土と炎系の合わせ技、粉塵爆弾だ。


 どうにか意識を取り戻したコイルは、オーガを狙って矢を射る。


「降り注ぐ光と押しつぶす闇の聖霊よ、燃え盛る炎と渦巻く水の聖霊よ、わが魂の叫びを聞き給え。暁の太陽がすべてを浄化して光の中に消し去るがごとく、この満ち溢れる魔獣どもを」


「やばい!ラオウ、歩け。エリカ、えーっと、詠唱伸ばせ、あと5分くらい伸ばせ。コイル、できるかわからんけど、ギフトを押さえて10メルまで魔獣をひきつけろ」


「をーっと、消し去りたまえーーーー。聖なるうーー雷がーー、すべてを焼き払うがよいーーー。闇があーー押し寄せてーーー静かなるうう眠りにいい誘うがよいーーーー」


「何、何々?頑張ってみるけど、なに?」


「エリカのギフトがやばいっぽい。ピリピリいってる。町から離れないと、生き残るの、俺たちだけかもーー!!」


「まーじーかー!」

 僕のギフト、僕のギフト、ちょっと縮まってー!


 コイルのギフトは常時発動の自動制御型なので、意識的に威力を変えることはできないのだが、ギフトはお願いを聞いてくれたらしい。少しだけ魔物が近付けるようになって、勢いづいて、動くコイルたちを追ってきた。


「ラオウ、できるだけ揺れないように、早く町から離れるんだ。コイル、良い調子、引き付けるぞ!」


「はーらーいーたーまーえー、きーよーめーたーまーえー、パイポパイポー…」


 エリカの詠唱がだんだん怪しくなってきた。意味があるのかわからない詠唱を聴きながら、町へと向かおうとする魔獣たちを矢を射て注意を引きつつ、町から1キロメル近く離れたころ、リーファンがようやくゴーサインを出した


「いけ、エリカ!」


「たーすーかーったーー、わが渾身の魔法、受けてみよ、ギーガーメーテーオーーー!」



 パシュッ







 ……

 周囲に静けさが染みわたる。

 それは途方もなさ過ぎて、声を失う光景だった。






 エリカの詠唱が終わったとたん、コイルたちの周囲5メルを残して、辺り一面のあらゆるものが、一瞬で燃え尽きたのだ。

 魔獣も、獣も、草も木も、空を飛ぶ矢羽達でさえ残らず。

 地面は深さ1メル以上、ドーナツ型に抉れ、動くものは何一つなかった。

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