噂の十二説

彼女にはお気に入りの耳飾りがありました。


子供のころからつけている物で特別高価という訳ではありませんでしたが

汚れては綺麗にし、欠けては直しと、とても大切にしていました。


ところが、遠出して家に帰ってくると着けていたはずの耳飾りがありません。

家に帰るまでに色々な観光名所に足を運んでいたため見当がつかず

立ち寄った所に電話したものの見つかりませんでした。


それから数日後、改めて連絡をしたものの、見つからず

あまり大きな物ではなかったため、仕方ないと思うことにしました。


その日、いつもの様に眠ろうと目を閉じると波の音が聞こえる気がしました。

それはとても小さな音でそうと思わなければ波の音とは気づかないようなものでした。

最初は気のせいかと思っていた彼女でしたがその音は数日続きました。


その音に心当たりのあった彼女は次の休みの日

遠出した日に立ち寄った海に向かいました。


目を閉じて耳を澄ませると、周りの音が重なって聞こえるような感じがします。

砂浜に向かうと波の音ははっきりと重なり、彼女は耳を澄ませながらそこを探します。


すると自分の足音が耳に近づいてくるように聞こえるのです。

それを頼りに進んでいくと、あの日無くした耳飾りが落ちていました。


耳飾りは壊れることもなく綺麗な形で残っていました。


その後は眠る時に目を閉じたり、耳を澄ませてみても

波の音が聞こえることはありませんでした。




唯の噂。

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