噂の七説

どこかの小さな村には狐結び、というものがある。


どうするか迷った時は、狐結びをしなさい。

何かお願いする時は、狐結びをしなさい。

知りたいことがある時は、狐結びをしなさい。


など、何かあると狐結びをしなさいと言われている時代もあったようだ。


その村は特に狐信仰をしているわけでもなかった。


狐結びを知っている人もやがて少なくなり

今では数人ぐらいしか知っている人はいない。


親戚から狐結びを教えてもらった子供は

忘れないという約束をした後に

もし自分に大切な人ができたら教えてあげなさい、といわれ

狐結びのやり方を教わる。


それでも狐結びをできる人は減っていき

やり方をわかる一人が悲しく思い

知人に教えたものの誰も覚えることはできなかった。


狐結びは難しいものではなくそれ自体は誰でもできるが

覚えておくことができないらしい。


迷った時、お願いする時、知りたい時

大切な人だけが教わる狐結び。




唯の噂。

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