テーマ:桜 「百年の刹那」 ~垂れ耳エルフと世界樹の街~

「おはよー」

 夜明け前の来客はあまりにも意外な人物だったから、眠気が一気に吹き飛んだ。

「おっさん、なんでここに!?」

 黎明の空を背に佇むのは《垂れ耳エルフ》のユージーン。いいから、と問答無用で連れて行かれたのは、彼が営む骨董店の裏――世界樹の根元だった。

「何なんだよ?」

「ほら、あそこ」

 見上げれば、朝日を浴びた枝の先に一つ、また一つとほころぶ花。

 常緑から薄紅色へと一気に染まりゆく樹。息を飲むような光景に、瞬きを忘れて立ち尽くす。

「この花はね、百年に一度しか咲かないんだ。だから、お花見をしよう」

 振り返れば、敷物を抱えて微笑む看板娘。

「壮大な花見だな、おい」


 悠久の時を経て 咲き誇る花

 百年の刹那を 胸に刻んで

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