　遠い銀河の彼方、血と裏切りに塗れた旅路の果てに辿り着いた星で、彼は初めてそれを目にした。

　舞い散る花吹雪、そのひとひらを掌に受け止めて、驚いた声を出す。

「なんだ、これは」

『バラ科モモ亜科スモモ属ノ落葉樹、一般ニ『桜』ト呼バレル樹木ト推測』

　すかさず答えた相棒（サポートAI）は、ざらついた人工音声でこう付け加えた。

『銀河暦以前ノ歌ヲ紹介。

　願ワクハ花ノ下ニテ春死ナム　ソノ如月ノ望月ノコロ』

　なるほど、と頷いて、古木の根元に両手足を投げ出す。

「こんな美しい場所なら、確かにもってこいだ」

　銀河を股にかけた老海賊は満足げにそう呟くと、ゆっくりと目を閉じた。

　そうして、彼は永遠となる。

『無限（インフィニティ）の』ローランド。その名を銀河に残して――。

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