第38話 ミレイアの野望
私は悩んでいます。
不安になってるというのが合ってるかもしれません。
兄様と迎えられたあの日から、私は恩を返せているのでしょうか?
お荷物になってしまっていないでしょうか?
それが不安なのです。
あの日の魔王様の戦いには驚きました。
街の大人たちですら怖がってしまう人たちを、ほんとうに簡単にやっつけてしまったのです。
兄様に会うことを諦めていた私にとって、それはそれはとても眩しいお姿でした。
それからというもの、その日暮らしの私たちの生活は一変しました。
屋根があるばかりか、暖かい寝床がある。
ご飯はリタさんの美味しい料理が、毎日三回もたべられます。
怖い人に怯えることもなく、シルヴィアちゃんと楽しく遊べます。
そして魔王様が、とても優しく見守っていてくれます。
せめてこのご恩を返そうと思って、武器屋のおじさんに剣を売ってもらいました。
魔王様は武器をお持ちでなかったので、せめてものプレゼントでした。
『聖剣ミレイア』と名付けたかったのですが魔王様に断られ、『なんかこう、ロングソード』なんていう名前になってしまいました。
この前もイケニエという言葉が聞こえたので、真っ先にナイフをお届けしました。
気が利くねと褒められると思ったんですが、怒られてしまいました。
子供はこの部屋に入ってきちゃいけないよって。
なので次からは部屋の前で、ナイフを持ってお待ちしようと思います。
私は恩返しについて毎日のように考え続けていました。
そのうち頭にとある気持ちが宿りました。
もっと魔王様に愛されたい。
もちろんシルヴィアちゃんが魔王様の一番なのは当然です。
そこに割り込む気はないですし、私もシルヴィアちゃんが大好きです。
魔王様とシルヴィアちゃんのつながりは、見ていて本当に幸せになるんです。
なので私は魔王様の二番目に愛される子になりたいのです。
今はまだ上手くいってませんけど、私頑張ります!
競い合ってるお姉様方の横から悪いですけど、この夢を絶対に叶えてみせますから!
そして二番目になれたら、魔王様を、お父様って呼んでみたい・・・です。
ンッンーー!
なんか恥ずかしい!
すごくこそばゆいです!
こんな気持ちは初めてですよ。
一体なんなんでしょう?
明日アシュリー姉様に聞いてみましょうか。
アシュリー姉様は賢人様と言われるくらい、すごく頭のいい人なんです。
私が聞いて、知らないって言ったことなんかありません。
しわがれた龍の涙石について聞いたことがあります。
姉様は「え?あーうん、あれねー。あれは臭いがちょっとなー好きじゃないですねー。」って言ってました。
呆け魔竜の溜め息ソテーについて聞いてみたときなんかすごかったです!
「あーそれね。この前すれ違ったおじさんとぶつかって謝った子供の親が持ってたって聞きましたけど、噂ほどじゃなかったですよー。」って言ってました!
あんな珍しいものを知ってるなんてすごいです!
だから私がいま感じたことにだって、きっと教えてくれます。
答えはなんでしょう、ワクワクします。
さぁ、もうすぐ魔王様とシルヴィアちゃんのデートの日です。
私も一緒に行っていいみたいなので、私も楽しみです。
魔王様が「ミレイアともデートしている」と思ってくれたらうれしいな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます