第12話  魔王の知恵袋

我が家で急なお茶会が開かれることになった。

客はさっき来た冒険者の3人だ。

武装した状態で飲む茶の味とはどんなものなのか。

聞かなくても顔を見るだけで察しがつく。



「それで、お前らはどうしたいんだ?」

「オレ達は領主に依頼されたんだ、豊穣の森を制圧しろと。しがらみ上引き受けたが後悔しきりだ」

「そうか。こっちとしちゃ、明け渡すきはないぞ?」

「わかってる。でもそうなるとアンタに殺されるか、逃げて犯罪者になるしかない」



なんつうか、冒険者も大変なんだな。

噂や英雄譚なんか聞くと華やかで稼げる人気職って感じだが、現実は甘くないのか。



「じゃあ、オレに殺されて消炭にでもなったって噂を流せばどうだ?」

「ダメ……だろうな。あの豚領主は執念深い。追跡されてバレるのがオチだ」

「じゃあ、お前らは安全に失敗しつつ、領主も納得させる必要があると?」

「そんなところだ。勝手な頼みだと思うが、何とかならないか」



そんな上手い話あるわけないだろ?

いっそ追い返してやろうかと思っていると、リタが口を開いた。



「無くはないわよ、うまくやれば騙せるわ」

「ほ、本当か?!」

「まずは私の幻術を3人にかけるんだけど……」

「ふむ、ふむ」



うちの知恵袋が悪巧みをしている。

普段と変わらない微笑なのが逆に怖い。

段取りが決まったらしく、リタは準備にかかった。

作戦の全容を聞くと、当然のようにオレの役割も決まっていた。



「なぁ、本当にやるのか?」

「そうよ、この機会に領主を倒しちゃましょう。この先もずっと襲われるのは嫌でしょう?」

「そりゃそうだが……、面倒だ」

「大丈夫、これが終わったらきっと落ち着くわよ」

「そうだといいんだがな」



なんとなく嫌な予感がして賛同できない。

この胸騒ぎが気のせいだとありがたいが。


それからリタは3人に幻術を施して、昏睡状態にした。

トルキンの声を聞くと目を覚ますようにセットして。

こいつらが助かるかは、運次第だろう。

上手く領主の目を誤魔化せれば、だ。



オレは3人を担いでレジスタリア郊外まで飛んで行った。

防壁の見張りが指を指しているのを見届けてから、オレは森へ帰って行った。


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