13-5
……。
……光。
……見える。
……なんだろう。
……熱を感じる。火傷しそうで、でも包まれているようで。
……汗が、たくさん出ている。臭い。
……光。
……もっと、入ってくる。
……ああ、これは、知っている世界だ。
部屋の天井から照らされるほのかな光が目の奥を刺激する。とても眩しくて瞼が持ち上がらない。
ここはどこだろうか。誰かの家の中だろうか。人はいないのだろうか。
声は聞こえない。でもなにかの音がする。耳鳴りだろうか。はっきりとは分からない。
目が少し慣れてきた。でもどうしてだろう、天井の光が強すぎて周囲が見えない。
おかしい。前しか見えない。いつもこんな感じだっただろうか。少し狭い気がする。
首が、動かない。なにかで固定されているのか。それとも動かなくなってしまったのか。痛みはない。でも自由に動かない。なんでだろう。
今は何時だろうか。そういえば、どうしてここにいるのだろうか。
私は寝ていたのか。いつ眠くなったのだろうか。なんだか、まだ眠い。
とても熱い。身体が焼かれてしまいそうに熱い。
なにかが私に入ってきたような、不思議な感覚。
まるで、生きているみたいだ。
そうだ。戦場で倒れたのだ。
胸が物凄く痛み出して息ができなくなって、頭が空っぽになってしまったんだ。
私は生きているのだろうか。見えるものがぼやけていてよく分からない。
ここは、あの時の世界なのだろうか。
うまく出せるか自信がなかったが、声を出してみようと思った。
喉がとても痛い。腹に全身の力を集中させて、もう一度空気を出してみる。
出た。耳の穴からかすれた音がほんの少しだけ入ってきた。
「目を、覚ましたか」
懐かしい声だった。全身の力が抜ける、温かい声。
ずっと聞きたかった声だった。
「レシュア、俺だ。分かるか?」
分かる。でもどこにいるのだろう。目の前にはなにも映ってこない。
とても不安だ。早くしないといなくなってしまうかもしれない。
声だ。とにかく声を、出さなければ。
「……メイ、ル」
「聞こえるのか。そうだ。俺だ。なんか返事しろ」
「……聞こ、える、よ。メイル。どこ?」
「ここにいるぞ。すぐ近くにいるぞ」
「……見せ、て。顔が、見た、い」
彼が視界の中に入ってきた。間違いなく彼だった。
とても悲しそうな目をしている。どうしたのだろうか。
「……ここは、どこ?」
「シンクのところだ。レインが運んできた」
「……私、生きてる、の?」
「ああ。危ないところだったが、間に合ったみたいだ」
「……そう、なんだ。よかった」
声を出すことで意識が蘇ってきた。
私の存在がたちどころに組み上がっていく。
知りたいものから、知りたくないものまで綺麗に整頓されていく。
……でもなんだか、とても嬉しい。
……終わってしまう前に、話ができて。
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